第4話

 生徒が計7人も行方不明になっているというのに、なぜかいつも通りに授業はとり行われ、やがて放課後となった。騒ぎを大きくしないようにという大人側の配慮であって、我々の見えないところで先生方は大慌てなのかもしれないが。


 俺は思考を整理するために、そして尾又玉藻の安否を確認するために、生徒会室へ向かう。果たしてそこには誰もいなかった。相変わらず西尾と尾原の学生カバンが今朝と同じ格好で鎮座している。


「ん?」


 今朝と違う点を発見。机の上にこぎれいな便箋。

 中学生女子がこぞって使うようなキャラもののカラフルなものではない。こんな書置きをするのは尾又玉藻その人に決まっている。さすが俺の惚れた女だ。


『屋上で待っています。 玉藻』


 シンプル!

 でもそこが素敵!

 興奮が隠しきれない。いや、ここは隠した方がよいのだろうが。

 次々と人がいなくなっている緊急事態。それはさすがに生徒会長たるものわかっているだろう。


 それなのにこれは……

 このシチュエーションは……

 どう考えても愛の告白だろう!


 放課後の屋上に女子が男子を呼び出す(逆でも可)なんて、告白以外に何があるというのだ。

 こんな時に何を考えているんだと言われるかもしれないが、

 こんな時だからこそ……なのかもしれない。


 こんな時だからこそ、愛を確かめなくてはならない。

 きっと賢明な我らが生徒会長はそう考えたに違いない。


 やぶさかではない。吝かではないぞ!

 俺は一度深呼吸して心を落ち着ける。

 こうしちゃいられない。すぐに屋上へ駆けつけなくては。

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