プロローグ③ EP0 悪魔の始まり

 静かな森。 

 黒い翼の生えた巨大の化け物と、美しい白い翼の剣士。

 剣士は眼を閉じたまま静止し、化け物は爪を立て今にも襲おうとしていた。


「お前、天使だな?」

「……」

「無視だと? おい、この俺様を無視とは何事だ!!」

「……」

「おい、あんまり舐めたマネをしてると……」

「ん?」

 

 拳が当たる。

 それだけで、化け物は空気を入れすぎた風船の様に弾け飛ぶ。

 

「瞑想中にあまり話しかけないで欲しいのだが……、もう遅いか」

「君、その剣使わないの?」

「——っ、この気配、何者だ?」

「僕だよ僕、じゅーにーあ! ゼウスJr.!」

「主神か、何用だ? 承る」

「君、師を牢にぶち込んだ僕に恨みとか無いの〜?」

「その師に、主神へ忠誠を誓えと言われた」

「……ふーん、まあいいや。そんでさ、なんだけど」


 その口調は、ハナから断られると思っていない。

 まあ、断るつもりは無いし別にいいのだが。


「悪魔の王、循天・廻を討伐してくれ」

「承った」

「快諾だねぇ〜! 良かった良かった! それと、剣に関する事以外の記憶全部飛ばすね」

「承知した」

「事務的でつまんないなー、なんか抵抗してくれても良いんだよ? まあ最終的にはやってもらうけど」

「だから事務的になっているのだが?」

「そうそう、そう言うのだよ〜! ……それじゃ、頼んだよ」


 Jr.が俺の頭を手で触れる。

 

「——何故、剣を使わないのかと聞いたな」

「どうせ師との約束って奴でしょ?」

「その通りだ」

「つまんない人生だね、好きに生きなよ」

「面白さなど求めていない」


 それを最後の言葉にして、俺の意識は闇に落ちる。

 意識の無い天使を担ぐJr.、いや、Jr.の変装をしていたものは、顔をぐしゃりと握り変装を解く。



「君の師匠が言っていたよ、少しは息抜きをしろと。君にはこの神魔大戦の結末を決める力が、権利がある。好きに生きたまえ」


            運命神ノルンより

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