第4話 B級ダンジョン

 実力に見合わないダンジョンに挑戦して死亡する冒険者が多発し、ギルド側は難易度と冒険者ランクと言う物を制定した。

 冒険者ランクは任務達成率や撃退実績から算出され、難易度はダンジョンの入り口の色で判断される。

 どちらも六段階で下から、E、D、C、B、A、S。

 ダンジョン入り口の色は、Eは灰色、Dは青色、Cは緑色、Bは黄色、Aは赤色、Sは橙色となっている。


 冒険者ランクと難易度の関係性は、一つ下のランクならソロで攻略可能、同じランクならパーティーで攻略可能、一つ上のランクはしっかりとした構成のパーティーでも5:5、二つ以上上なら無謀としか言えない。

 今回堂導の出したダンジョンはBランク、俺は一番下のEランクの為いかに無謀か言うまでもないだろう。


 最近の研究で、中に居るモンスターまで分かるようになっている。

 この中に堕龍が居るのはまず間違いない。

 無謀でしか無いはずなのに、何故か俺は倒せると確信している。


「堕龍のステータスは、一体どのくらい凄いんだろうな?」


 それどころか、ワクワクしていた。


「Bランクダンジョン、お前のステータスを全て吸収してやる」


 俺は勢い良くダンジョンの入り口を潜る。

 事前に剣を構えて入ったが、それは無駄だった。

 後ろからドクドクヘビに奇襲されたのだ。

 しかし俺は痛がる訳でもなく、寧ろ笑っていた。


「固有スキル[毒分解]と[毒刃]、良いスキルだな、もっとくれよ」


 俺のステータスには、二つのスキルが追加されていた。


[毒分解β]

 毒を分解しダメージを5%軽減する。


[毒刃β]

 相手に攻撃力0.5%分の毒を十秒間一秒おきに付与する魔法の刃を召喚する。

 ー毒が相手に付与されると刃は消滅する。

 ー刃は一定時間経つと自動で消滅する。

 


 [毒分解]は吸収し切ればに50%軽減、つまり毒半減スキルになり、[毒刃]は攻撃力50%分のダメージを継続的に与えることが出来る。

 二つとも優秀なスキルだ、これは攻撃を受け続けスキルのβを取りたい。

 ちなみに、モンスターは同じ名の種族間で固有スキルを共有してる為、様々な個体が持っているのに固有スキルなんて事態が発生したりする。

 本当に稀だが、種族の中に変異種が現れその影響で二つの固有スキルを得たりする種族がいるのだが、このドクドクヘビはその対象と言えるだろう。

 それにしても、モンスターからもステータスを吸収出来るとしたらこのスキルはどこまで成長できると言うんだろうか……?

 少し恐ろしくなった。


 しかしその恐ろしさは激痛により吹っ飛んだ。

 いや、他に何も考えられなくなったと言ったほうがいい。


「精神力が低かったら今頃気絶してたぞ、クソッ」

 

 ドクドクヘビの毒は想像以上にキツく着々と体を蝕んでいった。

 そんな毒を10分程無抵抗のまま受け続けるという苦行を達成した俺は、遂に完全に吸収することに成功する。

 俺はこれ以上生かす理由も無いと、手に持つ剣でドクドクヘビを刺そうとしたその瞬間——


「体が動かせない?!」

 

 目線だけ動かし周りを確認すると、ヤミコウモリを見つける。

 一匹だけじゃない、何匹も居る。

 ヤミコウモリは動けなくなる麻痺を付与する[麻痺眼]を固有スキルとして所有しているが、効果範囲も命中率も低い為警戒していなかった。


「油断したっ……!!」

 

 しかし不幸はそこで終わらない。 

 なんとバケトカゲが数匹近づいてきていたのだ。

 バケトカゲは命中率は低いが当たれば致命的と言われているスキル[混乱]を持っていて、精神まで歪める恐ろしい存在だ。

 そんなのが何匹も居るこの状況に心拍数が上がり、心臓の音が嫌になるほど聞こえる。

 いくらダメージ吸収が不死身と言っても、体を全て食われても大丈夫なんて確証はない。


「——ッ!」


 遂に声すら出なくなり、心体共に完全に言う事を聞かなくなる。

 ゆっくりと、重い瞼が閉じて行く。

 意識が切れるその瞬間——


『特殊条件達成、スキルが“覚醒”しました。スキル名と効果が変更されます。又、特殊条件が達成されスキルが融合されます。』

 

[毒刃]→《覚》[毒霧]

 自分の意のままに操ることのできる、精神力の高さに比例して濃くなる毒の霧を発生させる。

 ー任意発動。

 ー十秒間一秒おきに自身の攻撃力10%分のダメージを与える。

 ーある程度の霧の濃さで隠密性を獲得する。

 ー霧が濃くなると毒霧が与える毒ダメージが増加する。


[麻痺眼]+[混乱]→《覚》[威圧]

 自分よりステータスが低い相手の行動を完璧に阻害する。

 ー任意発動。

 ー自身より格上の相手に掛けた場合、確率で軽度の混乱状態になる。


[毒分解]→《覚》[毒吸収]

 ー毒を受けると体力が回復する。

 ー常時発動。


「……[威圧]」


 途端、体が言う事を聞き始める。

 BランクダンジョンのモンスターのステータスはAll五百以上、しかし吸収されている今は三百程度、それに対して俺は吸収分によってAll五百以上に違いない。

 [威圧]はしっかりと発動し、モンスターの動きを完全に奪った。


「[毒霧]」


 すると、体の周りに紫色の煙が湧き上がる。

 試しに触れてみると体力が回復した。

 どうやら毒吸収の効果は自分の毒にも有効らしい。

 毒は、攻撃され傷ついた俺の体を徐々に回復させ、同時に周りのモンスターを苦しめる。


「はは……まさにチートだな」


 二つの固有スキルを持っている人間など存在せず、ましてや覚醒までさせている存在などAランクダンジョンのボスでも極稀だろう。


「今なら勝てる」

 

〈名前〉多賀谷亮たがや りょう

〈レベル〉20

〈力〉200(+900)

〈体力〉200(+600)

〈精神力〉200(+530)

〈俊敏〉200(+540)

〈固有スキル〉

《覚》[ダメージ吸収]

 敵から攻撃を受けた時、ステータスの10%を吸収する。

 ー任意発動(急襲時自動発動)

 ー回数制限、クールタイムは存在しない。

 ー

 ー吸収はダメージを受けたその後に行われる。

 ーこのスキルは妨害を受けない、受けた場合は吸収効果が発動される。

《覚》[毒吸収]

 ー毒を受けると体力が回復する。

 ー常時発動。

《覚》[毒霧]

 自分の意のままに操ることのできる、精神力の高さに比例して濃くなる毒の霧を発生させる。

 ー任意発動。

 ー十秒間一秒おきに自身の攻撃力10%分のダメージを与える。

 ーある程度の霧の濃さで隠密性を獲得する。

 ー霧が濃くなると毒霧が与える毒ダメージが増加する。

《覚》[威圧]

 自分よりステータスが低い相手の行動を完璧に阻害する。

 ー任意発動。

 ー自身より格上の相手に掛けた場合、確率で軽度の混乱状態になる。

[獅子奮闘]

 自身の力が+100%増加

〈冒険者スキル〉

[鑑定]

 相手のステータスを看破する。

[思考加速]

 視覚的・聴覚的情報の処理能力向上。

[渾身の一撃]

 自身の攻撃力×10の一撃を放つ。


 ステータスはレベルが一上がる毎に十伸びる。

 つまり、今の俺は実質100レベルの冒険者と同等の力がある。


「世界で最も高いレベルは600、このペースならば世界最強も夢じゃない」


 ドクドクヘビ、ヤミフクロウ、バケトカゲ。

 このダンジョンに住まうモンスターを全て倒し、ここまで来た。

 昔の俺ならただただ殴られるだけで終わっていただろう……しかし今は違う。


「堕龍、勝負だ」 

  

 俺は、勢い良く扉を開けた。

 

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