Etude,3「Farewell」
季節は巡って夏休みに入った。
君は疑問に思っていないようだけど、また夏休みが終われば初夏へと戻る。
僕達に過去はあるけれど、今となってはそれすらも怪しいんだ。
僕達はどこかの――君との美しい朝に、君が話してくれるような物語の中の登場人物ような存在らしい。
だけど、僕は満足しているんだ。
小梅ちゃん――。
僕は君のそばにいられるのなら、それでよかったんだ。
だけど、今夏は違った。
鳴神誠也――君は彼と深く出会ってしまった。
彼はただのクラスメイトだったはずなのに。
僕が知らなかった君の哀しみを――彼のユーモアとあたたかさが癒やしていった。
そして、君の部屋で――彼と交わっている君を見た。
僕は――その時、僕の「心」と君の「心」を知ったんだよ。
全てが手遅れになってから。
知ったんだよ。
そして、僕に見られたことを苦にした君は――次の日、川へと飛び込んだ。
夏雨の激しい日だった。
小梅ちゃん――。
息がない状態でレスキューに助け出された君は、まるで悲劇の王女――オフィーリアのように苦悶の表情を浮かべていた。
例え――リセットされる運命だと知っていても、また君との美しい朝が繰り返されるとしても、この世界にそんな結末の一つが用意されていると知ってしまった僕は――君との日々をまた美しいと感じられるのだろうか?
『僕ハ君ヲ救イタイ』
小梅ちゃん――僕は君を――。
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