店長の特権・オート露店

 配信ランキング6位だって?

 いきなり一桁とか信じられない。

 驚きを通り越して呆然となった。


 いつの間にこんなことになっていたんだ……。こんなに多くの人に見られているってことだよな。それに、投げ銭もなんて金額だ。


 露店の売り上げも好調なのに、さらに思わぬ収入が!?


「こ、これは予想外だった」

「わたしもです。初日の配信でここまで上位に食い込む人はなかなかいませんよ」


 アルメリアは動揺しながらも、そう教えてくれた。マジか。

 けど、投げ銭は全額そのまま貰えるわけではないらしい。手数料が引かれるようだ。それでも十分すぎるけど。


「驚きだな。このまま続けたいところだけど、消耗アイテムの在庫が少ない。一度、アベオの葉で帰還して補充しようかな」

「その方がいいでしょう。今度は、わたしもアイテムを持ちますから」

「助かるよ」


 まだ時間もある。

 この調子で稼げるだけ稼ぐことにした。


 帰還アイテム『アベオの葉』で転移した。

 共和国へ戻り、商人ギルドへ向かった。


 建物の前に辿り着くと、ちょうどオーティスさんが現れた。こちらに気づき、爽やかな笑みを浮かべて歩いてきた。



「カインくんではありませんか。あなたの活躍の噂は商人ギルドにも、この私の耳にも入っていますよ。素晴らしい売り上げ、そして配信も上位に入るなど目覚ましい成績を残しているようで」

「知っていたんですね」

「もちろんです。レオのこともね」


 どうやら、別の人が対応してくれているようだな。


「そのレオはどうなりました……?」

「彼は窃盗の罪で捕まりました。今頃は、共和国の軍が管理している監房の中でしょう」

「良かった」


 ちゃんと対処されたようで一安心。

 胸を撫でおろしていると、オーティスさんは俺の肩に手を置いた。


「あなたには期待していますよ、カインくん」

「はい、がんばります!」

「その意気です。では、私は会議があるので」


 オーティスさんはまた会いましょうと微笑み、去った。

 やっぱり良い人だな。


「へ~、あの方が商人ギルドのマスターさんなんですね」

「ああ、アルメリアは初めてだったな」


 興味があるのかと思いきや、そうでもないらしい。俺の手を握り、商人ギルドへ入った。

 受付のお姉さんに挨拶を交わし、俺は販売用のアイテムをたくさん受け取った。その時、お姉さんが驚いていた。


「凄いですね、カインさん。あれだけあった回復アイテムを全部売ってしまうなんて」

「いえいえ、たいしたことはありません」

「完売したのに、冒険者の為にまたダンジョンへ潜るだなんて、さすがS級店長です」


 お姉さんのキラキラした瞳がまぶしかった。

 褒められて嬉しいけど、すごく照れる。お姉さん、美人だし。


 いい気分になりながらも、アイテムをたくさんカバンにつめた。これだけあれば、そう簡単には在庫切れにはならないはず。持てない分は、アルメリアに持ってもらった。


 受付のお姉さんに別れの挨拶を済ませ、商人ギルドを出た。


 これから、また遺跡ダンジョンへ戻らないと。


 再び歩きだし、アルメリアと共に共和国の外へ。同じルートを歩き、たまにザコモンスターに襲われるけど余裕で倒せた。


 パルテノンに到着するが、日が落ちてきてしまった。


「あ~、もう夜になってしまう。アルメリア、今日は遺跡ダンジョンの前で野宿しよっか」

「分かりましたー! 野宿は初めてなので楽しみですっ」

「そうなのかい?」


 この遺跡ダンジョンの前には、多くの冒険者がキャンプしている。二十人はいるだろうか。これだけいれば、モンスターに襲われても対処しやすいし、寂しくもない。


 邪魔にならない場所を選び、僕はキャンプ地を決めた。



「ご飯はどうしましょうか」

「食料は持ってきている。その前に、露店も出さなきゃ」



 店長の特権・オート露店を使っておこう。

 これは自動売買できる特殊な露店だ。

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