第23話

翌週、自宅にクゼからの小包が届いた。差出人の住所があったので、調べてみると、東京の一等地にあるオフィスビルである。詳細を確認をすると、レンタルオフィスのようだった。法人登記のために住所を借りているだけで、実態がないことは想像にかたくない。


つまり、嫌でも自分達の素性は明らかにしたくないらしい。ここまで来ると、若干狂気じみている。


依頼内容も、それに輪をかけて不可思議なものだった。


というのも、送付物は、膨大な数列であった。数字が記載されたA4用紙が数えきれないほど。およそ段ボール一箱分ほどはあっただろうか。


また、その数字がよく分からない。記載されている文字は、以下の通り。


S40・S35・S30・S20・S15・S10・S5・0


Sとは何だ?数字はなぜ5刻みなのか?


この段階で私は頭を抱えた。次のページめくり、更に事態はややこしくなる。


数列の中に、Sだけでなく、Pも出てきた。ざっと全体を目で追うと、PもSと同様に、下記の数字があることが分かった。


P40・P35・P30・P20・P15・P10・P5


SとP。最初、Pは【plus】ではないかと思われた。というのも、0にはSもPも付いていないからである。もしも、この数字の羅列が、何らかの数直線上の数字の抜粋ならば、0が中心で、Sが正の数だと考えれば、辻褄つじつまが合う。


しかし、マイナスは言うまでもなく、【minus】である。Sではない。


それに、そもそも正負の数を表すならば、日本でも、英語圏でも、【+】【−】の記号を使う方が一般的だ。わざわざ頭文字を用いる必要などない。


送られきた紙の束には、このSやPが頭に付いた数字(それも、5刻みの数字)が無数に羅列されていた。そして、数字の間には、方向を示す矢印が書かれている。


例えば、『S30→S25→S10』といった具合である。また、SからP、もしくはその逆のパターンもあった。つまりは、


『S10→P30→S5』といった様相である。


長々と説明をして来たが、要は、私の手元には、意味不明な数字の羅列があり、少なくとも、一瞥いちべつした限りでは、何の規則性も見出せそうもなかった、と言う点が、私の伝えたかった点である。

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