第12話 嫉妬に駆られる乙女 

 ◆優々視点◆


 おかしい。

 この数日前から、理央くんの様子がおかしい。

 いや別に私への接し方が変わったとか、そういうんじゃないよ?


 なんというか……浮ついてる感じ。

 話しかけても心はそこにない感じ。

 多分、私が一緒に帰らなかった日になにかあったんだろうけど……。聞くに聞けない。


 変わったといえば、理央くんに学校で喋る人ができた。

 前の席の人で名前は暗井? 暗望? とか言う人。

 

「そういえば」

 

 そういえばその人と仲良く喋るようになってから、理央くんの様子がおかしくなった気がする。


「ふぁ〜」

 

 理央くんは今、眠そうにソファでスマホをかまってる。

 なにしてるんだろう? 

 もしかしてその仲良くなった人と連絡取ってたり?


「理央くん」


「ん〜?」


「なにしてるの」


「なにって。ダラダラしてるけど? 学校で疲れたから、休みの今日くらいはダラダラしてといいでしょ」


「いやそういうわけじゃなくて」


 スマホをかまってるけどなにしてるの? なんて、一切脈略ないこと聞けない。


「あー座りたかったのか」


 理央くんは私の言葉を勝手にそう解釈し、体を起こして隣を開けてくれた。


 そんは意図はなかったけど。まぁ隣りに座ってもいいなら、喜んで座ろう。


「……なんか距離近くね?」


「気のせいだと思う」


 私と理央くんの太ももはくっついてる。


 すぐ離れないから、嫌ってわけじゃないみたい。


 学校で喋る人ができたからって、私から離れたら嫌。欲を言ったら、私以外の人と喋らないでほしい。

 同居して、私の気持ちが伝わってると思ってたんだけど……。

 

「あのさ、理央くん」


「ん〜?」


 距離が近いと指摘してきたのに。

 理央くんは私に目も向けず、スマホをかまっている。


 そのとき。私の頭の中で何かが千切れた。


「理央くんがそうくるんなら、私もそうさせてもらうねぇ〜だ」


 どんなことを思われるかなんて気にせず。


 すぐ横にあった腕に抱きついた。


「えっと」


 えへへ。腕に抱きつかれるなんて思ってなかったら、ビックリして固まってる。可愛い。


 家じゃいつでも私と二人っきりなんだから、もっとこういう可愛い反応見せてくれたっていいのに。


 もしかして私って女の魅力ないのかな……。

 いや、そんなはずない!

 同級生の中じゃ色々発育してる方だし!

 

「どう?」


「どうって……。近い」


 私は理央くんが顔を背けるのをいいことに。スマホの画面を覗いた。


「あ」


 誰かと連絡を取ったりしてたんじゃなかった。

 

 映っているのは、私が大好きなピザのレシピ。


「そろそろ優々の誕生日じゃん。だからそのとき作ろっかなって」


「……へぇ」


 ずるいずるいずるい。

 なんなの。私、おかしくなって離れちゃうかと思ってたのに。


「って、違う違う。ほら、私が近くてどう?」


「……優々もちゃんと女性なんだなと」


 空いてる手で恥ずかしそうに頬をかく理央くん。


 言ってほしい言葉が出てきて、思わず腕に力を入れてしまった。

 誕生日に大好きな食べ物の手料理を振る舞おうとしてたということも相まって、絶対私今、綻んでだらしない顔してる。


「私以外とはこういう感じになっちゃダメだからね」


「…………」


 返事は帰ってこなかった。

 でも、小さく首を縦に振っていた。





 

 

「柏原ちゃんってすごいところ住んでるんだねぇ〜」





【あとがき】

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