Opus,3


 一限目から四限目まで、ずっと推しを見てしまった。


 可愛いは正義だ。


 エロゲ内で見せてくれた彼女のあんな姿や、あんな体ぃ……を思い出して……ゴホンッ、まだ昼間だった。


 危ない、危ない。


 真っ昼間から絶対領域へ突入する所だった。


 よし!

 とりあえず、ポタポタと滴る鼻血を拭こう。


 モブの鼻血ほど見苦しいものはこの世に無いからな。


 そんな訳で授業中にも関わらず、俺は鼻を押さえながら鞄をゴソゴソしていると、隣席から、そっとティッシュが差し出されてきた。


 嘘、だろ……?


 恐る恐る隣を見ると、あの山本凛音が高級ティッシュ鼻セレ○を手に持っていた。


 しかも「あなた大丈夫なの?良ければ使いなさい」と超美声の台詞付きで。


 ああ、この世界エロゲ界の神よ。


 本当にいるのかは知らんけど、このティッシュ至高の品を俺に使えと。


 無茶振りすぎりゅ。


 くっ、出来るか、そんなこと……。


 しかし、ト○ロのカ○タ君並みにティッシュをグイグイと押し付けて来る山本凛音最難関ヒロインさん。


 そんなに、俺の鼻血は見苦しかったのだろうか?

 俺は抵抗を止めて、ペコリと一礼してからティッシュを使わせて貰う。


 そんな俺を、山本凛音はクールに一瞥してから「中を見なさい」と小声で言ってきたので、ティッシュを取り出して行くと二つ折りのメモが挟まっていた。


 震える手でメモを開く。


『昼休み、屋上で』


 達筆な字で簡潔に要件が記されていた。


 うん……。


 あっ、これ、絶対あれなやーつだ。


 ずっと見てたのがバレた的な。

 

 こうして俺は四限目の残り時間中、背中に冷や汗を流し続けるのだった。


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