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子どものころ 神社の秋祭りに
家族そろって歩いたのを覚えている
真昼のあかるい場面
神社の境内に 軍服を着た片輪の兵士が影のように土下座して
薄汚れた小さい皿か あるいは白い布を巻いた箱を傍に
まるで乞食のように みすぼらしく祈っている
兵士は生き恥をさらしているのか
にぎわう通行人に 決して顔は見せない
記憶の片隅にいつも彼はいた
あれはエーイチだったのか
平和な一家団欒の外壁に
安居酒屋の暗い隅に
冬の雑踏の四つ辻に
人気ないポプラの木立に
気の滅入るような深淵に
かつてこの世に存在したことがなかったかのように消滅してしまう忘却の穴に
エーイチは
ひっそりとうずくまっている
蒼白い火柱のように揺れている
自分の国境を忘れて
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