第4話 ゴブリンの実態

「……小人?」


外に出て散歩をしていると、他の人とは明らかに見た目の違う種族がいた。肉屋の手前で、何らかの取引をしている。灰色の肌に簡素な腰蓑、背の低い見た目だ。


「あれはゴブリンだ」

「ゴブリン?」


ゴブリンって、あのゴブリン?作品によって強さがだいぶ違ったりするけど、大体弱くて汚いあの?

魔物でしょ?街をうろついててもいいの?


「ああ。森で静かに暮らす魔物……いや、魔人の一種で、ああやってたまに人間と取引をしている」

「ゴブリンって、私たちの世界だと結構害のある種族なことが多いんだけど」

「我々の世界にも害のあるゴブリンはいたぞ?かつて、だがな」


過去形だぁ。何をしたんだろ。


「彼らの繁殖は他種族を用いるものだったからな。彼らはオスの個体しか存在せず、他種族のメスによって繁殖する。だからお互いに理解のない間は、ゴブリンたちが人族を狙うことも多かったんだ。今も昔も、人族が最も地上で栄えているからな」


なるほど。つまり……エロ同人みたいに?

他種族を使って繁殖するゴブリンと、地上で最も繁栄している人間が出会ってしまうことは多かったのだろう。


「だから、そのような有害なゴブリンの一斉駆除を行った。これが……500年前か?そのぐらいだな。私もその掃討部隊の一員として多くのゴブリンを狩った。ゴブリンたちも一枚岩ではなく、人間を犯すことを好む者、ただのんびり平和に生きたい者などさまざまだったから、逆らうものを全て殺したものだ」


懐かしそうにオリヴィアは語る。でも内容は物騒だ。


「じゃあ、彼らは無害なゴブリンなんだ。会話が通じる相手なのね」

「彼らも生き残るのに必死だからな。争わずに共生できる可能性があるならそうしたいだろう」


ゴブリンにも考える頭があるんだなぁ。そりゃそうか。人間に危害を加えることを目的に生きているって先入観があったけど、彼らも生物だ。生き残るためにそう選択したに過ぎないんだろう。そして、生きるための代案が提示されたなら生き残りやすい方に飛びつくのも自然なことだ。

というか、昔のゴブリンはよく自分の数倍の大きさもある人間を繁殖の道具にしようと思ったな。いくら地上に繁栄していたとはいえ相手としては分が悪いだろ。


「昔のゴブリンはよくそんな危険なことをしてたね」

「彼らの生殖機能は元々野生生物を対象にしていた。それが、ゴブリンと人間が同時期に激増してしまったことによってゴブリンが人間を使って繁殖するなんて事態に陥ったのだ。ありていに言ってしまえば、不幸な出来事だな」


人間とゴブリンの生息しやすい環境が似ているのかもね。それなら同時期に増殖したことにも説明がつく。まあ、過去なんてどうでもいいことだけど。


「彼らはどうやって繁殖してんの?」

「ほら。見てみろ」


オリヴィアの視線の先には、精肉店のような場所から豚を貰い、それに乗って帰っていくゴブリンがいる。あ、棒の先にニンジンをぶら下げて操縦してるんだ。どっかで見たな……。


「……精肉店から生きたブタが出てきたんだけど?」

「彼らとの取引に必要だからな。他種族、と言っただろう?彼らは豚を用いて繁殖する。豚はゴブリンの胎児を受け入れられるほどの容量があり、数を用意できるからちょうどいい」

「豚権はどうした豚権は」

「権利は知性ある生物に与えられるべきだ」

「愚問だったか~」


そりゃそうか。知性は危険性だ。危険な生物とは仲良くするか完全に滅ぼすかのどっちかしかない。ゴブリンは共生を選べる余地があってよかったね。


「ゴブリンたちは豚の代わりに何を渡してるの?」

「いろいろだな。彼らも知性の高い生物だ、生産できるものには種類がある。精肉店と取引しているのはもっぱら魔石が多い。本来は換金してから使用する必要があるが、頻繁に取引が行われるからな。精肉店側が換金を担っていることも多いのだ」

「なるほどねぇ」


しかも、ゴブリンが魔物から魔石を採ることで魔物の被害も減っているらしい。上手く世界は回るものだ。


「彼らは手先が器用なものも多い。成体でも小柄で手が小さいこともあり、魔石のほかにもネックレスや指輪を作り生計を立てているものも多い。あとは、その体躯を生かし災害救助活動に身を置く者もいる。いずれにしろ、我々人類とうまく共生出来ているという事だ」

「人類はゴブリンに反感はないの?」


以前人類に手を出していた種族だろう。そこの軋轢が簡単になくなるとは思わない。


「折り合いをつけた人も多いが、何人かはゴブリンを含む異種族に対して反感を抱いているものも多い。その多くは人類至上主義として人間教の信者として活動している」


人間教。宗教か。いつの時代も宗教はろくなことをしないな。


「オリヴィアも大変ね」

「どちらかというと、お前の方が大変だ。神を殺したのがそいつらだからな」


ああっ、人間至上主義ってそういう事!?

だいぶめんどくさいかも……。




***


すんません、この作品は更新頻度めちゃ遅いです。

ネタ思いついたら書く短編集です。

また思いついたら次書きます。

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