第8話 キャンプ編 白熊クラブ / Eisbärenclub

今回は前回からの続きから語っていく。

読んでいない方にはぜひ読んで頂きたい。


歩き始め数分後、私達は早速立ち止まっていた。目の前にはかなり広い牧草地帯が広がっており、中にはかなりの数の牛が歩き回っていたのだ。

ティーホムに注意されながら私は有刺鉄線を越え、牧草の中を歩き始めた。しかしティーホムが教えてくれなかったのは、牛が全員雌だったと言う事だった。雌牛の方が雄よりかなり危険であり、雄より音に敏感なのだ。

私達が知らずに歩き続けると、案の定先頭の生徒が一人雌牛に威嚇され始めた。そして彼は最悪の選択を取ってしまった。背を向けて走り始めたのだ。その瞬間ティーホムは雌牛に向かって大きい声で何かを叫ぶと、生徒と雌牛の間に入った。

なんとかその雌牛は落ち着いたがティーホムがいなかったらその日は串刺しパーティーになっていただろう。そんな事もありながら私達は進んでいった。


やっと牧草地を抜けると、池まで後はずっと湿地帯であった。確かに朝なので湿地帯の泥水も多少冷たいだけなのだが、忘れないで欲しいのが私達がサンダルで歩いていると言うことだ。一歩踏み込む度に、足の指と足裏にグチュリとした感触と共に水が流れ込んでくる。

後半の頃には私の足指は全く感覚がなかった。

しかし二十分程してやっと私達は池に着いた!。。。

正直この時喜んで良いのか憂うべきなのか私は全く分からなかった。ティーホムは池に張ってあった薄氷に大きい石を投げ込み、氷を割ると笑顔で私達に着替えを要求した。


おずおずと上を脱ぎ水着一枚になると、空気の冷たさが更に感じられた。

池は実際に見ると更に深く見え、軽々と十五メートルは超えているような気がした。しかも池は決して管理されている訳ではないので、藻や水草がそこらじゅうに生えている。

私と他数人がたじろいでいると、最も体脂肪で守られているE君が突然飛び込んだ。数秒すると彼は上がってきてすぐに岸に這い上がったが、震えながら

「そ。そんなっな。。に悪くない。いぜ。」

と言われては、逃げる訳にはいかなかった。


深呼吸をすると私は池に飛び込んだ。水の中に入った瞬間冷たさと深さで少しパニクったが、生存本能で浮かび上がると過呼吸を繰り返し、岸に一心の思いで泳ぎ始めた。岸の草を掴むと私は上がろうとしたが、おかしな事に筋肉が思いどおりに動いてくれない。突然の冷たさでまだ驚いていたのだ!

「引っ張ってくれ!」

と私が催促して何人かに手伝って貰ったが、腹にはまだ這いずった草の引っ掻き傷が残っている。


その日は震えながらきた道を歩いて帰った。


(七日間続けたのは私の他に数名しかいなかったのだが、貰った証書が少ししょぼかったのでがっかりした。)

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