配信ランキング:6位
順調にアイテムを売りさばいていく。
やはり、回復系アイテムは需要がある。
そして気づいたことがある。
アルメリア目当ての客が一定数いるということに。そうか、彼女は美人で可愛いからな。気づかないうちに看板娘となっていた。
これなら男のリピーターが増えそうでありがたい。けど、ナンパも増えないかと懸念もある。その場合は、僕が追い払えばいいけどね。
アイテムの売買は完了し、冒険者は次のエリアへ向かっていった。
「ふぅ、かなり売れた」
「お疲れさまです、カインさん。はい、飲み物です」
柑橘系の味がする回復ポーションをもらい、僕は喉を潤した。……うまいッ! 疲労が吹っ飛ぶようだった。
アルメリアも同じようにポーションを飲んで回復。
そんな和やかな空気の中、接近する気配があった。
ドワーフのマックスさんかな?
振り向くと、そこには見知らぬ男がいた。
僕と同じ、商人のようだけど――え。
その男は僕の露店アイテムを盗み取って、逃げた。
「ちょ、ドロボー!!」
「カ、カインさん。あの方、わたしたちのアイテムを!」
僕もアルメリアも慌てた。
まさか、こんな場所で盗人が現れるなんて思いもしなかったからだ。でも、そういえば遺跡ダンジョンに入る前に冒険者が言っていた。最近、レアアイテムを盗む輩もいると。本当にいたんだ。
男は全速力で去っていく。僕はその後ろ姿を追い駆けた。けど、なんて素早い。
「どうしたカイン」
「マックスさん、その男が僕のアイテムを盗んだんです!!」
「なんだと! ワシに任せろ!」
マックスさんは、手持ちのハンマーを犯人に投げつけた。しかし、男は俊敏な動きで回避。ダメか……!
「こうなったら、挟み撃ちにしましょう」
「それだ。ワシがヤツの前に出る」
距離的に、僕よりもマックスさんの方が前へ出れる。なら、僕は背後からヤツを捕まえる。その通り、マックスさんは男の前に。
今だ!!
「観念しろ、ドロボー!」
「クソオオオオオオオ!!」
地面に倒れ込む男。取り押さえることに成功した。
「A級アイテムのストーンガードを盗んだのか」
「お前が……お前の露店ばかりがなぜ注目される! 俺は、こんなはずではなかった!!」
その顔を見て僕は驚いた。
この男は帝国の商人連合所属にしていた……僕を追放した男だ。けど、なんだか様子がおかしい。痩せ細っているし、前はこんなヘビみたいな刺青もなかった。
「レオ、お前なのか」
「そうだ、カイン! 俺はお前の落ちぶれた姿を見ようとずっと監視していた……だが、お前は共和国の……オーティスに気に入られ、店長になっていやがった」
こ、こいつ、ずっと僕達をつけていたのか。ストーカーかよ。
「僕を追放しておいて、盗みを働くとは……落ちぶれたなレオ」
「カイン、お前の出世が気に食わなかった。あんな可愛い子も連れていやがって、ふざけんな!!」
なにが、ふざけんなだ。
人を尾行して、レアアイテムを盗んで、それだけでも重罪だぞ。レオのしたことは許されることではない。
「店長を舐めんなッ!」
奪い返したストーンガードを使い、僕はレオの背中に物理攻撃を加えた。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
「レオ、お前を窃盗の罪で突き出してやる」
この場合、共和国の商人ギルドに身柄を渡せば、後は向こうで手続きをしてくれるらしい。
「カイン、この男はワシに任せな。ちょうど街に帰るところでな」
「いいんですか?」
「なぁに、帰還アイテムのアベオの葉を使えば一瞬さ」
「でも……」
「気にすんな。その代わり、今度ウチのギルドに寄って欲しい。街の西側にある『メギンギョルズ』だ。いいな」
ニカッと笑うマックスさん。
なら、お言葉に甘えよう。
僕は捕らえたレオをマックスさんに渡した。
「クソ、クソ!! カイン、これで終わりだと思うなよ!!」
「次に盗みに入ったら、今度は盾攻撃では済まないぞ、レオ」
「ああ、いいさ。次はもっとひどい目に遭わせてやる。そこの女もな!」
邪悪に笑うレオだったが、マックスさんがハンマーで頭を叩いて気絶させていた。
「この馬鹿はうるさいでな。さっさと連れていく」
「ありがとうございます。これはほんのお礼です」
僕は金貨を一枚、マックスさんに手渡した。
「お前さん……いいのか」
「はい。助けてくれたお礼ですよ」
「ありがたく。これで家族を食べさせてやれるよ」
嬉しそうに微笑むマックスさん。そうか、家族がいたんだ。それは良かった。
見守っていると彼はアベオの葉で帰還した。
安全地帯に静寂が戻る。
「あ、あのぉ……カインさん」
「ああ、ごめんごめんアルメリア」
「いえ、いいんです。レアアイテムが無事に戻って来て良かったです」
「うん、これからも気を付けないとね」
店じまいにして、僕は次のエリアを目指そうとした。すると、アルメリアが飛び跳ねていた。どうしたんだ?」
「カインさん、カインさん、大変です!!」
「なにを慌てているんだい?」
「配信ですよ! さっきの配信がとんでもなく注目されているようですよ」
配信アイテムで覗き込むと、そこには驚愕の数字が表れていた。
配信ランキング:6位
視聴者数:34000人
スパチャ:360,500リペア
えっ……ええッ!?
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