第27話 再びモブ・イン・ダンジョン+おまけ付き①
駆ける。
とにかく駆ける。件の迷宮に突入した僕らは必死に全力疾走していた。
「はぁはぁ……! なんでアタシ達、迷宮を全力疾走してん……のよっ!」
「こらそこサボるな。キリキリ足を動かせ?」
「この野郎ぅ……」
クラリスは僕の軽口を聞いて額に青筋を浮かべた。
まぁ普通迷宮を疾走などしない。常に死と隣り合わせの場所であり、ベテランの冒険者ですら細心の注意を払って進むのが鉄則だ。
しかし、今回はあまりにも時間がない。原作どおりであればアリスはこの後に自決してしまう。
恥ずかしいことに僕がウジウジしていたせいでそれなりに時間が経過してしまった。
おぼろげな原作の記憶と現在の時刻を比べるとそれに間に合うかどうかといったところだ。
しかもその上に更に状況を悪化させることが一つ。
普通であれば迷宮には転送機能がある。踏破した階層は自由に移動できるのが基本だ。
この迷宮は僕が一度踏破しているため一気に最下層にいけるはずなのだが……今その機能は封印されていた。
つまるところ必死に走るしかないわけだ。
「しっかしアンタ、リッカとも知り合いだったのね……どういう関係?」
そんな質問とか平気でするからチョロインとか揶揄されるんだぞ。空気読んで空気。
ちなみにクラリスとリッカは既に顔見知りだったりする。つつがなくこの世界も原作どおりに進んだ結果だ。
「飼い主的なー?」
君も答えなくていいからね。しかもなにその回答。
「なんでだよ。僕にそんな特殊性癖ねぇよ」
「? とりあえず飼われてるモブ君のほうね」
「それもなんでだよ。おかしいだろ」
むしろ逆だろ。君みたいなスカポンタンに飼育されるなんてまっぴら御免だわ。
「ムムム、やっぱり仲がいいじゃない」
どこか不満そうにするクラリス。これを見てその反応とか意味不明にもほどがある。
もしかして頭とかいかれてます?
「青春だにゃー甘酸っぱいにゃー」
ニャルメアはそんな僕らを見ていやらしそうにニシシと笑った。
頼むから黙ってくれ。この発情猫が。
「まぁまぁそんなかっかするんじゃないにゃ。今はとにかく先に進むのが先決にゃ!」
ぐぅ。正論過ぎて何も言えねぇ。お前が言うなって感じだけど。
とにかく彼女の言うとおりだ。アリス・クトゥの破滅を阻止するべく、僕らは更に必死に足を動かせた。
◆
しばらく駆けると左右に分かれた道にぶち当たった。
「分かれ道だけどどうす? アタシの勘的には左だけど」
「モブどうするにゃ? とりあえずツンデレちゃんの言うとおりとりあえず勘で進むしかなさそうだけどにゃ」
「変な呼び方すんじゃないわよ!」
またギャーギャー騒ぎ出すクラリス達。君達、結構仲いいんだね。
それはともかく、クラリスは何の根拠もないのに得意気に左を指差しているがそれは違う。
「いいやどっちも違う。真っ直ぐだ」
「へ?」
僕は分かれ道中心にある壁を乱暴に蹴飛ばした。
すると壁は後ろに真っ直ぐ倒れた。隠し道だ。
「すごーい! あれ? でもなんでモブ君はこんな道知ってたの?」
リッカは首をかしげた。地味に鋭くて困る。
「それは私も気になるわ。まるで最初から正解を知っているみたいは感じよ」
クラリスもリッカに同調した。
「前に一度潜っているからね」
苦しい言い訳だ。正直に言えば原作知識なのだがそれを説明するわけにもいかない。
しかしこの説明だとリッカ達は納得するだろうけど彼女は、
「前に潜った、それも一度だけなんてにゃあ」
やはりニャルメアは意味深な笑みを浮かべた。流石に彼女は誤魔化せないか。
本来であれば迷宮の探索にはそれなりの時間を要する。隠し道や扉なんてものは相当な時間を要して発見されていくものだ。それを最近出現した迷宮かつ一度潜っただけで知っているなんて、不審にもほどがある。
「ま、そういうことにしておいてやるにゃ。とにかく今は進むにゃ」
「「???」」
「やっぱりモブは面白い奴にゃー」
ニャルメアは僕の反応を見て満足したのか、再び鼻歌交じりで駆け出した。リッカ達はわけが分からずに首を傾げるばかりだ。
こりゃバレるのも時間の問題だなぁ。
とは言え時間的制約を考えると原作知識を出し惜しみ出来る状況でもない。多少怪しまれても仕方ないか。
ともかく僕もニャルメアに続き迷宮の更に奥に駆け出した。
◆◆◆
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