第5話 りゅうのカミさま④

 地下室は、適当な村人に詰問したら、すぐに分かった。

 クルミの盗賊スキル様のおかげだ。


「我々はカーイ国の使者である」

「拉致監禁の調査をしにきた」

「捜査に協力すれば、犯行は村長が主導になって行われたことにする」


 などと適当なことを言ったら、村人はあっけなく自白し、地下室の場所まで案内してくれるこのになった。

 村長は人望がないらしい。

 というか、村人たちからしたら罪の意識は全て誰かに押し付けたいのだろう。


 地下室への入り口は、硬そうな鉄扉で塞がれていた。


 バァンッ!

 

 俺は地下室の入り口である鉄扉を蹴り飛ばす。

 そこには、見張りの男が3名いた。

 見たところ、彼らは武装と呼べるような装備はない。床に安刀が転がっているが、警戒をしていないのが丸わかりだ。


「だ、誰だ!?」


「女性たちを解放してください」


「な、ウォォォ!」


 そう言って、男の1人が戸惑い半分に刀を拾って飛びかかってきたので、俺はそれをかわして、足を蹴って転ばす。クルミは転びまわる彼の頭を蹴っ飛ばして失神させた。


 それからは、話がトントン拍子に進んだ。

 カーイ国の使者だの、捜査に協力すれば罪は村長に、などと適当な事を言ったら、残りの見張りは降参した。


「か、カーイ国軍のひと!? や、やったっ! 助かった!」


 斥候の女性が声を上げて喜んだ。

 隣りの聖職者の女の子は、虚ろな顔で下を向いている。

 相当弱っていそうだ。

 

「そちらの人は、大丈夫ですか?」


 セリーナがすぐさま動いて、彼女へ回復の奇跡を施す。

 すると、聖職者の女の子はストン、と倒れるように眠り始めた。


「その子、ずっと何も食べてないの! 

 草か水ばかりで……ただの回復魔法じゃ回復しないと思う!

 ご飯を食べさせないと!」


 斥候の女性が訴えた。


「ろくな食物も与えられず監禁されてたんですね。分かりました。すぐに村人に言ってなにか用意させます」


「それは駄目です!」


「? というと?」


「この村、食料危機でして……」


「はぁ」


「肉とかそういうの、全然ないんです。あるとしたら……」


 そこまで言われて、俺は思い出した。

 聖職者ならば、当然、そうなる。


「クルミとセリーナは女性の保護を。俺とウィンは村の外に出てイノシシを狩りに行くぞ」


 ………

 ……

 …


 それから程なくして。


「おいしぃぃぃ! この世にこんなウメェもんがあったなんてなぁ! オラかんどぉだぁ!」


 斥候の女性が農奴みたいな嬌声を上げた。

 巨大イノシシの丸焼きの切れ端を片手に、よくもまぁ、ここまで頬を落としそうな反応ができるものだ。


「おかわりもありますよぉ(*´ω`*)

 遠慮せずどぉぞぉ〜」

 

 クルミは斥候女性に微笑みながら答える。

 盗賊らしい斥候女性に縁でも感じたのか、世話を焼きしているみたいだ。


「もう2ヶ月もまともなお肉にありつけねぇでよぉ、おらこんなおいじぃ飯にありつけたのひざびざだぁ……」


 女性の口調じゃねぇな。

 涙とよだれが汚い。

 

「2ヶ月も地下に……大変でしたね」


「オラもうヅラグでヨォ゙……。 

 人肉はゔまぐねぇじ……」


「食ったんっすね……」


「ぞら、最初は抵抗あっだげどよォ゙……。元パーティメンバーでパワハラハゲがいでよォ゙……」


「はい」


「そいづは旨がっただァ゛」


「旨かったんだ……」


 ハゲのくせにパワハラするの肉なんて不味そうだが。


 まぁ、こっちの盗賊はとりあえずは良いとして……。


「大丈夫? 安心して、これは猪の肉よ。マリィトワさまも、王宮にいた頃はイノシシや狐の狩りにでかけたものよ、私達はマリィトワさまと同じ、狩猟によって得た肉を食べる。素晴らしいことよ。だから、安心して食べていいわ」


「……はい」


 セリーナが必死に介護しているが、聖職女の子は、なかなか目の光が回復しそうにない。

 そら、そうか。

 愛と慈愛とマリィトワ神の教えに従い、冒険者になったと思えば依頼者に裏切られ、パーティの男性は殺されて食肉処理され、女性は地下に監禁だ。

 まともな感性では、立ち直れまい。


「ゔ゛め゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛に゛ぐゔめ゛ぇ゛ぇ゛ぇ」


 アレを除いて。


「さて、前置きはここまででいいでしょう? 

 それより、本題に移るべきじゃないかしら?」


 友だちができなかったらしいウィンは、生真面目に場を仕切ってみせた。


「2人は龍神様、についてどこまで知ってるの?」


「あぁ、わだじは……。


 私が知る限りだと、ムンドォー湖をかつて縄張りにしていた神サマ、くらいしか知りません。

 村一番の知識人によれば、暴風と水を司り、契約を破ればファイフ川を氾濫させ、カーイ国まで広がる水害を引き起こすらしいです。他の村人たちもそれを信じているみたいですね」


 流石、盗賊。

 仕事となるとキャラが変わる。


「洪水の神話ね。その伝承自体は多いわ。ノアとウトナピシュティム、枚挙に暇がないけれど、龍、洪水、生贄、これらに共通する神話といえば……」


「八岐の大蛇」


「そ、八岐の大蛇。その龍神様とやらも、八岐の大蛇をベースにした神話の模造品と見て間違いないでしょうね。なんだ、勇者も分かってんじゃない」


「八岐の大蛇って化け物が生贄を求めて、若い女が泣いていたのを見て、スサノヲが退治した、ってくらいしか知らないぞ」


「そうね。

 じゃあ、八岐の大蛇はなぜ生贄を人々に求めるのでしょうかね?」


「? そりゃあ、災害や病気を抑えるためじゃないのか?」


「それは人が神に生贄をする理由でしょう? 

 逆に、神が人に生贄を求める理由よ?」


「んー。

 主人がメイドにお菓子を用意させる、みたいな理由じゃないのか?

 嗜好品というか、娯楽がほしいというか」


「ちょっと違うわね。

 神々が人に生贄を求める理由は大きく2つ。


 ・神秘の高い人間を喰らい、自身の神秘を高めるため。


 ・人に強大な影響力を与え、人界への結びつきを強くするため」


「1個目は分かるけど、2つ目はどういうことだ?」


「ようは、生贄というムンドォー村へ強い印象を与えることで、生まれたばかりで曖昧な神の概念は悪神という概念へ強く固定されるのよ。

 たぶん、一年がそこら前に生まれたらしいけど、まだ龍神様とやらは存在が曖昧なの。

 だから、生贄を求め、逆らえば災害を引き起こす悪神というイメージを固定するの。それによって、現世に実現できる」


「……うーん。その辺りの概念的な話はさっぱりだな」


「ま、思春期のガキが悪ぶって窓ガラス割ってまわって、街のみんなから『アイツはワルだ。近づくとアブねぇぞ』と言われるようになったのを、武勇伝のように語るみたいな話ね」


「なるほど」


「我ながら良い例えかも。

 ただ周りの生徒と一緒に学校に行くだけのチューボーなら、周りの人間からしたら当たり障りのない、存在するけど認知のないモブ生徒Aだけど、窓ガラスを割って回ったら、キケンなやつってイメージが固定される。そこで、モブAはキケンなやつって存在が確立する」


 要はイキったガキか。


「本題は、1つ目のほうね。

 龍神様とやらは……」


「エンドライバーの皆様……少しよろしいでしょうか……」


 ウィンの考察の途中、我らエンドライバーの食卓に、お客が来たようだ。

 俺が振り返ると、例の村長が気まずそうな顔をしてこちらを見ている。


「何でしょうか」


「その、恥を承知でお願いいたします!

 皆様の食事を、少しでいいので分けていただけませんか!?」


「……」


「……」


「……」


「……」


 ホント恥知らずだなぁ。


「ご存知の通り、我らの村は食料不足に陥っております!

 村のみんなは今もお腹をすかせ、少ない食料で何とか食い扶持を繋いでいるのです……村長として、それは自分の空腹より耐え難い……。

 どうかお願いします!

 我らにそこの猪の肉をいくつか分けて頂けませんか!?」


「こんなデカいイノシシがその辺にいるんだし、狩猟すれば良いんじゃないの?」


「勇者。さらっと狩って来たけど、それ魔猪の亜種だからね。

 龍神様なんてのがいなければ、ここら一体を統べる魔物でもおかしくないわ」


「だぁからウメェんだなァ」


 斥候女は頬を落としながら感想を言う。


「お父様! 私からもお願いさせてください!」


 突然出てきたのは、若い女だった。

 村長の娘らしい。

 正直、おいおい、という感想しか無いが、横槍する気はない。


「冒険者の皆様、私からもお願いです!

 無辜の村人たちは、今も苦しんでおります! どうか、どうかお願いです!

 私達に食料をいくらか分けてくださいませんか!?」


 手入れされた茶色のお下げ髪。

 それなりに身なりの整った服装。


「きっと、蝶よ花よと育てられてきたんでしょうねぇ(*´ω`*)」


「せやなぁ……。オラみたいな捨て駒同然の盗賊上がりとはきっと生きてきた世界が違うべぇ」


 盗賊女2人は呑気にそれを眺めている。


「村長にソーニャちゃん! 2人だけにお願いさせるなんて、カッコつけた真似させないぜ!」


「そうよ! 村の問題は私たちの問題よ!」


「老い先短いワシからも頼む! 冒険者たちよ、村を救ってくれ!」


 ぞろぞろと、まるで仕込んでいたみたいに、村人たちが顔を出す。

 なんて美しい結束なんだろうかと、俺は感動した。


「ふざけないでください!!」


 村人たちたちの感動的でドラマティックな演出をかき消したのは、聖職女の子の怒声だった。


「あなた達は、今まで何をしてきたのか分かっているですか!?

 二枚舌で我々冒険者を騙し、男性は殺害して食肉に、女性は龍神なんていう悪神の供物にしたのですよ!


 あなた達に、救いを受けることはありません!

 その罪とともに、地獄へ落ちなさい!」


「正論れすねぇ……」


「正論すぎるべ……」


 盗賊姉妹は縁側で茶を飲む老夫婦のようにそれを眺める。

 呑気なやつらだなぁ。


「聖職者の方……。我々の事情も鑑みてください。

 我々は、ああするしかなかったのです。

 でなければ、全員が龍神様に殺され、カーイの国にも及ぶ大災害が……」


「少しでも悪いと思う罪悪感があるのであれば、少なくともこの場に登場しないのが筋というもの!

 ここで乞食をするその図太さは、あなた達がまるで罪の意識がないも同然!

 そんなあなた達に、話すことなんてありません!

 即刻、立ち去ってください!」


「正論……(;´∀`)」


「セイロンティだべ……」


「ぐうの音もないわね」


「怒る元気が出たようで何よりだわ」


「ほんそれ」


 もはや我々、冒険者たちの意見は一致している状況だ。


「聖職者の方……私からもお願いさせてください……」


 そう言って出てきたのは、修道服を身にまとう白髪の老人だった。 

 おそらく、マリィトワ神を信仰する神父だろう。


「たしかに我々は罪を犯しました。

 それは拭うことのできぬ、ヒトの業がおりなした罪でありましょう。

 

 しかし、ここにいるのは全て、災厄たる環境が招いたものでございます。本来の我々は、力がなく、抗うことができず川の流れに身を任せる木の葉のような存在で……」


「神父と校長は決まって話が長いの、何でなんだろーな」


「大した能力も苦労もした事ないのに、中途半端に教養があるからじゃないかしら?」


 手に余る程度の教養というのも、考えものだな。


「しかし、我らが最高神・マリィトワ神は、我らの罪を許すはずです!

 マリィトワ神の生涯を描いた聖典、『姫君の恩寵』によれば、マリィトワ神は例え謂れのない罪で民衆に火炙りにされようと、一度はそれを許しました。

 神として昇華されたあとも、人の猜疑心で。過って討ち滅ぼされようと、今も彼女はヒトの子を許し、今も天界で我々に微笑んでくださるのです!

 聖職の君よ、どうか、マリィトワ神を信仰する我々を、お許しください!」


 あ、マズい。


「……ッ!

 よくも、マリィトワ神を盾に、そのような!」


 聖職女の子は、唇を強く噛み締め、言葉を吐き捨てた。

 言いたいことはよく分かる。


「これはヤバいなァ。

 聖職者である以上いじょ、マリィトワ様の慈愛を引き合いに出されると、許すしかなくなるんだべ。

 上手ぐ考えた反論だァ」


「いや、そうじゃなくてね」


 マリィさんを引き合いに出すと、厄介なことになることで好評な奴がね、ここにね、いるんですよ。


「マリィトワさま……? 

 村の方々、あなた方は、マリィトワ神を信仰する者たちですか?」


 あ、セリーナが食いついちゃった。

 しーらね。


「え、ええ!

 それはもう、村人たちみんなは、マリィトワ神を信仰しております!」


「村を代表する信徒の私が保証します!」


 村長と神父のコンビが好機と見て、積極的に前に出てきた。

 ハハッ。


「なるほど、話を聞く限り、この場で最も敬虔なモノはお二人だと推察いたしますわ」


「ハイ! ハイ! それはもう!」


「私は片時もマリィトワ神を忘れたことはありませぬ!」


「では、マリィトワさまの事を常に思っており、彼女を『理解』するにふさわしいと?

 そのステージに、自分たちは立っていると?」


「ふふっ、侮らないでくださいレディ」


「我々ほどのモノたちは、そんじょそこらの、ニワカなマリィトワ信徒と間違えないでほしい」


 言い過ぎ言い過ぎ。

 やめとけって。


「では、苦痛を伴う慈愛というものを、あなた方は受け入れる事ができるはず」


「は……?」


 村長の首から上が消えた。

 否、セリーナの聖魔法の光が、村長の首から上を焼き消したのである。


「き、ギャァァァッッッ!」


 村長の娘(名前忘れた)が、顔なし胴体になった父親が倒れるのを見て、悲鳴を上げる。


「な、何を!?」


「マリィトワ神は、愚かな我々ヒトの罪をすべて許しました。

 反乱によって謂れのない誹謗中傷の末に愛する家族とともに虐殺されようと。

 神となったあとも、神の心を疑うヒトの猜疑心によって何度と神殺しに合おうと。

 すべてを許します」


「な、ならば……!」


「しかし、こうも考えられませんか?

 マリィトワ神を本当に信仰するのであれば、

 本当に彼女を理解するためには…… 


 彼女のように、真に苦痛を、何度も何度も、『│最悪な日│《Killing Joke》』を経験しないことには、ありえないと」


 その言葉とともに、神父の四肢がありえない方向に曲がり、崩れ落ちた。

 怖ぁ……。


「だ、だからといって、こ、殺すなんて……! 酷い……!」


「死んでませんよ?」


「へ?」


 村人たちはそこで気づいた。

 先程まで、首から上がなくなっていた村長が、まるで傷ひとつないかのように、蘇生されていたのである。

 四肢が抉られた神父も、いつしかきちんと、元通りになっていた。


「お、お父様……?」


「わ、私は死んだのでは……」


「私の腕も、治っている……」


「ここ一帯に、聖域を張らせていただきました。

 この聖域ではあらゆる傷が瞬時に癒えます」


「な、なんと高度な聖魔法……!」


「ただし、その苦痛は癒えることなく、そのものの罪として精神を蝕みます」


「……ヒッ!」


 でたー。

 セリーナさんお得意の、肉体は安全だけど精神を攻撃するジェノサイド魔法。

 これ、何度死んでも、『殺された恐怖』だけはそのままに、生き返るんだよな。

 一方的な暴力が約束されれば、これほどに恐ろしい魔法はない。


「マリィトワ神を信仰する皆様方。

 今宵、皆様の罪はマリィトワ神と同じ経験をすることで精算されます。


 さて、宣教を始めますわ」


「ふざけんナ!」

「こんなところにいられるか!」

「俺は帰るぞ!」

「死ぬのは村長と神父のバカだけでいい!」

「そもそも俺は悪くない、この村の環境が!」


 うん、みんな正直でいいね。

 多分出れないけど。


「や、見えない壁が!」


「せっかく、敬虔な信徒の方々がいらっしゃるのですもの。

 お残しするつもりはありませんワ……。


 ひとり残らず。

 誰一人。

 マリィトワさまを、思わせていただきますわ」


「ヒィギィィィ!」

「グギァァァ!」

「タス、グァァァォ!」


 阿鼻叫喚。

 死屍累々。


 血が飛び、肉片が飛び、そこにあるのは飛び散った腕か足か、それとも圧縮されて捻り曲げられた胴体か。

 そんな地獄が、そこにあった。

 確実にそこにあるのは、セレーナの黒い影。


 少なくとも、清廉に生きてきただろう聖職女の子がみていて気分が良いものではなかろう。


「きみ、食事が楽しめなくなるから離れよっか。 こっちに来て」


「これが、マリィトワ様への理解……?」


 あ、この人変なスイッチ入った。

 たまにセレーナがしている目だ。


「聖職の娘……名前は何というの?」


 背後で「ギャァァァ」とか「助けてくれェェェ」などと悲鳴が聞こえる中、セレーナは聖職女の子に声をかける。


「イヴァ……です」


「そう、イヴァ。

 マリィトワさまは、我々ヒトを、何度と許してきました」


「え、ええ……。マリィトワ様は清らかで、人の可能性と罪を信じたお方です」


「そう。しかし、我々ヒトは、それに甘んじて良いのでしょうか……」


「……」


「崇め、奉り、敬愛する。

 それは、素晴らしいことです。

 

 しかし、たとえ腹を痛めて自分を産み、育てた母を親を尊敬したところで、もしそれが親の脛をかじる駄目息子ニートだとしたらどうです?

 本当に、その苦労を知っていると言えますか?」


「そ、それは……」


「だァッ、ダズげでグレぇ! も、もうジニダクナァイ!」


 セレーナの後ろで、苦悶の顔をした村長が見えない力によって宙を舞っている。


「真の理解とは、憧れ、敬い、それらを超越したものにあると思います」


「私は、真にマリィトワ様を理解していないのですね……」


「お゛れ゛ば! レキジあるムンドォーの長だぞッ! こんな゛ゴドガゥ!」


 宙を舞う村長が必死に暴れている。


「貴女は命削る飢餓の苦痛の中でも、清廉に耐えて見せました。

 素晴らしい精神性です」


「そんな、私なんて……」


「マリィトワさまも、きっと誇りに思うでしょう」


「マリィトワ様が……?」


「ええ、きっと」


「はな゛ぜ! はな゛ぜ!」


 村長、諦めたほうが楽にられるぞ。


「若く、未熟。しかして、強い心を持つマリィトワさまの娘よ。

 貴女は素晴らしき信徒です。

 大いなる苦痛があったでしょう。 

 涙すら枯れ果て、ヒトを疑ったことでしょう。


 しかし、強く生きるのです」


「゛あ゛あ゛あ゛!゛こ゛のひ゛か゛り゛は゛!

 ゛こ゛の゛ひ゛か゛り゛は゛も゛う゛い゛や゛た゛!」


 聖魔法の光が、村長の体内で光り輝き、彼の体は眩く光照らす。


「お姉さま……」


 キュン、とイヴァはトキメいた。

 それと同時に、村長の体が爆散して、夜空に輝く花火のように、肉片が爆散した。









 

 

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