第23話 曲げられた過去とこの反乱の理由は

 

情報量が多いので、すこし短めです。


――――――――――――――――――――



 「なあ、エリシア=バッシリーサ=


 その男は、その名を口にした。


 

 「何度も言うけど…………7年前に、民による反乱と暴動で死んだ公女様が生きていて、しかもわたくしの訳がないでしょう。

 私はリステアード侯爵家の人間で、きちんと両親も兄姉もいるわ。

 7年前どころか、そのずっと前から、私はリステアード侯爵家で暮らしてたわよ。」




 大砲がさらに近くで鳴り響き…………このベルティア城のどこかが、ガラガラとくずれる音が鈍くこだまする…………。



 一瞬、窓の外に目線をくれただけで、男はさほど気にも留めていないようだった。

 それどころか、近くの使用人に何かをもってくるよう命じていた。



 しばらくの沈黙の後。

 使用人が何やらをエリシアと男の前に持ってきた。

 

 かけられていた布がはらりと落とされたとき、そこに写っていた少女に見覚えがあった。



 

 公女の証の衣装を身にまとい、このベルティア城を背景にたたずむ少女。――の絵。

 大広間にあった絵にも、うつっていた少女。


 12、3歳ぐらいだろうか。


 そういえば、幼いころのエリシアと瓜二つである。

 

 


 「これを見ても、ちがうと言い切れるか?」


 


(…………たしかに私は12歳より前の記憶はあやふや。しかも、家族の誰とも私は似ていない。それに……この絵は……あの夢の少女にも…………似ている?)


 自分とは本当は誰なのか――。

 今までの自分に、だんだん自信がなくなってきたエリシア。


 

 そこに追い打ちをかけるように男が告げる。



 「それと…………相変わらず、物分かりの悪いお前にさらなる真実を教えてあげよう。

 ――ルーベルティアの反乱は、そこを治めていた公爵一族が、恨みを持った民に殺された事件と反乱――と言われているがそれは全くの嘘だ。」



 

(………………え?)

 


 

 「……公女を含めた……公爵一族はな、反乱に便乗したこの国のによって殺されたんだよ。なぜかお前は生きてたがな。」


 

「………………」

 


 「だから我々は、我々の信頼を裏切り、あまつのさえ公爵一族を殺し、公女をも殺そうとした王族を許さない。

 こたびの反乱は、あの身勝手な王族への復讐の一歩に過ぎない!

 特に首謀者…………。」




 突然、エリシアの中で、なにかこれ以上聞いてはいけないという警告音が鳴り響く。

 

 耳を塞ごうとしたが遅かった。


 

 

 「首謀者は、7年前まだ19のガキだったテオドール=リジウム=アシュタリス。

 この国の王太子で、お前の元婚約者だ。」


 

 


(どういうこと?この男の言う事が、仮に正しいとするならば……。

 ルーベルティアの公女は生きていて、それがわたしで……。

 テオドール殿下は私を殺そうとしていた……?)








 


 


 


 





 

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