今、近くにいるのは自分

湊は、アンナに自分の気持ちを話した事で、ますます、自分はえりの事が好きなんだと実感した。

やっぱり、えりの彼氏の話を聞きたかった。

あんまりこういう事はしたく無いが、春乃について来てもらってえりの家に行ってみることにした。


ピンポン。

「いらっしゃい」

「今日はいい?」

「うん、孝司も暇そうにしてた」

「良かった。あ、これお菓子。ポテチだけど」

「ありがとう。あとで春乃ちゃんと孝司に持っていくね」

「うん、やった」

春乃は喜んだ。

(春乃、付き合わせたから。お詫び…)


湊とえりはいつも通り、リビングで話している。

「俺さ、土屋と別れた」

「そうなの?!」

「うん」

「大丈夫?」

「うん、大丈夫。ちゃんと別れたから」

「そうなんだ…」


「ね、えりはさ」

「ん?」

「パブロ君の…どこが好きなの?」

湊はストレートに聞いた。

「え…」

「好きな所、どこ?」

湊は、まっすぐえりを見て言った。

えりは、顔が赤くなった。

「お互い、そのまんまの自分でいられる所?」

(そんなの、俺等だってそんな感じじゃん…)

「ふーん。あとは?」

「たまに、すごい助けてくれる」

「あとは?」

「勘が鋭くて気持ちに気づいてくれたり。ぐいぐい遠慮ないとことか。包容力とか?」

(…めっちゃ出てくるじゃん…)

「でもね、すごい子供っぽいし、自分かってだし。いじわるだし…」

えりは笑って話す。

「ふーん」

「最初はね、嫌なやつだと思ってたんだけど。一緒にいると楽しくて」

嬉しそうな絵理の顔を見て、湊は苦しくなった。

「あー、恥ずかしっ」

えりは立ち上がってキッチンの方に行った。

「湊、チーズケーキもらったんだけど一緒に食べない?」

「うん、食べる」

「良かった。ホールでもらっちゃったから。しかもチーズケーキ食べれるの、私だけで…」

「俺、チーズケーキ好き。ていうか、甘いもの全般好き」

「そうなんだ。スイーツ男子だ」

「えりは?」

「私も好きだよ」

「え?」

「甘いもの!好きだよ!」

「え?」

「甘いもの好きっ!何度言わせんねん」

2人は、笑った。


「美味しい」

「ね」

2人でもぐもぐ食べる。

「俺さ、」

「うん」

「日曜はいつも土屋と一緒に遊んでたんだけど、もう暇になるから。たまに遊ぼう?」「うん。孝司、喜ぶよ」

(あ、孝司がね…)

「えりは、どっか行きたいとこないの?」「え?」

「ほら、大人?2人いたら、春乃たちいても、出かけられるでしょ?」

「うーん。でも、誰かに会ったら…」

「別にいいけど。俺、もう彼女いないし」

「私が彼女だと思われたら、湊、困るじゃん」

「困んないけど?」

「…新しい彼女作る時とか…」

「あのね、えりさん。俺別れたばっかりで、次の彼女がどうとか、考えませんよ…。鬼畜じゃないだから…」

「アハハッ。そうか。…そのくらい好きだったの?」

「…そうじゃなくて一般論」

「一般論…。そんなの気にするんだ」

「俺、超常識人だからね…、こう見えて」

「そうなんだ」

「じゃなきゃ、春乃育てられないでしょ」「アハハッ。育ててるの?」

「育ててるよ。孝司、育ててるでしょ?」

「え?育ててないよ?勝手にやってくれてるよ」

「えり、意外と大らかだよね」

「そうかなぁ」

えりは、チーズケーキを食べ終えた。

「で、えりさん。日曜、どっか出かける?」

「そうだね、どっか。孝司と春乃ちゃんに聞いてみよ」

(…今のところ打つ手なしだな…)


でも、えりの気持ちは自分に無くても、今、近くにいるのは自分だと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る