第5話 呂布
むかしむかし、ちゅうごくのある村にりょふというおんなの子がおったそうじゃ。
からだはとても大きくてつよそうじゃが、膨らみかけのお花の蕾のようなかわいらしいおんなの子じゃった。
しぐさとようすはたとえればウサギさんのようじゃった。
そんなりょふには、おとうさんも、おかぁさんもおらんかったそうな。
りょふはからだが大きい分、うごきはゆっくりじゃった。
うごきがゆっくりなりょふはあたまのかいてんもゆっくりじゃったが、ちからもちでこころのやさしいおんなの子じゃ。それなのにのぅ、むごいむらびとはりょふをうけいれてくれんかったそうな。むらびとは、りょふに、ちからしごとをてつだってもらえば、おおだすかりでよかったのぅ。
「ぐず!うすのろ!らんぼうもののめすオーガ!」
りょふはまったくらんぼうではない、むしもころせないやさしいおんなのこじゃったのにのぅ
「お主は羊の皮を被った狼然り、女の子の皮を被った雌オーガじゃろ? ワシの村から出ていけ! 村の者を喰ったら容赦せんからな!?
お主にやるチーズやステーキ、ハムはないわ!」
りょふはむらびとよりも、いきものにかんしゃしてだいじにすてーきをたべるのにのぅ。
「村長さんの言うとおりだよ。アンタの体はオーガみたいにデカいからね、アンタは村のみんなの家を簡単にこわしちまうし、大岩だってこっぱみじんにしちまうだろ? アンタの馬鹿力で触られた男の子はみんなケガしちまうんだよ!。わかってんのかい? わかってんならとっとと失せな! 万が一にもあたしの息子を触ったらただじゃおかないからね」
りょふはいっぺんもむらのこどもをきずつけたことなんぞないのにのぅ。
「大飯ぐらいの、役立たず!」
こころのきたないむらびとどもは、いっせいにりょふに、くちぐちにいじわるなことばをあびせながら石まで投げおった。
りょふは、どんなにいじわるをされてもけっしてむらびとをにくんだりはしなかったんじゃ。りょふはいつものようにいじめられても、しかえしもせずに、大きなからだをちぢこめて、しくしくないていたそうな。そのたびに、りょふはめがみさまにこういのったんじゃ。
「めがみさまよ。むらのひとたちをおゆるしください。かれらは、なにをしているのか自分でわからないのです」
りょふがいつものようにしょんぼりして、めがみさまにいのっていたときのことじゃった。
「お嬢さんよ、妾と肩を並べる花顔が涙で台無しではないか」
美しさといげんをかねそなえた声が、りょふに話しかけたんじゃ。
りょふは、ハッとしてふりむくと、
ふうかくとオーラのある女の人がおったそうな。
女の人が何者であるかなんてわからない。ただ、せがたかくて、いげんがあり、妲己のように美人な姿をしていることしかわからない。
にくづきのいい大きな女の人じゃった。
「か、かがんってなんですか? おねえさま」
「フフッ・・・・・・おねえさまのえらくておおきな名前を教えてあげよう (今はまだ、そなたの偉大さを識らず、迫害する愚者が続出するなど……絶望に満ちている。然し、いずれ、優しさ《おろかさ》、
「え!? 私のおかおが・・・・・・とろくて・・・・・・愚図でみんなに迷惑かけてばかりの私のおかおが・・・・・・お花みたいにきれいなんですか!? とーたくさま、わたしぃ、そのことば、とってもうれしいですぅ」
「おぉ、そうじゃ。そなたのような心の清らかな乙女は、皆等しくお花のように綺麗なお顔をしておるものよ。そなたのを玉を転がすような声は、とても耳を愉しませてくれるわ。心無き世の中の人は、難しい言葉で言えば、『美女は命を断つ斧』というて美しい女の人は男の人の不摂生を招いて命を短くするというが、あれは大きな嘘よ。そなたもわらわも心・容姿・声・気品の4つの要素において真に
さぁ、そなたの花のように綺麗な顔を妾に魅せよ!
さぁ、そなたの玉を転がすような声で妾の耳を愉しませよ!
さぁ、妾の胸の中で抱きしめられるがいい!」
董卓は、りょふをぎゅっと抱きしめた。
「・・・・・・わらわは……そなたを……見捨てぬ!……わらわは……そなたを……拒まぬ!!……わらわは……そなたを……傷つけぬ!!!」
このりょふというおんなの子こそ、そう遠くはない将来、優しさという真の強さを誰よりも識り、海内無双の英雄・関羽と互角に渡り合う程の武勇に秀で「人中の呂布、馬中の赤兎馬」とまで讃えられ……天下万民を救うため、乱世に臨みながら、志半ばで命を散らすことになる悲劇の女英雄・呂布である。
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