Opus,6

「はーい、どうも、何やら不穏な空気に駆けつけてみれば、ケンカっすか?ケンカはいけませんて、俺、血とか苦手なんで」


 とりあえず、立ちはだかってみたものの……怖すぎりゅ。

 だが、下手に空気を読むなっ。

 話を続けろ……。

 

「あん?お前……誰だよ?」


 相手をイラつかせてもいいから話だけを続けろ。


「田中っす」

「はっ?名前なんか聞いてねぇわ。とりあえず、お前邪魔だから」


 バキッ!!!!


 躊躇なく殴って来た男のパンチに、俺の頬は鈍い音を立てて体も吹っ飛ばされる。


 痛っ!!

 痛すぎる……。


 だが、ここまでで一分経過っと。

 しかし、こんなのをあと何発食らうんだよ。


「アンタ、大丈夫か?」


 駆け寄って来る三月様を手で制した。

 もっそー感じ悪いよな、俺……。

 それでも口パクで「逃げてください」と伝えたのだが、三月様は逃げるどころか、男達に睨みを効かせていた。


 はぁ、正義感の強い三月様だから、こうなるよなと思い立ち上がる。


 制服に付いた埃を払って、切れた口からドバドバと血を流しながら、俺はまた緊張感皆無のヘラヘラ顔を作って男達に話しかけた。


 そう、これこそモブにしか出来ない技。

 頭おかしい人を演じる、だ。イケメンには出来ないんだぜぇ

 

「ほら〜口から血が出て来たじゃないっすか?聞いてました?俺、血を見るの好きじゃないって言いましたよね?」

「うっわ、コイツ……キモっ……」


 うん、確かにこんな奴がリアルにいたらキモいだろうな。

 ここまでで、三分。

 ヨシヨシ。

 結構、時間を稼げたよな。

 

 だけど、こっからは……耐える時間だ。

 

 リーダー格の男から、有無を言わさずボカスカと殴られる俺。

 

 三月様も助けようとしてくれたが、いくら強いといっても、立ちはだかった男二人を相手にするだけで精一杯のようだった。



 そして、耐え続けること三分後――。



「君達!!そこで何をしている!!」


 警官が到着した。


 はぁ、神……。


 おつかれさまです。


 逆探知に五分――その後、一分で到着するなんて流石っす。


 日本の警察は優秀。

 ベネズエラ治安最悪国家ではこうはいかない。


 コ○ン君、観ててよかった……。


 それに、コイツらもキモさ100%の俺に全集中していたから逃げ遅れた。

 全員、事情聴取が行われるだろう。

 電話を繋いでいたから、言い逃れは出来ない。

 学校によっては停学か退学処分。


 少なくとも、三月様に絡む時間は無くなるだろう。


 俺は仰向けに倒れると、コロコロと公園を転がりながら、ホッと安堵するのだった。




 ◇◇◇



 皆様のコメントが面白かったので、予定にはありませんでしたが、もう一話更新させていただきます。

 いつも評価や応援、コメントをありがとうございます。

 感謝申し上げます。




 

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