Opus,5

 とりあえずグー○ルマップさんで現在地を確認しよう。

 検索、グー○ルマップっと。

 

 該当ナシ。

 

 ですよねー。


 この世界は、現実世界と似て非なるモノだと改めて実感する。


 道行く人に聞くしかないか。

 そして、女の子はスルーだ。

 野郎に聞くしかない。

 

 しかし、通勤通学時間を過ぎた時間帯で人がいない。

 ご老人達も公民館か喫茶店で朝活している時間だ。


 本当に人がいない。


 ヤバい。

 完全に遅刻だ。

 しかし、とりあえず遅くなっても学校に行かなければ。

 田中を登校させないと、きっと春山さんが心配するだろうしな。


 交番かコンビニでもあれば……。


 俺は碁盤目のように似た景色にうんざりしながら歩いていると、小さな公園で言い争う声が聞こえてきた。


 おお、やっと人がいた。


 しかし、不穏な空気が漂っている。


 どうする?


 とりあえず、様子見だけでも。


 それで、話しかけられそうなら道を尋ねてみよう。


 俺は物陰に隠れながら様子を伺っていると、どうやら絡まれているのが俺の見知った人物だった。


 あれって、三月しゃま、じゃね?


「ブスのくせに、今すぐ龍介君から手を引きなさいよ」


 うわー。

 三月様に向かってブスとか言えるのすげー。

 確かに相手の女の子も美人だが、さすがに三月様相手だとな……。


 月とスッポンまでは可哀想だけど、提灯に釣り鐘くらいの差はある。


 あと、龍介君って。

 犀川龍介のことだよな?

 さすがヤリチン君……他校の女子までとは手広い。

 

「はあ?犀川に付き纏われて迷惑しているのはこっちだからな」


 燃えるような赤髪を掻き上げて睨みつける三月様。

 

 くぅーカッコいい。


 しかし、困った。

 もうヤリチン君最強の竿役が動き出しているとは予想外だ。


 三月様は誠也きゅんと出会ってもいないのに。


 ちなみに誠也きゅんと三月様が出会うのも、山本さんと同じく夏休みだ。


 三月鏡花ルートの場合だと、夏休みに行われる花火大会で三月様が他校のヤンキーに絡まれるイベントが起こる。

 それを親友の藤宮三太と遊びに来ていた誠也きゅんが体を張って助けたことから、二人のストーリーが始まる。


 だけど、今は初夏。

 ルールールルルー。

 夏休みまで、一ヵ月半もある。

 やっぱり時系列、なんか早まってません?


 はぁ……それにヤリチン君……ヤリチン君だけに手が早いんだよな。


 きっと、あの手この手で三月様を落としにかかるはずだ。

 バッドエンドでは三月様が罠に掛かり、結局はヤリチン君のセフレになってしまう。

 

 そんなNTR絶対阻止だ。

 エロゲプレイ中に、大変お世話になった俺としては、三月様には誠也きゅんとラブラブイチャイチャして素の彼女に戻って欲しい。

 いや、俺だけではない。

 全ユーザーが望んでいるはすだ。

 しかし、解決策などあるのだろうか?

 うーん。

 俺が首を傾げている間に、ヤリチン君の自称彼女さんがヒートアップしていく。


「な、なによ。龍介君はアタシの彼氏なんだからそんなわけないでしょう。あなたが誘惑してるに決まっているわ!」

「はぁ……アンタ、騙されってから」

「う、うるさい。龍介君はアタシだけって言ってくれたもの」

「それこそ話にならねぇな……。アンタ大丈夫か?でも、まあ、アンタが彼女ならアイツに言っといてくれよ。あーしは迷惑してっから。今後、一切関わってくるなってよ」


 ヤバっ、啖呵をきる姿、すげー絵になる。


 俺がポッと頬を染めていると、逆上した自称彼女さんが叫び始めた。


「早くこの女をヤッてしまって!!」


 その掛け声に、物陰から出てくる三人の柄の悪そうな男達。


 はっ?自称彼女さん。

 暴走しすぎじゃね?


「へっへっ、こんなマブい女を好きにしていいのかよ」

「いいわよ。でも楽しみ過ぎたらダメ。脅す用の写真も撮っといてよ」

「アンタ、何言ってんだ?」


 はぁぁぁ?

 三月様の言う通りだぞ、自称彼女さん。

 いくら何でも、それはアウトだろ。


 しかし、女子の嫉妬って、こんなにヤバいのかよ……。


 どうする?


 俺に誠也きゅんのような格闘技の覚えはない。

 そうなると助けることは難しい。


 考えろ、とりあえず警察へ電話して、しかし場所がわからねぇ。

 説明している間に……。


 ええい、ままよ。


 何とか三月様を逃がす時間だけでも作る!


 俺はガクブル震える足で、柄の悪そうな男達の前に立つのだった。




 ◇◇◇



 無策の田中君。

 早速、女難の相が的中……自称彼女さんの暴走モード

 次話は明日に更新いたします。

 いつも評価や応援ありがとうございます。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る