第13話 悪魔より、叛逆を

 思考を巡らす。

 自分はあの攻撃を本当に防げなかったのか?

 自分はあの攻撃から抜け出せなかったのか?

 そもそも、躱せたとしてその後勝てたのか?


 いくら考えても、明るい結論が出せない。

 何も、ポジティブな言葉が出てこない。 

 ただただ悔しいこの事象を、オレは知っている。


「嗚呼、そうか。オレは負けたのか」


 空を見上げる。

 なんてドス黒いのか……ドス黒い?


「——ようこそ地獄へ」

「悪魔王っ!?」

「奴が[禁]を使った。所謂最高傑作をね。だからこっちも、を使おう」

「そうだな、……オイオイ、完全に混乱してやがる。ルシファー、コイツに詳しく説明してやれ!」

「……なんで、なんで追い詰めて逃したのにそんな楽観的なんだ?」

「それはだからだ」


 悪魔王が指を鳴らすと同時に、巨大な魔法陣が展開される。


「奴は言った、1000年後に人間界への侵攻を開始すると。ならばして簡単な話、1000年後の人類を強化して対抗出来るようにすれば良い」

「どう言うことだ」

「人間と悪魔が契約する。これはとても有名な話だと思う。我々悪魔は全ての人類に対してそれを行う。そうしてと、を与える」

「それでは不十分だ、最高神には対抗出来ない」

「だからこそ、この魔法陣なのだよ」


 悪魔王は自らの人差し指を切り、オレにその血を垂らす。


「我々悪魔は人間と契約する、ただしこの我はデア、お前と契約する」

「オレと……?」

「この魔法陣はお前の魂を、1000年後の一人の人間に移す物だ。そして我が権能は事。ここまで言えば分かるか?」

「悪魔と契約した契約した人間に攻撃される事によって、間接的に悪魔の権能を奪い、全悪魔の権能をオレと言う一箇所に集める、てことか」

「なんなら、敵対した天使の力まで奪えるだろう」


 悪魔王の話す作戦は、完璧だった。

 そして準備され尽くされていた。

 

「どうしてここまで」

「我は一度、失敗したから。殺し損ねたから。[虚球]の奴も、剣神も、旧神ら全員が、奴を殺し損ねた。そんな奴等が集まって作戦を練った時、また殺し損ねるなどと言う結末はあり得ない、許してはいけない。だからだ」

 

 オレは悪魔王と同じく人差し指を切り、重なる。


「……確かに、オレもそんな結末は許せねぇな」


 契約ががキーだったか、魔法陣は激しい光を放ち起動する。


 それから先は、ただただ真っ白な空間を数えきれない程の時間漂った。

 

 

 1000年後、最高神はダンジョンと名を打ち、天使の前哨基地を建て、人間界への侵攻を始める。


 それに対抗する形として悪魔王達は自然な形で人間と契約し、ステータスとスキルを与え始め、ギルドと言う形で冒険者を纏めた。





 これが、現在の冒険者とダンジョンのだ。

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