第11話 無限地獄③

「[渾身の一撃]」

「なんだ、又同じ手か? つまらん、それに遅い」

「チッ!」


 後ろに下がるも、それを読んでいたかの様に剣が襲いかかる。

 10本、いや、これは……何本だ?

 

「我の行動に無駄は無い。故に先の喋りも怠慢ではなく、時間稼ぎ。全ては認識外であるで剣を増やし続ける為」

「くっ……!!」

「奥義其の壱——剣の墓場」

「[中止]……ッ!!」


 認識できる限り全ての剣を消した。

 認識できる範囲は、だ。


「貴様も気づいてるか? ならば今すぐ見せてやろう」

「……!!」

「奥義其の弍——無爆極虚」


 次の瞬間、至る所に巨大な虚球が現れる。

 それは秒数で表す事が不可能な程一瞬の出来事で、対応はもはや不可能だった。


「[中……」


 意識が飛ぶと言った話ではなく、言うなれば、自分の存在が崩れる様な、自分が自分でなくなる、そんな根本的な違和感。


「[中止]ィ……ッ!!」


 虚球をなんとか消したが、ダメだ。

 俺が意識を飛ばし、対策を練っていた今この時までにかかった時間。

 六道は何をしていた!?


「っ!」


 俺が上を見ると、そこには無数の剣が漂っていた。


「奥義其の壱——剣の墓場」

「クソッ!! [中止]」

「奥義其の弍——無爆極虚」

「[中止]!!」

「奥義其の壱——剣の墓場」

「く、[中止]……!!」

「奥義其の弍——無爆極虚」

「あ? ぐ、[中止]……」

「奥義其の壱——剣の墓場」

「……[中止]」


 動けない。


「奥義其の弍——無爆極虚」


 何も考えられない。


「…………[中止]」


 何も、出来ない……。


「そろそろか?」


 嗚呼、終わってしまう。

 [転換〈紫〉]が切れてしまう。

 負けるのか、ここで。

 もう、終わりか……















 違う。



 まだ、試してないことがある。 

 やっていない事がある。

 それをせずして、何も終わらない。


「[原悪解放]」

「……まさか」


『この選択は取り消す事ができません』







  『?』


 





 覚悟? そんな物、最初っから決まってる。

 だから、使わせろ。


「[転換〈紫〉]を解放」


 体の中で、何かが組み変わっていく。

 そしてそれは、手に紋章を刻み収まる。


「これが俺の全力だ。[]」


 白よりも白い美しい翼と衣。

 神々しい光を放つ頭上の輪。

 十字の持ち手がが特徴的な、鞘に収まったままの剣。

 

 それらが全て、どす黒く染まる。


「クク、ククク、クハハハハハハ!!」


 黒い翼を靡かせるその姿は、まるで悪魔。


「悪魔、お前の言った通りだった。やはり神は、

「……貴様は、誰だ?」

「オレの名はルシファー。天界最強の剣士にして、堕天せし者……の悪魔」

「天界最強か、ならば地上最強である我が直々に潰してやろう。さっさとその剣を鞘から抜いた方が良いぞ、でないと、一瞬で終わってしまうからな」

「お前が地上最強だと? オレとの実力差も見分けられないお前が? ……どうやら、この器の育成を急がねばならないようだ。申し訳ないがこの様な児戯に付き合ってる暇はない」

「お前程度、児戯、か。……貴様、頭が高いぞ。奥義其の三——奈落・無限地獄」


 次の瞬間地面が消失し、下に巨大な虚球が出現する。

 それだけでは無い。

 剣は今までの倍以上浮かび、爆発もこれまで以上の数と威力と範囲を見せた。

 しかし、児戯。


「使い手が悪いとこうなるのか」

「何!?」

「こんな物、避けるまでも無い」


 ルシファーが軽く手で払うだけで、虚球は最初からなかった様に消失する。


「なんだと……?」

「こんな物は児戯以下だ」


 ルシファーは一気に距離を詰め、首をトンと叩く。

 それだけで、六道の意識は飛ぶ。


「貰うぞ」


 ルシファーは気絶した六道の腕を掴む。

 そしてそれを自分の腹に刺す。

 ステータスを吸収するためだろう。


 一分程して、その場を立ち去る。


「頭に焼き付けろ、世界の真実を」

 

 誰も見つける事がないであろう路地で目を閉じ、ルシファーの意識は闇に落ちた。

 

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