おまけ

*シルビィの結婚相手


「そういえばテオ様。一度目の人生では、わたくしはどなたと結婚していました?」

「……シルビィは誰だと思います?」


「うーん、そうですねえ、幼馴染とか?」

「ふーん。幼馴染ですか。そうなんですね。へえ」


「なんですかテオ様、その顔。怖いんですけど。怒ってます?」

「べつに。怒ってませんよ。気のせいです」


「それより正解は?」

「さあ」


「さあ?」

「実は覚えてなくて。すみません」


「ええっ。もう、気を持たせるようなこと言わないでくださいよ。期待したじゃありませんか」

「幼馴染と結婚したかったですか?」


「違いますよ。ちゃんと結婚できていたかが気になっただけです。

 本当に覚えていらっしゃいません? ちらっとウワサとかは」


「覚えていませんよ。

 まあ例え覚えていても、いいませんけど。

 これがきっかけで、その相手を意識されでもしたら面倒ですし」


「ですよね!」



*親切な公爵様


「テオ様、ありがとうございます」

「何がですか?」


「わたくしの幼馴染に女性を紹介してくださったそうで。

 なかなか良縁に恵まれないと嘆いていたのですが、今回はうまくいきそうだと喜んでおりましたわ」


「ああ、あれ。お力になれたなら何よりです」

「ひょっとしてあの二人がうまくいくことは、一度目の人生で知っていたのですか?」


「ええ、まあ。そんなところです」


「なら、あの二人は運命の仲という訳ですわね。

 きっとテオ様の紹介がなくとも知り合っていたのでしょうけど、早く出会えば出会った分だけ、幸せな時間が増えますし。よかったですわ。

 本当にありがとうございます」


「いえいえ。お気になさらず」


 本当は、シルビィの幼馴染はテオドールが紹介した女性とうまくいったこともあったし、シルビィと結婚しかけたこともあったのだが。


 テオドールはそんなことはおくびにも出さず、善人の笑顔を保った。



*浮気


 面倒くさい女よね、と自覚しながらも、少しの嫉妬が欲しくてシルビィは尋ねてみた。


「テオ様は結婚後、わたくしに自由にしていいとおっしゃいましたけれど。

 もし、もしも、万が一、わたくしが浮気をしても許して下さるのですか?」


「もちろん。そういう約束ですからね」

「そう、ですか……」


「ただ、一つだけ条件があります」

「条件?」


「浮気するときは、事前に私に言ってからにしてください。

 浮気相手も連れてきて、ちゃんと私に紹介してくださいね」


「浮気の事前申告に、紹介!? なんですか、それ。変ですよ」


「変じゃありませんよ。

 だって、私はシルビィの夫ですから。

 妻が変な男に引っかかって不幸に見舞われたりしないよう、相手を審査しないと」


「はい?」


「ふふ、どこの馬の骨が、どのツラ下げて私にケンカを売りに来るのか。楽しみですねえ」

「……」


 面倒な質問を上回る面倒な回答が返ってきて、シルビィは喜ぶべきかがっかりするべきか、反応に困った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「2度目の人生は平穏に暮らしたいから」と公爵様に結婚を迫られています サモト @samoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ