第46話:幼き神族・セーユ
第46話:幼き神族・セーユ
正優が病院に運ばれてからは検査が続くが、身体的な異常は無しと判断された。
一通り終わり病室に横たえられると、両親に優香、良奴、猫子、海香里が囲んだ。
皆一様に不安気な表情を浮かべており、優香と猫子は両サイドから手を握っている。
「失礼致します、小山内正優様の病室でよろしいでしょうか」
「は、はい……そうですが」
コンコンとノックの音が鳴り、ガラガラと扉が開くと女性が一人入ってきた。
母ちさ子と挨拶を交わすと、丁寧にお辞儀をして名刺を差し出す。
「私は政府より派遣されました、
「政府、ですか?」
「はい。 今回の件で政府内では、小山内正優様が神族である可能性が高く事実確認が必要と判断され、私が派遣された次第です」
「その、息子は……」
「不安にさせてしまい申し訳ございません。 もし仮に神族であると判明した場合でも、政府内に取り込むような事は一切致しません。 むしろ、安心して暮らしていただけるよう十分なサポートをご用意しております……との事です」
「は、はあ……」
突然の来訪に思いもしない内容、ちさ子だけでなく皆顔を見合わせている。
この中でしっかり話についていけているのは、ギリギリのギリでちさ子くらいだろう。
「内容につきましては、今は伏せさせて頂きます。 まずは事実確認を行わせていただき、結果次第でご家族にのみお話させていただきます」
「あの、どうやって判別するんでしょうか? ステータスは自分以外には見えないと思うんですが……」
「世界各国にステータス確認装置という物のレシピが贈呈されたのはご存知でしょうか?」
「はい、一応……ワールドアナウンスで聞きました」
「その装置はもの凄く高コストなんですが、ダンジョン産の素材が無くても作れる事が分かりまして、日本では一台だけですが製造に成功してます。 まだ世間に公表されていませんので、今回は特例で使用する事となってます」
「なるほど……」
「あの、ちょっといいっすか? その公表されてない物の情報を俺たちが聞いても良かったんすかね……?」
「問題ございません。 暫くは口外しないでいただきたいですが、今月中に冒険者ギルドでテスト運用を行ない、それに合わせて一般に公表がされますので」
「なるほど、分かりました……」
「それではステータスの確認をさせていただきます。 装置を運び込みますので、少々お待ちください」
夕実は一礼すると病室を退室してどこかへ行ってしまった。
残された者たちは複雑な心境なのだろう、不安の色を隠せず猫子は握る手に力が入る。
しばらく静寂が場を支配していたが、箱を持った男を引き連れて夕実が戻ってきた。
「お待たせ致しました、少し机をお借りしますね」
そう言うと、男が箱から一枚の黒い板を取り出して机に置いた。
コードが出ているということもなく、ただただ夜闇のように真っ黒いだけの板だ。
機械のようにも見えないし、天然物にも見えない不思議な外見をしている。
「慎重にテストを重ねて人体に悪影響が全くない事を確認済ですので、ご安心ください。 それでは始めます、右手をお借りしますね」
右手を握っていた優香は渋々手を離し、夕実へ明け渡す。
自由になった右手を装置の上に乗せて、ずり落ちないように支えていると……。
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小山内正優 15歳 Lv-
性別:中性的両性 種族:神族
〇適正職業
魔法神(NEW)、賢神(NEW)、聖母神(NEW)、最上位神(NEW)、声優、ナレーター、役者、歌手
○称号
声神(NEW)、歌神姫(NEW)、聖母神マリアの愛し子、神の子キリストの愛弟子、創造神の最高傑作、神々の埒外、神々を裁く者、声と運命の神セーユ(NEW)
○適正
魔法、聖母、神使
○スキル
□潜在スキル
聖母神マリア、神の子キリスト、魔声→
□適正スキル
魅了→
□獲得スキル
暗記Lv86(UP)、暗算Lv31(UP)、裁縫Lv15(UP) etc……
※実際はスキルの変化や括弧表記はありません
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「……凄まじい内容ですね」
「前に聞いた時から更に成長したみたいっすね、見たことない称号やスキルがありますから」
「性別は男だったと思いますが……」
「そこも変わってますね、前は普通に男だったっす」
「正ちゃんは男の子で女の子になっちゃったのね」
「お
「うむ……正直複雑な気持ちだ」
「種族は神族で間違いないようですね。 全体的に興味深い中身なんですが……称号に気になる点があるので、詳細を表示します」
鑑定結果が表示されたホログラムに指を伸ばし、称号をタップしていく。
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〇創造神の最高傑作
ワールダリウムの創造神、エフォール・レ・ジェモーの肉片から生み出された魂が下界に降り受肉した存在。
創造神には劣るが匹敵する力を有しており、想定の限界値を遥かに超えた力を有している最高傑作。
〇神々の埒外
創造神以下の全ての神々の枠に収まらない存在と認められた者。
〇神々を裁く者
創造神に代わり、罪を犯した神を裁く権利を有する者。
〇声と運命の神セーユ
声が関わる全てと運命を司る幼き神。
--その神は全ての声を理解し発する
--その神の声は全てを導く
--その神の声は道を切り開く
--その神の声は心身を癒す
--その神の声は罰を与え罪を洗い流す
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〇ワールダリウム
第二十三銀河系に存在する、生物が生活するのに適した世界の名前。
現地人類は【地球】と呼称している。
〇エフォール・レ・ジェモー
神界の貴級神族ジェモー家に生まれた双子神の姉。
姉妹揃って創造神に存在神化した後、ワールダリウムを創造し見守っている。
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「いやもう何コレ情報過多すぎるでしょ……頭痛い……」
「記録に残しましたので、私は総理にお届けに向かいます」
「はあ……よろしくお願いします……」
控えていた男がそう言うと、いそいそと装置を回収して病室を出ていってしまった。
夕実は頭を抱えてしまい、正優を直視する事ができなくなってしまった様子。
他の面々は今更驚く事は無いとでも言うように、いたって平静な振る舞いをしている。
「クッキーくん凄いことになってるな、神様の中の神様になってたってことだろ?」
「さすがあーしの正ちゃんだよねー、マジ惚れ直したしー」
「なっ! いくらネコちゃんでもお姉兄ちゃんはあげないんだからね!」
「えー? どーしよっかなー?」
「ムキーッ! ダメったらダメなの!」
「あらあらまあまあ♪」
「お嬢様方、私が居るのをお忘れにならないでください」
「「えっ!」」
「ハーレムとかクッキーくんやるなあwww」
「うむ……正直複雑な気持ちだ」
「なんでそんな楽観的で居られるんですか!」
ほのぼの和やかな雰囲気に苛立ちを覚えた夕実が吠える。
その姿を見て一同はキョトンとしてしまうが……。
「家族ですから。 どんな存在になろうと正ちゃんは正ちゃんですよね? 少なくとも私たち家族はこれまでと変わらず愛していきますよ」
「俺も大事な友達だしな。 犯罪に加担してるとかだったら別かもしれないけど、そうじゃないならこれっぽっちのことで何か変えようとは思わないぞ」
「あーしも同じー。 正ちゃんを知ってる人ならー、みーんな同じ事ゆーよねー」
「ですね、間違いないです。 貴女はご主人様を知らないから恐怖するんです。 近くで見て、接して、言葉を交わして理解する事をオススメ致します」
「だよね、お姉兄ちゃんをよく知りもしないでアレコレ報告して怖がられるとか、大人としてもどうかと思うし」
「うっ……」
真っ直ぐな言葉に二の句が継げず、一歩後退ることしかできなかった。
実際思う所もあったのか、一呼吸吐いて皆を見る。
「出過ぎた言葉を失礼致しました。 部下が情報を届けに向かいましたが、私も報告に参加しなければならないので本日は失礼致します。 後日またお伺いすることになるかと思いますので、その際はまたよろしくお願い致します」
「わかりました、わざわざありがとうございました」
「では失礼致します」
小さく会釈をした後、正優に向けて九十度腰を折ってから退室していった。
その行動にポカンとしたが、眠る正優が一瞬身動ぎしたことで霧散していった。
結局この日は目覚めることは無かったが、身体的に問題なしとして自宅へと搬送された。
自室のベッドに寝かされた正優は、勝手に添寝する優香に気付かず寝息を立てるのだった。
この事は政府内に留まらず、天皇家にも一言一句漏らさず共有されることとなった。
平穏無事に過ごしたい正優としては嬉しくないだろうが、もはや止めることはできない。
家族や友人たちは、周りの皆が幸せな生活を送れるよう心の中で小さく祈った。
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