第24話 リステアード家の家族


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 少し前にさかのぼる。



「ライウス、アイリス……貴方たちは一体何をしてたの…………?

 あれほど、あの子を――と言ったのに……!」


 リステアード家では家族会議が行われていた。


「お母様……ごめんなさい。私の監督ミスのせいだわ。」


「いや、僕もだ。シアを舞踏会で外から(錬金術の応用で)見ていたが、何者かの妨害で視界からエリシアが消えたんだ…………その後はあっという間だった。」



 落ち込むライウスとアイリス……。

 ヒステリックになっている侯爵夫人。


 リステアード家の空気はさんざんなものだった。


 長年働いている執事コーシーが気を利かせて、リラックスできるアロマを焚いていたが、彼らには何も意味をなしていなかった。

 


「今更悔やんだって遅かろう…………。だが、留守をライウス、お前に任せたのは荷が重かったのかもしれん。……ん。」


 「……ごめんなさい。あなたたちを責めたって仕方ないわよね。その場にいなかった私と旦那様があまり言えたことではなかったわ。」



「「……………………。」」



「それより、エリシア救出の手立てを考えるぞ。

 先発隊がかなり本陣を崩してるとはいえ、敵が遠征している中都市ギャスケットから、敵兵が帰ってきては先発隊が持たないだろう。」


 侯爵は地図を広げる。


 王都、そしてその横のギャスケット、そしてルーベルティア。


 リステアード城は、『ギャスケットとルーベルティアの北に位置する都市シェルピンスキー』にある。


 つまりは、ルーベルティアを攻めるにはちょうど良い位置にある。



「本当にあなた行くのですか?」


 「ああ、もちろん私は行くぞ。総大将とはいかぬが、これでも軍人だ。娘のためにそれを活かさなくていつ活かすのだ。」



 夫人は不安げにおろおろとライウスと侯爵を交互にみる。



 「…………母上、僕も行きますよ。」


 「心配だわ…………わたくしも……」


 「シーリン、焦ったって仕方がない、アイリスとここでできることをしろ。」



 「……そうね。(シアの身に、何もなければいいのだけど……。もし、…………。)」



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 「あなた……」


 「シーリン、こんな夜更けにどうした?

 すまないが、明日はもう出るから、遅くまでは起きていれないのだが。」


 それでもと言う夫人を部屋に入れる。今日は出陣前だからと部屋を別にしていたのだ。


 「今回の反乱、あの男がいると……そう聞きましたわ。

 あ、あなた! もし、シアが知ってしまったら…………!」


 「…………万が一にもない……とは言い切れない。だが、あの子も、もう大人だ。

 そろそろ知っても、」


 「良くないわっ!」


 寝室の窓が、一瞬ピリッと振動して鳴る。


 「落ち着け、シーリン。

 シアにだって知る権利はある。それに、いつかはその現実を見る日が、遅かれ早かれくるんだ。」



 バンッと突然寝室の扉が勢いよく開かれる。


 「……あの事とは、なんですの?!」

 

 

 「アイリス、聞き耳とは……さすがにお前でもやって良いことと悪いことがあるぞ。」


 「あ、アイリス?! 二十にもなって、何をしているの!」


 ネグリジェに素足で立つアイリスは、そんなことより、両親の会話のことで、頭がいっぱいであった。


 「…………お父様、お母様、昔から思っていましたが、やはり何かを隠していますよね。特にシアについて。なにか隠すようなことでもありますの?

 わたくしたちに知られては不味いことでもありますの?」


 「……もう遅い。寝ろ、アイリス。いずれわかる。今はその時でない。」


 威厳ある父侯爵の言葉に何も言えなくなった。



 しばらくの間、侯爵が不服そうなアイリスを宥め、その後夫人がアイリスを部屋につれて帰ろうとする。


 「お父様、私、シアを助けたいの、だって、だって、のように思っているんだから!」



 「………………!!!」


 「ねえ、わたくしにも何かできることはあるのかしら?」



 先ほどまでと違って、侯爵は穏やかに笑う。


 「もちろんあるとも。だって、家族だからな。家族は一緒でなければ。」


 

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