空っぽな自分

湊とえりは中3になった。

クラス替えもなかったので、今年も2人は一緒のクラスだ。

相変わらず学校ではあまり喋らなかったが、放課後は春乃と孝司を遊ばせる時に喋ったりしていた。


とある日の、谷川家のリビング。

「もうすぐ、幼稚園のお泊まり会だねー」

「うん…」

「何?春乃ちゃんいないと寂しいの?」

「いや。でも、何していいかわからないなあ」

「デートすれば?」

「何でだよ」

「何でだよって、何で?」

「…疲れんじゃん」

「そうなの?」

「…疲れないの?」

湊はびっくりした顔で、えりを見た。

「疲れないよ。楽しいよ」

「えりは、付き合い短いから…」

「そうだけど。でも一緒に暮らしてたし。それでも疲れはしなかったよ」

「…いいですね。ラブラブで」

えりは顔が赤くなる。

「…何ソレ」

「え?」

「本当にさ、帰って来るの?」

「来るよ…」

「ごめん…」

湊は、えりが泣きそうな顔をしたので、すぐに謝った。

「ごめん」

「…」

「…ちょっと、春乃達の様子見てくる…」


湊は孝司の部屋に行った。

ガチャ。

「お兄ちゃん!もう、帰るの…?」

「いや、まだ大丈夫だよ」

「よかったぁ~」


「ね、孝司…」

「何?」

「パブロ君て、いつ帰ってくるの?」

「俺が7歳になったらだって」

「へぇ。お兄さんとかお姉さんが言ってたの?」

「うん」

「電話とかできないのになんで信じてるの?」

「パブロ兄ちゃんは、本当の兄ちゃんじゃないけど、本当の兄ちゃんになって欲しいから」

(兄ちゃんが多いな…)

「それだけ?」

「うん」

「帰って来なかったら?」

「泣く」

「…」


湊には理解できなかった。

ただ、パブロがどれだけ家族から信用されているのか、必要とされているのかがわかった。

周りにいい顔ばかりしている自分が空っぽのような気がした。

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