第3話 クラスのみんなが溶けた

 待ち焦がれていた給食当番が回ってきた。計画実行の日である。

 ぼくはすかさず味噌汁の配膳を志願した。

「手をあわせましょう。いただきます」

「いただきます」

 日直の合唱のあと、教室中にざわめきと食器を使う音が満ちた。ぼくは何食わぬ顔でコッペパンをかじった。緊張のあまり、味などまったくしなかった。

 そして、いつものざわめきが阿鼻叫喚に変わるまで、いくらもかからなかった。

「きゃあああっ!! エミちゃん!!」

「たかしくんがぁっ」

 すぐに教室のいたるところから悲鳴が上がった。それに混じって、にぎゃおう、にぎゃあああおうと何匹ものトラ丸の鳴き声が響き渡った。

(――はじまった)

 ぼくはコッペパンのかたまりをごくりと飲み下した。

「みんな、給食を食べちゃだめよ! 箸を置いて!」

 担任の小野先生が叫んだ。

 教室中がパニック状態の中、ぼくはこっそりケンちゃんに目を向けた。ケンちゃんは牛乳パックを持ったままぽかんとしていた。

(お味噌汁、まだ飲んでいなかったんだ)

 ぼくは舌打ちした。

 給食に混ぜるのはもう無理だ。ほかの手を考えなきゃならない。

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