ゴーレムナイト

 あれから遺跡ダンジョン前で一夜を明かした。

 朝を迎え、オート露店のログを見ると『完売』していた。そういえば、放置しっぱなしだった。でもいいか、全部売れたようだし。


 アルメリアはまだ寝ている。

 幸せそうな寝顔を晒していた。

 小動物のように可愛いな。


 眺めていたいけど――ん?


「よう、あんちゃん。起きたか」


 ズシッとした重みのある巨漢が現れた。

 ああ、盗人の情報をくれた人だ。


「お、おはようございます」

「そう身構えるな。オレはこの通り、獣人族にして重魔導戦士のガンバンテインってモンだ」


 獣人族にして重魔導戦士……って、なんだか凄いな。

 そんな職業クラスがあったとは知らなかった。

 というか、名前も随分とゴツい。


「この前は情報を教えていただき、ありがとうございました」

「いや、気にすんな。それより、またダンジョンへ入るのか?」

「ええ、僕を待っている冒険者がいると思うので」

「うむ。どうやら遺跡ダンジョンの一番奥のエリアにボスモンスターがいたようだ」


 険しい表情で顎をしゃくるガンバンテインさん。


「ボ、ボスモンスターって……まさか」

「ああ、だが奥に辿り着くまでに強力なモンスターがいるようでな。体力や魔力を回復できる支援職の力を借りても厳しいらしい。で、アイテムも物凄い数を使うんだと」


 消耗品が必須なダンジョンってことか。

 だから、中間前でもあんなにアイテムが売れたんだ。


 支援職がいても厳しいという奥のエリア……いったい、どんなモンスターが生息しているんだ?


「なるほど、では僕がみんなの為にアイテムを販売してきます」

「おぉ、そうしてくれるか。店長のあんちゃんなら出来るはずだ」

「し、知っていたんですか?」

「あんちゃんの噂は広まりつつあるよ。有能な店長だってね」


 そ、そうだったのか。なんだか照れくさいな。

 その後、ガンバンテインさんはパーティと共にボスモンスターにいるエリアを目指すと言って去っていった。

 たった三人で攻略中なのか。

 少人数ということは高レベルのメンバーで構成されているってことだ。あの人も、かなりレベルが高いのかもしれない。


 アルメリアの元へ戻ると、朝陽に向かって祈っていた。


「おはよ、アルメリア」

「おはようございます、カインさん。良い朝ですね」

「祈りを?」

「ええ、教会の教えなので」

「そういえば、共和国の教会に所属しているんだっけ」

「はい、その通りです。実は――」


 アルメリアが何か言いかけると、遺跡前が騒がしくなった。


「大変だ!! 遺跡ダンジョンの先発組が立ち往生しているらしい!」「レアアイテムを狙う窃盗ギルドが現れたようだ」「マジかよ。最近出没している犯罪集団か」「げえ! ボスモンスターを倒す前に犯罪者に狙われるとか、最悪じゃん」「このダンジョンにはお宝も眠っているっていうのにさ……」「なんとかならないのかよ」


 みんな困っているみたいだ。

 それに、先発組が危険だ。

 僕にとって冒険者はお客さんだ。

 そんなお客さんを守るのも僕の使命。


「アルメリア、行くぞ」

「え、あ……はい!」


 完売後に出していたオート露店を畳み、キャンプ用品も全て回収。撤収作業を直ぐに終わらせ、僕とアルメリアは遺跡ダンジョンへ突入した。


 第一エリア、第二エリア、安全地帯と進んでいく。ここまでは大丈夫だ。次の第三エリアがまだ僕達にとっては未踏の地。ここから先の情報は得られていない。


 いったい、どんなモンスターがいるんだ?


 暗闇の中を進む。


「僕の側を離れるなよ、アルメリア」

「はい。でも、なにかあったら助けますので」

「ああ、頼む」


 少し進むと、そのモンスターは現れた。



『――ギィィィィィィィィ!!』



 岩の剣を振るう人型のモンスター。それは、僕に斬撃を浴びせてきた。……マジかよ!


「カ、カインさん!」


 アルメリアが僕の服を引っ張ってくれたおかげで、斬撃を回避できた。あ、危なかった。危うく首と胴体が永遠に別れるところだった。


「な、なんだこのモンスター!」

「あれは『ゴーレムナイト』というそうです!」


 岩の騎士ってところか。

 しかし、あんな完璧な人型だなんて……まるで石化した人間がそのまま動いているような。そんな不気味さを感じた。


 なんにせよ、この状況を何とかしないと!

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S級アイテムショップ店長の俺は、盗みにくる冒険者を配信しながら蹂躙する 桜井正宗 @hana6hana

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