第11話 果たし状
優々が友達と遊びに行くと言い、一人で帰ることになってしまった。
俺は未だに友達も、たまに喋る人さえもいない。
「…………」
ちょうど帰る人が多く賑やかな廊下を、床を見つめながら逃げるように下駄箱へ向かったのだが。
「え?」
下駄箱の中に一枚の紙切れが入っていた。
手に取らなくても、大きく書かれているその文字に目が行く。
「果たし状……」
そう、デカデカと果たし状と書かれているのだ。
俺はビビることなく果たし状と書かれた紙切れの裏を見る。
『僕は柏原優々さんに恋をした!!!! 体育館裏で待つ!!!! 逃げるなよ!!!!』
「はぁ」
周りに人がいる中、ため息が漏れてしまった。
実を言うと、この類のものは小学生の頃から来ている。
高校じゃいつもより距離をおいてたつもりだったけど、無駄骨だったようだ。
「面倒くせぇ……」
この手のものを俺に突きつける人に、いい人がいた覚えがない。
今回ばかりは『!』の多さで、体育会系のうるさそうなやつだって想像がついて行く気にならない。
まぁ行かなかったら、多分毎日下駄箱に果たし状を入れられるだろうし行くしかないんだけど。
◆◆
体育館裏に行くと、果たし状を入れたであろう人が待っていた。
その人は仁王立ちをして、俺のことを顔見しているのだが……。全然体育会系じゃない。
前髪は目を隠すように長く、少し猫背。体は細い。
「……あれ?」
見覚えのある人だった。
「
仁王立ちしていた人は首を縦に振った。
暗門大河。彼は俺の席の前に座ってる人の一人だ。
プリントについてのことしか喋ったことないが、話しかけやすかったのを覚えている。
にしても暗門くんが優々に恋、か。
「理央……理央……。僕は君に決闘を申し込む」
「えっ?」
何言ってるんだ。
「あ、あのさ。一応言っておくんだけど、俺は別に優々とそういう関係じゃないからな? 普通に仲の良い幼馴染だから」
「嘘をつくな。僕はここ数日、学校で君たちのことを観察していたが……。とてもじゃないが、ただ仲の良い幼馴染には見えない。さぁ白状するんだ! そして僕と決闘を!」
「いやだから本当にただの幼馴染だし。恋をしたなら、好きにすればいいじゃん」
自分で言っておいて、なぜか心の底からズキッと痛みを感じた。
本当のことなのに俺ってばどうしたんだろ……。
「本当に? 本当にただの幼馴染なの?」
「さっきからそ」
なんで途中で声が止まったんだ。
暗門さんの質問の答えなんて、一つ以外ないはずなのに。
俺は理由がわからないまま、無理やり言葉をひねり出した。
「さっきからそう言ってるじゃん。ただの幼馴染だよ」
「い、言ったな? 言ったな? 言質取ったからな? 僕、本気で柏原優々さんにアタックするけど邪魔しないでくれな?」
「あぁもちろん」
当たり前のことを言ってるはずなのに。
心の底の痛みは増していた。
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