第8話 そういうことは早く言いなさい!

その後、女子のソフトボールを観戦することになった。

俺と沢田と後藤で体育座りして観戦していた。


観戦していると、何か違和感に気づいた。

それは、三河さんだけ輪に入っていないような感じだった。

(なんで、なのだろう?沢田に聞くか)


「なあ沢田」

「ん?」

「なんか、三河さん一人だけ輪に入れてなくないか」

「鈍感なお前でもやっと気づいたか。なんか、噂だけど三河さん女子の中で、はぶられてるらしいよ。噂だけどな」

「マジかよ。許せんな」

「ああ。なんか大臣の娘だからって気に食わない人多いらしくてな」

「三河さんに罪はないのにな」

「この噂が本当だったら胸糞悪いな」

「ああ、マジで許せん」


話してるうちに、女子の試合と授業が終わり教室に戻ることに。


「いやーお前はやっぱソフトボール上手いな。俺と沢田は負けたよ」


教室への移動中後藤が話しかけてくる。


「だろ!小谷選手より凄いだろ!」

「小谷選手?って誰だ?」


(やっべー。この時代まだ小谷プロ入りしてねーじゃん。なんとか誤魔化さなきゃ)


「地区大会で4番打ってたやつでな、そいつが凄いんだよ」

「地区大会の選手とか知らねーし笑お前よくそんなとこまでアンテナ張ってるな」

「ま、まーな」

(あぶねー後藤がバカでよかったー)


「そんなことより、ユウキお前ホームラン打った時女子から歓声沸いてたな。すげーじゃん。しかも最近お前が大人っぽく見えるからかっこいいって佐々木さんが言ってたぞ」

「え、あそう?大人っぽくなったかー…」

「前のお前なら、マジで?佐々木さんが?ヒャッホー見たいな感じだったのにお前まじで大人っぽくなったな」

「んなことねーよ」

(実はもう30手前ですから…)

と心の中で複雑な気持ちになった。


ガララ。


教室に入り、席に着くとあの三河さんの方から話かけられた。


「立川さん、さっきはすごいホームランでしたね」

「ありがとう。俺、野球とかソフトボールだけが取り柄なんだよねー」

「かっこよかったですよ」


嬉しくて照れそうになったが、冷静に取り繕うことに。


「そうかな」

「はい、勉強の時と違いイケてました」


真正面からイケてるなんて言われるのは久しぶりだったので嬉しくて跳ね上がりそうになった。

(ヤバい、なんで俺高校生のガキにこんな感情なってんだ)


「まーその通り勉強はダメだけどね笑」

「勉強も頑張ってください」

「はい」


話していると、先生が教室に入ってきて授業が始まった。

(退屈な授業だなぁ)

俺は熱心に授業を受けている三河さんをみて、沢田の言葉を思い出した。

(三河さん、ハブられてるのは本当なのだろうか。確かにあまり人とは会話していない様子だが…しかし本人に聞くわけにはいかないしなー)


「立川、何ボーッとしてんだ」

「え、あはい。すいません!」


「ワハハハ」


キーンコーンカーンコーン


(やっと昼休みか…体育は体感時間短いけどそれ以外は長すぎるな。良く高校時代授業受けてたな。)


「やあ立川君」

「何だ、神さ、神保君か」

「昼飯、一緒に食べないか?」

「まあいいけど、じゃあ沢田たちに今日は神保君と食うって伝えてくるわ」

「わかった」


俺は沢田の席に行って沢田に話しかけた。


「わりー今日、神保君と飯食うから後藤と食っててくれ」

「いいけど、ユウキあの転校生と妙に仲良いよな」

(ギクッ。まあ適当に誤魔化しておくか)

「あーあいつもしょっちゅう呼び出しくらっててそれで職員室で一緒に怒られること多くてなそれで仲良くなったんだよ」

「なんか怪しいな」

「別何もねーよ」

「ふーん。まあいいや。じゃあ後藤と食ってるな」

「おう」


神様から先にパン買って屋上で待ってるとスマホにメッセージが入っていた。

(あいついっつも屋上だな)


急いで屋上に行くと神様が屋上の段差に座っていた。


「来たか」

「ああ、またなんか話でもあるのか?それとも一人で飯食べるのが嫌なのかな?神保君」

「うるさい、俺はこの時代の観察とお前の観察のためにこの学校に来てるから別に友達ごっこするためじゃない」

「分かった、で話は何だよ」

「お前も気づいたみたいだな」


神様が妙なことを言ってくる。


「何のことだよ」

「三河さんがいじめられてることだ」

「ああ、そのことかそれなら沢田から聞いた。なんかハブられてるって噂らしいな」

「噂じゃない。事実だ。大臣の娘だからとか男子にモテるからとかで妬まれてるとかでな」

「マジかよ。事実だったのか…」

「ああ、だからお前には三河さんを救ってもらう」

「言われなくても本当だったら何か対処するつもりだったよ。30手前のおっさんが高校生のガキの争いに首突っ込むべきか迷ったけどな」

「さすが立川勇気だな」

「おう、しかもこの問題が解決できれば未来を変えられる手掛かりが掴めるかもしれないからな」

「キーマンとしての自覚が出てきたじゃないか」

「別にそんなんじゃねーよ…てかもうこんな時間だしさっさとパン食おうぜ」


俺と神様は、急いでパンを食べて教室に戻った。

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