Opus,7

 昼前に警察へ迎えに来た田中母。

 田中とそっくりな田中母。

 いや、この場合、田中がそっくりなのか。


 すみません。

 息子さんに転生させていただいております。

 ペコリと頭を下げて自宅へ帰る。


 幸い殴られた箇所は骨に異常がなく、傷口や腫れも日が経てば治るだろうとのことだったので、テクテクと歩いて帰る。


 とりあえず、学校は三日ほどお休み。


 腫れた顔ゾンビ顔では登校出来ないだろう、との判断だった。


 担任の先生に事情を報告する田中母。

 どうやら警察の方々だけでなく、先生にも息子を褒められたようで、どこか嬉しそうな田中母。


「今夜はすき焼きよ。国産和牛よ。オホホホホ」と言って、商店街へ買い物に出掛けた田中母。


 俺はほくほくした顔で、自室のベッドへ腰掛けてゲームをしていると、春山さんが部屋に入ってきた。


 心なしか怒っている。


 やっべ。

 連絡するのを忘れてた。


 俺が焦っていると――春山さんが突然抱きついて来た。


 不意の出来事で、上手く受け止めきれずにベッドへ押し倒される。


 んん?

 

 春山さんの髪が鼻先を擽る。

 

 すげー近いし、あと色々、諸々、柔らかい……。


 それに、首元から日なたの優しい香りがする。


 とりあえず、どうしたんや?と尋ねてみると、


「殴られて怪我したって……おばさんから聞いて……心配した……心配したよ……」


 俺の胸で泣き崩れる春山さん……。


 そう言えば、田中母も駆けつけてくれた時は悲壮な顔をしていた。

 案外、俺がピンピンしていたので、今はあんな感じだけど……。


 ――心配を掛けてしまったのだろう。


 こんなにも田中のことを大切に想う人達に。


 はぁ……。


 俺は何やってんだ……。


 これからは田中の体も大切にしないとな……。


 俺はそう思いながら、春山さんを宥める為に背中を摩るのだった。


 そして、翌日から三日間。

 俺は春山さんから、もの凄く過保護に看病されたのだった。


 なんか、うん。


 看病というより介護されている気分だった……。


 その手厚い介護の日々が過ぎ、ついに学校へ行くことになったのだが……。


 まさか、あんな事件が起こるなんて――この時の俺には知る由もなかった。


 

 ◇◇◇


 もう少しで終わります。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 評価や応援、コメントまでありがとうございます。

 励みにさせていただいております。

 

 

 


 


 

 


 

  

 

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