第6話 りゅうのカミさま⑤

「……あそこの死屍累々地獄絵図はいつまで続くんだべ……?」


「仮にあいつが3秒に1人の早さで殺すとして、約30名いる村人を100回殺すと計算してくれ」


「……513千万100人秒?」


「違いますよぉ〜。

 沈黙。それが正しい答えなんれすぅ……」


「それ無回答だろ」


 盗賊姉妹のバカは放っておいて。


「あの、エヴァちゃんって娘はどこよ?」


「イヴァでしょ。

 アレならセレーナと一緒に虐殺に加わってるわよ。

 本人は洗礼を受けるとか言ってたけど」


「マリィトワ教の未来は明るいな」


 皮肉をそこそこに、本題へ入りましょう。


「で、ヤマタノモドキの話だが」


「なにその名称。まぁ良いけど、ヤマタノモドキがヤマタノオロチをベースにした神話なら、打倒する方法もそれに則るのがベターね。

 オリジナルの神秘を借りている分に、弱点や法則も同じように負ってしまうものだし」


「法則の踏襲ってやつ?」


「そ。たぶん龍神様ってやつは本来のヤマタノオロチの生まれ変わりじゃない。

 その伝説を借りて、仮初の神秘を得たハイエナか、もしくは伝説が写した幻。

 それならそれが滅んだ道筋を辿るのがベターよ」


「ヤマタノオロチ討伐といえば……」


 高天原を追放されたスサノオが、クシナダヒメがうんたらでヤマタノオロチを討伐することになって、

 確か、酒に酔わせて闇討ちを仕掛けたって感じだったか?

 

「そ、何度も醸造を繰り返した八塩折酒を飲ませて酔い潰したの」


「じゃあその八塩折酒っての用意すればいいんだな」


「れも、そんな上等なお酒はこの村にはないラスねぇ」


「だべだべ。

 ろくな酒も見当たらねぇべ。あったらオラたちで平らげてらァ」


 ろくでもないのはお前らだろ。


「お酒に関して言えば、私とセリーナに任せればいいわ。

 それと、勇者。今回の件、私達に任せてもらえない?」


「任せるって、どういうこと?」


「たぶん龍神様だとかいうやつ、アンタなら剣を振っただけで真っ二つになってるわ」


「はぁ」


「でも、それだとわたしたちの経験も積めないじゃない」


「適材適所だろ。

 そもそも、一部の戦闘以外は俺が担当するってのは今までもそうだったし、上手くやってきたと思うんだが」


「だってつまんないじゃない。私も戦闘に加わりたいわ」


「だってお前魔法撃てないじゃん。戦闘に加われるわけ無いじゃん」


 ウィンは懐から鉄パイプを取り出した。


「いや、うん。考えてみるといい考えかとしれない。全体の経験値を培うこと、何より普段とは違うスタイルを試すこと、素晴らしいアイディアかもしれないな!」


 ウィンは鉄パイプをしまう。

 このガキ、愉快な脅しをしやがって。


「で、俺抜きでウィンとセリーナ、バカで戦うとして、どういうプランなんだ?

 さっきの酒の話を考えると、神秘の弱体化を狙うと思うが」


「いや、勇者。あんたにも協力してもらうわよ」


「は?

 女子供以外に剣を振ることしかできないぞ?」


「スサノヲのヤマタノオロチ討伐、スサノオが何をしたのか知ってる?」


「……さぁ?」


「女装よ」


 バカ(クルミ)とセリーナ(血まみれで何故か帰ってきた)が、それを聞いて、気色の悪い笑みをしていた。

 



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