第26話 受付嬢ニャルメア
リッカと別れ学園屋上を飛び出した僕が向かった先はアリスのいる場所。ではなく冒険者ギルドだった。
アリスを助け運命を変えると決めた僕だが、無策で突っ走るほど阿呆でもない。今回の件に立ち向かうには入念な準備が必要となるのだ。
だから僕はそのために彼女のところへとわざわざ来た。
「おや相変わらず辛気臭い顔かと思えばモブにゃ。どうかしたにゃ? もしかして私に会いにきたとかにゃ?」
「そうです。その通りです。今日は貴女に用があって来ました」
「おにゃ? おにゃにゃにゃにゃにゃ???」
彼女、ギルド受付嬢ニャルメアは僕の言葉に首を傾げた。
「救いたい女の子がいます。だから貴女の力、
彼女は僕の言葉があまりにも予想外だったのか目を数回パチクリさせた。そしてそのニコニコした顔に張り付けられた糸目を鋭く見開いた。
「ふぅん、やっぱりアタシの二つ名をしていたみたいだにゃ。相変わらず凄い情報網だにゃあ」
いつもとはまるで違う。うざったいぐらいまでの賑やかさは跡形もなく消え去り、どこまでも鋭利でどこまでも冷徹。気を抜けば一気に呑まれてしまいそうだ。
しかし吞まれるわけにはいかない。強気で行け。僕は彼女から目を逸らすことはせず、むしろ真っ向から見据えた。
「ま、いいにゃ。今回は協力してやるかにゃ」
彼女の返答に僕はホッと胸をなでおろした。
とりあえず第一関門は突破した。今回、相手にするのはおそらく異星の神であり。流石に僕一人では厳しかったからだ。
「た・だ・しーーその代わりと言っては難だけどもっと君のことを知りたいにゃ」
「はい。僕に言えることならなんでも」
きっと彼女は僕の秘密に勘づいているのだ。確証はないにせよ何らかの違和感は感じているのだろう。
「そういう意味じゃなかったんだけどにゃあ……モブ君も冴えない顔して中々に罪作りな男だにゃ」
はい?
とりあえず冴えない顔とか余計なお世話だ。ほっといてほしいね。
ともかく彼女の協力が得れるなら勝ち目が出てきた。
「ちなみにそこの柱の影からこっちをずっと伺っているツンデレちゃんはどうするにゃ?」
えっ
◆
「ここに悪い奴がいるのね。ふんっ、腕がなるわ!」
現在、冒険者ギルドから移動し目的地手前。
何故かいる金髪美少女クラリス・アルケイディアはそのご立派な双丘を突き出して強く意気込んだ。
正直、彼女は呼ぶつもりなんてなかったが盗み聞きをして勝手についてきたのだからしょうがない。
「よーし、私もモブ君を手伝っちゃうぞー!」
勝手についてきたパートⅡ。
いつの間にかリッカ・ソレイユは僕の隣に当然のようにいた。どっから湧いてきたんだコイツ。目的地すら教えていないのにとんでもない嗅覚というか勘である。
「はぁ……」
「どしたん急にため息なんて吐いちゃって。幸せが逃げちゃうぞー」
「何辛気臭い顔してんのよ。このアタシが手伝うんだからもっとシャッキリしなさいよ!」
「両方とも君らが原因なんだけどね……」
しかも二人とも勝手についてきたのにこの態度である。
実際のところ、彼女ら所謂ヒロイン組を巻き込むつもりはなかった。この際だから仕方ないので使えるものは使う精神で行くことにした。ていうか断ったところで僕の言うことなんて聞かないだろうし、まだ目の届く範囲にいてもらったほうがマシ的なね。
もはや疫病神の域なんだよなぁ。除霊とかも出来なさそうなのが尚更に性質悪いというね。
「相変わらずモブ君の周りは賑やかで退屈しないにゃあ」
そんな僕の苦労する様を見てかニャルメアは愉快そうにニヤニヤと笑みを浮かべた。彼女には頼んで来てもらっている手前があるが、ほんと良い身分なんですけど。
ともかく役者は揃った。こんなところで時間を浪費している余裕はない。
「それじゃ悪いけど皆には僕の我がままに付き合ってもらうよ」
彼女らは僕の言葉に何の逡巡もなく力強く頷いた。
向かうのはかつて僕が潜った迷宮。
突如出現し、僕が調査に向かわされた場所。クラリス・アルケイディアが冒険者に襲われていた例の迷宮である。
◆◆◆
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