第35話:コラボ配信③

 第35話:コラボ配信③


E「次は若王子さんだな、高音と低音が出せるのは何故ですか?」

若「え、あの、猫は……」

E「あー、それはネココの猫化っていう猫に変化するスキルだな。 もふもふで和ませてるのでお気になさらず」

若「猫化……いいですね。 っと失礼、質問理由は羨ましいなと思いまして、秘密を知りたいなと」

E「なるほど。 のなめ、どうだ?」

の「なでなで……はぇっ……! あ……えっと……」

ネ「にゃー」

メ「高音と低音が出せる秘密を知りたいそうです」

の「あ、はい……僕は……声変わりが……来なくて……男らしく……なりたいなって……練習して……」

若「声変わりが来ないってあるんですね、ビックリしました」

光「俺の知り合いにも居るぞ、言うほど珍しくないんじゃないか?」

の「僕のは……高音域発声の……スキルのせいで……」

若「……悲惨ですね」

光「さすがにちょっと同情するな……」


 :そんなスキルがあるのか

 :割と何でもあるらしい

 :習得したんじゃなくて、勝手に付いてた感じか?

 :逆もあるってことだよな


若「ちなみに、高音域発声はレベルいくつなんですか?」

の「レベル……100です……」

光「……どんまい」

若「低音域発声は……?」

の「今は……95……ですね……」

光「どんだけ練習したんだよ! すげえな!」

若「高音域発声100に低音域発声95ですか……練習を続ければ誰でも習得できるってことですね」

光「スキルも技術だからな、努力の結晶ってやつだ」


 :努力の結晶、いいなソレ

 :俺のペン回し86も努力の結晶だな

 :私のジト目73も努力の結晶ですか?

 :変なスキル発表会になってらwww

 :惰眠96には勝てまい!

 :お前は起きてろ

 :ひどい!


若「僕も練習してみます、もしかしたらスキルが生えるかもしれませんし」

E「ちょっと疑問なんだけど、スキルの概念が解放される前からのなめの高音域発声が影響してたんだよな? 実は知らなかっただけで、スキルは昔からあったってことになる、ってことか?」

光「あー確かにそうなるのか?」

若「どうなんですかね、そう言われればそうなんでしょうが、検証は難しいですし……」


 :最初から獲得スキルに入ってるのもあったよな

 :経験を読み取ってスキル化した……とか?

 :それだと高音域発声は後から生えたことにならないか?

 :確かに検証は無理だな、推測の域を出ないし

 :スキルの概念が解放される前には戻れないからな


若「うーん……一つの可能性の話ですが、声変わりとの関係性は全くなくて、偶然状況とスキルが重なった……でしたらまだ理解できませんかね?」

光「ふむ……ちなみにスキルはどうやって手に入ったんだ?」

の「潜在スキルに……適正があって……その中に……内包されて……ました……」


 :潜在スキル?

 :適正ってなんだ?

 :ヤバい、未知の単語が出てきた

 :スキルって種族と獲得だけじゃないの?


メ「のなめ様に代わって私が説明させていただきます」

若「お願いします」

光「頼む」

メ「スキルには潜在、適正、種族、獲得の四種類があります。 潜在スキルは……」


 潜在スキル

 生まれ持ったスキルで、後天的に獲得できるスキルが出る場合がある。

 中には『適正』を得るためのスキルが存在する。


 適正

 潜在スキルから得られるもので、スキルパックのようなもの。

 これらは適正スキル欄に表示され、潜在スキルと同様に先天的に獲得したスキルに分類される。


 種族スキル

 各種族の特性がスキル化したもので、後天的に獲得できる場合もある。


 獲得スキル

 後天的にスキル化した特技や特性。


メ「……といったモノです」

光「悪い、頭が追いつかないわ」

若「ざっくり言うと、高音域発声は先天的に持っていたスキルってことですよね?」


 :ふむふむ、勉強になった

 :潜在スキル持ってないなー

 :スキルパックか、羨ましいな

 :先天的ってことは、遺伝かなにかってこと?


メ「遺伝、隔世遺伝、守護霊の影響、加護、他にも様々な切っ掛けがあるようです」

若「なるほど……割合は流石に分かりませんが、世界中に一定数は居るってことですね」

光「んで結局スキルは関係あるのか?」

ネ「たぶんないかなー」

光「ん? なんでだ?」

ネ「あーし、猫化の潜在スキルあるけどー、人のとき猫になれなかったしー」

若「でしたら、偶然の線が強そうですね。 潜在スキルが機能しないという事は、適正も得られないはずですから」


 :確かに

 :悲しい偶然が重なったんや

 :つまり声変わりは……

 :言わせはせん、言わせはせんぞ!


光「なんとなく分かったわ、ありがとな」

若「申し訳ないです、興味本位の質問が勉強会みたいになってしまって……」

E「あー、大丈夫! 俺たち四人とも潜在スキルと適正持ちで、知ってたから話した、それだけなんで!」

の「うん……面白かった……」

ネ「だよねー」

メ「お茶入れますね」

若「すごい集まりだったんですね……」

E「世界激変前からの集まりっすから、偶然偶然」

若「そうでしたね、貴重な事を知れたので偶然に感謝です」

光「本当にな……野菜ジュースうっま! なんだこりゃ!」

若「みっちゃん……」


 :今かよwww

 :タイミングwww

 :綺麗にまとまったとこなのにwww

 :光彦こんなんじゃなかっただろwww

 :キャラ崩壊してんなwww


の「お母さんの……野菜ジュースは……美味しい……見た目が……悪いだけ……」

E「そうだったのか!」

ネ「あーしはいらなーい」

メ「野菜ジュース入れますね」

ネ「やめろしー! ふしゃー!」

若「僕もいただいてみたいです」

メ「かしこまりました、新しいカップをご用意いたします」

光「これ持って帰れないか? マジで毎日飲みたいやつだぞ」

の「お母さんに……言ってみると……いいかも……?」


 日本ではまだ解明されていない情報を話していた。

 そのはずだが、急速に何事も無かったように和やかになっていく。

 五千人以上が耳にしてしまったが、野菜ジュースに話題を攫われてしまったのだった。


 また、配信側は勘違いをしているが気付くことはなかった。

 そもそも猫化スキルの存在を知らなければ使うことができない為、決定打にはなりえない。

 猫子が過去に猫になろうとしたことがあれば、また話は別なのだが……。


E「だいぶ時間経ったな……今から企画やるか!」

若「アフレココラボですね、やりましょう」

E「本家本元と聴き比べ、それからシーン再現をやろうと思う」

の「うん……楽しそう……」

若「のなめさんはスキルだけ気を付けてくださいね?」

の「は、はい……」

光「大丈夫だろ。 声を変える時と同じで、意識すればいいだけなんだからよ」


 :スキルもオンオフがあればいいのにな?

 :演技って自然と感情がこもるし、難しそう

 :スキルの概念が生まれたばっかなんだし、トライ&エラーになるのはしゃあない

 :感情を揺さぶるほど本気でできるんだ、俺は応援してる


の「ありがとう……ございます……頑張ります……」

E「よし、まずはみんな気になってる聴き比べからいくぜ!」

ネ光若「「「おー!」」」

の「お、おー……!」



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「羨ましいなぁ」

「アキ見えないでしょ、離れて離れて」

「この子ぉ~なんか良いねぇ~」

「でしょ? いいでしょ? コラボしたくなったでしょ?」

「そうだねぇ~してみたいねぇ~」

「アキもチホも企画始まるよ? 見ないの?」

「見る見る!」

「見ますよぉ~」

「だから見えないって!」


 まったく……元気なのはいいけど、アクションが大袈裟なのよね。

 まあそこが良いところでもあるんだけどさ。

 コラボの方は社長からも許可出たってマネージャー言ってたし、焦らなくていいのに。


 他事務所に先を越されたのはアレだけど、決めるのは相手だからしょうがない。

 コラボの許可が出たってだけでも喜ばないと、だよね。

 ……もし決まったら、お茶請け手作りした方がいいのかしら? ……うむむ。

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