最終章前半 

第1話 多賀谷亮レイドボス 亮視点

『世界各地で冒険者達が連携を取り、こののイレギュラーの対処に取り掛かっています。民間人の皆様は即刻避難して下さい、逃げて下さい、死にますッ!!!』


 アナウンサーは酷く取り乱していた。

 口調も、モラルも、オブラートに包む工夫すらも忘れていた。

 彼女も冒険者の端くれであった、だからわかってしまう。

 目の前の存在は、決して我々が太刀打ちできる存在ではない事を。

 そうして戦慄するのだ、この存在が、世界各地で同時多発的に顕現したと言う事実に。


『我が名はルシファー。10分後の未来を予言してやろう。地球は滅ぶ』


 唐突な終焉の理由は、3日前に遡る……




「起きたかい? 多賀谷君」

「この声、支部長……てことは廻か?」

「ふむ、全部聞いてる様で助かる。あまり時間がないから今の状況を簡潔に話そう」


 路地裏で倒れていたはずの俺が今こうしてベットに横たわっているのは、間違いなく誰かが運んだのだろう。

 誰にも言ってないあの位置を正確に拾えると言うことは、つまりこれも廻達による計画通りという事か。


「最高神はこれから、地上に天使を……つまりモンスターを直接送り込んでくる。中々に厄介な展開だが我々はこれを利用する事にした。多賀谷君、君は全人類のスキルを手っ取り早く全吸収する為にはどうすれば良いと思う?」

「全員の攻撃を一斉に喰らう……まさか!?」

「君をレイドボスとして全世界に放つ、この2人の力を使ってね」


 そうして出てきたのは、なんか体が透けてる仮面をつけた2人組……いや、これは人間では無い様な気がする。


「2人と言うか2神だね。まあ細かい事は気にしないでくれ」


 右の神が、結晶を作る。

 ぐちゃぐちゃで、とても綺麗とは言い難いその結晶は、しかしながら確かな力を感じた。

 そうして次に左の神が、その結晶の形を整える。

 整えられたその結晶は見慣れたもの、冒険者なら見間違う訳のないエクリアだった。


「創造の神と調律の神だ。能力は今見てもらった通り、彼らの力で分身を作り全世界に解き放つ。これで全世界同時レイドって訳だよ」

「待った、俺がモンスターと言うか、敵に見えないとその作戦は成立しないような気がする」

「それはルシファーを出せば問題ない、10分もあれば一斉攻撃を受けるのは可能だ」

「……よし、分かった。じゃあ作戦決行まで俺は何をしてれば良い?」

「剣の修行でもしててくれ、ルシファーの最大出力が出せるのは10分しかないんだ、それ以外の時間は君が戦わなきゃ行けない。君も強くなければ最高神に勝てない」

「分かった」


 こうして脳内ルシファー——スキルを使わなくても脳内で会話できる様になった——に、剣の修行を付けてもらいながら3日後、俺は人類の敵のフリをして降臨した。


『10分もあればお前ら等滅ぼせる』


 まあ10分しか無い訳だけど。

 

 


 

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