好きって言いたい

湊とえりと春乃と孝司で、少し遠くにある、大きい公園に行った。

「うわー!滑り台、大きい!春乃行こ!!」

「うん!待ってー!」


「じゃ、この辺に敷物しいとこ」

湊は手際よく、敷物をしいて、荷物を乗せる。

「座ろ」

「うん。天気いいけど、ちょっと寒いね」「チビ達にはちょうどいいよ」

「そうだね」


「受験勉強してる?」

「してるよ。私、合格ぎりぎりっぽいし」「そうなの?」

「うん、去年から勉強頑張りだしたから…」

「そうなんだ」

「湊はずっと頭いいよね」

「うん。春乃の見本にならなきゃだからね」「アハハ。育ててるんだもんね」


「もし誰かに見られたら、俺がいつも春乃の世話してるのだけは言わないでね」

「うん」

「俺等が付き合ってるって思われるのはいいけど」

「良くない」

「そ?」

「後で、パブロの耳にでも入ったらやばいもん」

「どうやって入ってくんだよ」

「わかんないけど、変にいじけられたら困る」

「ふーん」

(この間から、パブロ君の話、増えてきたな…)

「じゃ、今日、誰かに見られたらなんて言うのさ」

「友達って」

「日曜日に、2人で敷物しいて喋ってる友達なんている?」

「…いるでしょ、ここに」

「俺等はそう思ってるけど、周りから見たら…」

えりは、怒った顔をしている。

「周りから見たら、付き合ってるように見えるよ」

湊は気にぜずに、言い切った。

「じゃ、帰る」

「孝司達は?」

「…連れて帰る」

「無理だよ。あんな楽しそうなのに」

「…今日、何?嫌なことばっかり言って…」

「…嫌な事、言いたいんだよ…」

「なんで?」

えりはイラつきが、声に出た。

「…」

湊はえりをじっと見た。

(好きだ、付き合いたい、彼氏となんて、別れればいい…)

湊は、全部を吐き出したかった。


「ごめん」

湊は謝った。

「…」

「ごめん…」

「…もう、いいよ…」

えりは逆に心配になった。

「湊…、何かあった?」

「…、好きな子に…」

「湊、好きな人いるの?」

「うん…」

「だから土屋さんと別れたの?」

「うん…」

「好きな子が、どうしたの?」

「彼氏がいる…」

「そっか…」

「だから、好きって言えない…」

「…。言うのは別にいいんじゃないの?」「言えない…」

「…辛いね…」

「言いたいのに…」

「うん…」

沈黙が続く。


「…なんてね」

「なんてね?」

「嘘」

「嘘?」

「そ。せっかくだから、チビ達と遊んでくるわ」

そう言うと、湊は遊具の方に走って行った。


(嘘じゃないくせに…)

えりは湊の言っている事が嘘じゃないのはわ分かったが、好きな人が自分だとは全く気づいていなかった。

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