第4話 召喚してみよう

「クリード様、登録も出来ましたしとりあえず依頼を見てみませんか?」

「そうだね。どんな依頼があるのか興味あるし」


 俺たちは立ち上がって掲示板の前に移動、常設依頼を確認するといくつかの依頼が張り出されている。


 まずはゴブリン討伐。5匹で1つの依頼のようで報酬は大銅貨1枚。ゴブリンは右耳が証明部位と書いてある。


 次はウルフ討伐。これは1匹毎の依頼で報酬は銅貨2枚。こちらは牙が証明部位になるらしいのだが、毛皮の買取もできるらしい。


 他にもいくつかの常設依頼を確認して覚える。

 とりあえず見かけたら戦ってみよう。


「ではクリード様、早速街の外へ行きましょう!」

「待ってサーシャさん、俺何も装備とか無いしある程度は装備整えてから行きたいんだけど」

「魔物が出たら今日はアンナとソフィアに任せましょう! それより早くとらっくが見てみたいです!」


 両手を握ってキラキラした目でこちらを見ているサーシャさん……

 これ物凄い断りづらい……


「わかったよ……アンナさんソフィアさん、魔物は任せて大丈夫?」

「はい、護衛はお任せ下さい」

「任せてくださいッス! ゴブリンやウルフなんてこの装備でもなんの問題も無いッス!」

「ん? この装備?」


 アンナさんとソフィアさんを見てみるがちゃんと武器も防具も持っている。

 もしかして本来の装備じゃないのかな?


「教国の鎧を着ていると目立ちますからね。私がお願いして目立たない装備にしてもらってるんです」

「そういうことか……でも護衛が目立たないような格好しててもサーシャさんが修道服着てたらサーシャさんが目立つんじゃ?」


 俺がそう口に出すと、サーシャさんはビクリと身体を震わせてから硬直してしまった。


「私……目立ってます?」

「あー……言いづらいけど結構目立ってると思うよ? 王城からここまで移動する間も結構視線集めてたし」

「ふ、不覚……」


 ガックリと肩を落とす聖女様。

 アンナさんとソフィアさんからの視線が痛い……


「ま、まぁそう落ち込まないで、次から気をつければ……ね?」

「そ、そうですね! では早速行きましょう!」


 サーシャさんが元気を取り戻したのでこれ以上言うのはよしておこう。

 また変なこと口走って落ち込ませるのも本意じゃないしな。


 そのまま4人連れ立って冒険者ギルドを出て外壁に向かって歩く。

 この王都には東西南北に大門があり北東、北西、南東、南西に小門があるらしい。

 冒険者ギルドから一番近いのは東の大門で、目と鼻の先にある。


 俺たちは大門へ向かい門兵さんに声をかけて王都を出る。


 門兵さんとのやり取りは思ったより簡単で、冒険者証を見せたら門兵さんが名前を控える。

 戻った時にまた冒険者証を見せればそれでいいらしい。


 無事王都を出た俺たちは街道からそれであまり人目につかない場所を探す。

 トラックを召喚なんてしたら目立つことこの上ないので仕方の無い処置だ。


「聖女様、左前方にウルフです」


 ソフィアさんの言葉で足を止める。

 言われた方向に目を向けると、薄茶色の犬……狼か。狼が1匹近付いてきていた。


「ぐるる……」


 ウルフは歯を剥き出し唸りながらゆっくりと近寄ってくる。


「私が出ます。アンナは護衛を」

「了解ッス!」


 ソフィアさんは穂先に巻いている布を外して狼に向けて駆け出した。


「シッ!」

「ギャウン!!」


 ソフィアさんの突き出した槍は綺麗にウルフを貫き一撃で倒してしまった。


「はや……」

「ソフィアは素早さの評価がCですからね、相当強いんですよ!」


 何故かサーシャさんがドヤ顔でそんなことを言ってくる。

 素早さCか、たしか俺はEだったよな……2つも離れてるってことは文字通り格が違うんだろうなぁ……


「自分の素早さはFッスからねぇ……ソフィアの素早さは羨ましいッス」


 アンナさんはFなのか、ステータス上は俺の方が素早いらしい。


「聖女様、討伐完了しました」


 ソフィアさんはなぜかウルフの死体を引きずってこちらに歩いてきた。


「ご苦労さまです。そのウルフは収納しますね」


 サーシャさんがウルフに向けて両手をかざすとウルフの死体は光に包まれて消えていった。


「今のは?」

「今のは収納魔法です! 使える人はあんまり居ないんですけどとても便利な魔法です!」


 俺が興味を示したのが嬉しかったのかサーシャさんはさっきよりも更に胸を張って渾身のドヤ顔を浮かべている。

 今まであまり気にしていなかったけど、マジで可愛らしい顔してるよな……


 美少女と美女の中間くらいと言うのかな?

 純日本人でほぼ実物の西洋人を見たことの無い俺が綺麗、可愛いと思うんだからほんと綺麗で可愛いんだろうね。


「すごいな……それって俺も覚えられたりするのかな?」

「クリード様がですか? 失礼ながら……クリード様は【魔法適性】のスキルはお持ちですか?」

「いや、持ってないよ。【魔法適性】のスキルが無いとやっぱり無理な感じ?」

「そうですね……」

「そうですか……」


 俺には魔法は使えないのか……せっかく異世界来たのに……


「まぁレベルが上がれば習得するかもしれませんし! 私たちみたいなこの世界の人間では異例ですけどクリード様なら覚えられるかもしれません!」

「そうなの? なら希望だけは捨てないでおこうかな?」

「はい! それでもうこの辺りなら人目に付くことも無いと思うんですけど、そろそろ見せて貰えませんか?」

「そうだね……ところでスキルってどうやって使うの?」


 見せる気はあるんだけどそういえば使い方わかんないや……


「使いたい! って気持ちが大事ですよ! クリード様はとらっくの明確なイメージはできますよね?」

「気持ちね……イメージはしっかりできるよ」


 毎日眺めてたし免許取ってからは実際運転もしてたからね。


「使いたい! って気持ちで明確にイメージしながらスキル名を唱えてみてください、多分それで出来ます!」

「多分かよ……まぁわかった……【トラック召喚】!!」


 目を閉じて俺の乗っていたトラックをイメージしながら唱える。


 すると俺の数メートル先になにやら大きな魔法陣のようなものが浮かび上がった。


 何が起こるのか観察していると、地面から生えてくるようにトラックが出現した。


「おぉ……」


 出来た!


「これが……とらっく……」

「なんて大きさ……」

「す、すごいッス!」


 三者三様の反応を見せる聖女様御一行、共通しているのは大きく目を見開いて口をぽかんと開けているところだね。


「く、クリード様、これが動くのですか?」

「うん、動かしてみようか?」

「是非!」


 おぉ、めっちゃ食い付いてきたな……


 俺はトラックを動かすためにトラックへ近付いてみる。


 うーん……会社のロゴ入ってるしナンバー8931だしこれ完全に俺が乗ってたトラックだよな?


 驚愕……でもない事実に気付きながらも俺は運転席のドアを開けてトラックに乗り込んだ。

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