第10話 大判焼きはつぶあん派

玄関で靴を履き替えて、駅までの道のりを二人で歩き出した。

帰り道はチャンスだと思い、いろいろ質問してみることにした。


「三河さん好きな食べ物とかあるの?」

「んー甘い食べ物なら基本好きですね」

「じゃあ、通学路にある大判焼きでも食べない?」

「あーでも夕食が…」

「いいからいいから、じゃあ買ってくるね」


俺は、大判焼きの店に入り一個250円の大判焼きをつぶあん、こしあん両方買い三河さんのところへ戻った。


「はい、つぶあん、こしあんどっちがいい?」

「じゃあ、こしあんで。いくらでしたか?」

「お金は大丈夫だよ、今日の家庭教師代ってことで笑」

「いいんですか?」

「いいよいいよ、そんなことよりこしあん好きなんだね」

「つぶあんはちょっと食感が…」

「そこが、美味しいんだよー」

「なんか、立川さんおじさんみたいなこと言いますね笑」

「え、おじ…さん…」

「気に障ったらすみません。つい思ったことを」

(ガーン、まあ本当におじさんなんですけどもね)

「いや全然、大丈夫笑」

(結構傷ついてます)


ベンチに座って二人で無言で大判焼きを食べていると、三河さんが急に話しかけてきた。


「立川さんは学校は楽しいですか?」

「まあ、取り立てて楽しいわけではないけど、普通かな」

「立川さん、今日のソフトボール目立ってましたし、楽しそうですけどね」

「そんなことも…ないんだよ」

「そうですか…」

「何で急にそんなこと聞いたの?笑」

「立川さんが毎回バカやってて楽しそうなので聞いてみました」


(そういえば10年前はバカしかしてなかったなあ)


「三河さんはどうなの?…答えずらかったら言わなくていいんだけど一応…」

「私も取り立てては…というか退屈ですね」

「退屈?」

「はい…授業ももう予習してるので暇ですし」

「なるほど、さすが家庭教師だ」

「いや違いますけど笑でも最近立川さんのバカを見るのが結構楽しいです」

「それはよかったのかな?笑もしよかったら三河さんが学校楽しくなるようにもっとバカするよ!」

「勉強してください」

「はい、すみません」


その後沈黙が続くと三河さんが笑い出した。


「立川さんって面白い人ですね笑」

「そ、そうかな?笑」

「はい、バカですけど」

「さっきからバカバカ言われると心が傷つきます」

「すいません笑」

「でも面白い人って言われて嬉しかったよ。ありがとう」

「はい」

三河さんは笑った顔を隠しながら返事をしていた。


「そろそろ帰ろうか」

「はい」


お互い無言で歩き駅まで到着すると三河さんが口を開いた。


「では、ここで。また明日会いましょう」

「うん、じゃあね」


電車に乗り家へ帰ると、玄関に見慣れない靴が置いてあった。


「おかえりおにい」

「おうただいま」


リビングから友恵が顔を出して出迎えてくれた。


「最近、帰り遅いねまた勉強?」

「まあな、そういえばともえ昨日はバスタオル巻いて風呂入ったんだな。それでよし」

「何で知ってるの?まさか…変態!スケベ!生ゴミ!」

「ち、違う!違う!待て待て母さんから聞いたんだ洗濯物にバスタオルあったって」

「怪しい」

「ていうか、生ゴミは言い過ぎだろ!」

「そっちが誤解するようなこと言うんじゃん!」

「あー分かった分かったすまんすまん」

「もう、おにいの友達が来てたからおにいの部屋に案内しておいたよ」

「お、おう」


(沢田か?後藤か?漫画でも貸す約束でもしてたかな?)

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