アンナの部屋
とある日曜日。
日曜はたいてい、彼女のアンナと遊びに行く。
「湊、ご飯、何食べる?」
「んー。アンナの食べたいのでいいよ」
「え…、珍しい」
「え?」
「大概何か調べてくるのに」
「あぁ、ごめん。忘れてて…」
「…。マックでいい?あんまりお金ないし」
「うん」
「ご飯食べたら、うちくる?」
「え?」
「うち。今日は家族出かけてていないから」「いや…」
「そう」
「いいの?」
「いいよ」
「…いいの?」
「…。だから、いいって」
アンナは笑った。
湊もアンナもどういう意味なのか分かっていた。
湊とアンナは付き合って1年近くたっていた。
関係を持つには遅いくらいだ。
「じゃ…、お邪魔します」
「うん」
何となく気まずい雰囲気でお昼ご飯を食べたあと、アンナの家にむかう。
アンナの方から手を繋いできた。
湊も握り返す。
「お邪魔します…」
アンナの家には3回来たことがあったが、アンナのお母さんが家にいる時だったので、キスくらいしかしていなかった。
「部屋、行ってて」
「うん」
(あれ?俺、ゴム持ってない…)
とりあえずベットを背にして座った。
「湊、はい。お茶」
「ありがとう…。ね、俺、ゴム持ってないよ…」
「私、持ってる…」
そう言うと、湊の隣に、腰をおろして、湊の顔をジッと見た。
アンナはすごく整った顔をしている。
湊は、キスをした。
ゆっくり顔を離したあと、
「湊…」
「ん?」
湊はもう一度キスをしようとした。
「他に好きな子いるよね?」
「え?!」
思わず大きな声を出してしまった。
それがイエスの意味になってたことにも気がついた。
「…」
湊は、また座り直して、下をむいた。
「いいの、別れよ」
「ごめん…」
湊がアンナを見た瞬間、アンナは、湊にキスをした。
湊はびっくりした。
「別れるけど、したいの」
「え…」
「中学のうちに、すてておきたい。湊もでしょ?」
図星だった。
自分の気持ちに気がついていながら、今日はアンナとするつもりだった。
「ね?」
アンナは湊の首に手をまわしてキスをした。湊は、アンナが割り切っていると分かったので、抱きしめた。
お互い、うまくできたのかできなかったのかすら、よく分からずに終わった。
ゆっくり起き上がって、服を着る。
「大丈夫…?」
湊はアンナが心配で聞いた。
「大丈夫」
「…」
「湊、好きな子って…。同じ中学?」
アンナはいつもすごく鋭かった。
湊は嘘はつけないと思って正直に言った。「…。うん…。彼氏もち」
「そうなの?!」
「うん」
「そこに手出すんだ…。意外…」
「…手出せないで終わるよ」
「手出さないの?!」
アンナは驚いた。
「湊の事わかってたつもりだけど、まだ奥が深いね」
「…。アンナは…、分かってくれてた…」
「うん」
「俺が、ただのお調子者だって」
「うん」
「ごめん…」
「いいよ…。…もう帰って…」
「うん…」
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