第34話:コラボ配信②

 第34話:コラボ配信②


 #005 声真似系ノッカー×声優コラボお茶会


 ついに幕を開けたコラボ配信。

 プイッタで宣伝してたお陰か、開始早々視聴者が五百人を超えた。


の「グッドアフタヌーン……ようこそ……」

E「アフタヌーン?」

ネ「ぬーん?」

メ「アフタヌーンとは朝食と夕食の間の時間、十五時から十七時くらいを指します」

E「なるほどな、グッドアフタヌーン!」

ネ「あふたぬーん!」

メ「ようこそおいでくださいました」


 :グッドアフタヌーン!

 :新しい挨拶いいね、グッドアフタヌーン

 :きましたよー、グッドアフタヌーン

 :グッドアフタヌーン、今日はなんか雰囲気違うね?


の「気付いてくれた……今日は……コラボ回……特別です……」

E「今回はゲストを招いてのコラボ回なんだ」

の「前回の後……コラボ決まって……さっそく……来てもらいました……」

ネ「とくべつなゲストだよー?」

E「そうだな、待たせるのも悪いから、さっそく呼ぼうぜ!」

の「うん……初のゲストは……こちらの……二名です……」


 のなめの合図でカメラが少し引いて回転する。

 左にのなめ、右にゲストの形で画面が止まった。


の「声優の……若王子さんと……光彦さん……です……」

若「初めまして、松竹ヴァイオレット所属の、声優で森林妖精エルフの若王子です」

光「同じく声優で獅子人レオピープルの光彦だ、よろしく」


 :うわあああああああ!

 :え? 本物? マジで?

 :光彦王子だああああああ!

 :ヤバいヤバいヤバい!


光「なかなか良い反応してくれるな」

若「ありがたいことです、今日はよろしくお願いしますね」

の「よろしく……お願いします……」

E「芸能事務所『松竹ヴァイオレット』さんからコラボ依頼が来て、今日実現したんだ」

ネ「しょーちくっておっきーの?」

E「お、ネコちゃん良いパスだ」

若「タレント、モデル、歌手、声優がメインの大手芸能事務所なんですよ? 大物芸能人を数多く排出しているので、もしかしたら皆さんが知っている方も居るかもしれませんね」

ネ「ほーん、すごいところなんだねー」


 :五本の指に入る大手だもんな

 :大手からコラボ依頼とかヤバい

 :一発目が光彦王子とかレベルたっか!

 :プイッタで拡散しないと!


光「じゃんじゃん拡散してくれよな」

若「こらこら、無理強いは駄目ですよ? みなさんゆっくりしていってください」

メ「失礼致します、お茶のご用意が整いました。 本日のお茶請けは、松竹ヴァイオレット様からいただいたマドレーヌでございます」


 :お高いやつかな?

 :値段の話はご法度だぞ?

 :俺はうめえ棒三十本だぜ

 :今日はクマのグミ!


メ「こちらのマドレーヌは、松竹ヴァイオレット様の社長夫人お手製とのことです」

光「え、そうなのか?」

若「渡された時に言ってましたよ? 聞いてなかったんですか?」

光「あー、すまん」

の「ふふふ……いただきます……」


 :マドレーヌ手作りとか凄い

 :私もスイーツ作れるようになりたいなー

 :光彦くん、後で社長室に来なさい

 :ご本人登場www

 :まさかのwww


光「げっ! ……はい」

若「自業自得です」

メ「若王子様にはミルクティ、光彦様には特製野菜ジュースでございます」

の「あ……野菜ジュース……」

光「なんでだよ!」

E「やっちまったな……」

ネ「あーあ」


 :野菜ジュースwww

 :マジでなんでだよwww

 :特製ってことは手作り?

 :なんかドロッとしてらwww


E「あー光彦さん、ここでは飲み物を聞かれた時に『なんでもいい』とか答えなかったりすると、お袋さんお手製の野菜ジュースが出てくるんすよ」

光「なんだよそれ!」

若「ミルクティ頼んで正解でしたね……」

の「なんか……ごめんなさい……」


 :いやいやのなめは悪くないから

 :スッキリしたから社長室には来なくて大丈夫です

 :許されたwww

 :さすが社長、懐が深いwww


光「だーくそっ! 嬉しくねえよ!」

若「ちゃんと全部飲んでくださいね、残すのは失礼ですから」

光「わーったよ! ちきしょう!」

E「なんで開始早々面白シーンになってるんだ?」

ネ「おもろいしいーっしょwww」


 :進行役が嘆くレベルwww

 :確かにwww

 :この流れは予想外すぐるwww

 :吹いた緑茶代は誰に請求すればいいですか?


の「その……マドレーヌ……美味しいです……社長の奥様……ありがとう……ございます……」

Eネメ「「「ありがとうございます」」」

若「お菓子作りが好きなのは事務所内で有名なので、喜ばれると思いますよ」

の「本当に……美味しいです……もぐもぐ……」

メ「のなめ様、ほっぺに欠片が……失礼します」

の「ん……ありがとう……」

ネ「あっ……」


 :さりげなく口に入れたぞ

 :食ったwww

 :このメイドやるな……

 :のなめ様のお弁当……羨ましい!

 :ネココさんのシッポが逆立ってるwww


E「あー見なかったことにして、先に進めて大丈夫か?」

の「うん……もぐもぐ……」

光「……大丈夫だ」

若「すみません、大丈夫です」

E「んでは……お二人から1つずつのなめに質問を貰ってるから、それを答えてもらおうかな」

の「分かった……」


 :いいね、プロ声優から声真似師に質問か

 :何聞くんだろ?

 :恋人は居ますか?

 :好きな素数は?


E「まずは光彦さんから、声真似は何歳から?」

光「純粋な興味からだな」

の「えっと……物心ついた時……です……」

若「四才くらいにはすでに、ですか?」

の「はい……アンパ〇マン……見ながら……とか……」

光「すごいな、十年以上やってるのか」

の「最初は……下手だった……地声で……セリフ言ったり……」

若「幼い時はそうですよね、僕も戦隊物の真似とかしてましたから、その延長なんでしょうか」

光「俺もライダーの真似やってたな、変身! って」

の「あの……その……」

若「どうしました?」

光「ん?」

の「獣機戦隊……マシナリジャーも……やって……ました……」

若「すごい、知ってるんですか?」

ネ「なにそれー?」

光「戦隊物の初3Dアニメ作品だな、これじゃない! って大バッシングくらったやつ」


 :そんなのあったのか

 :あーなんか見覚えあるかも?

 :一応一年やったけど、次から実写に戻ったやつだな

 :知らなかった


の「若王子さんが……タンクブルーで……光彦さんが……ドシャグシャーの……ドロヘッド……やってました……」

若「よく覚えてますね、懐かしいです」

光「やったなー、敵組織のボス役だったか」

ネ「へー、マネできるー?」

の「えっと……<マシンチェンジ! タンクブルー! 轟け! 獣機戦隊マシナリジャー!>」

若「え、なんか……勇気が湧いて……」

光「うお、なんだこれ……」


 :なんかブルっときた

 :今ならなんでもできそう

 :うおおおお!

 :ちょっと走ってこようかな


の「あとは……<この星の資源は我らの物……奪え! 壊せ! 採り尽くすのだ!>……とか……」

若「黒い……気持ちになる……」

光「うっ……これは……」

E「のなめ! 別のセリフだ!」

の「あ……! えっと……<森で飲む緑茶は美味いだなー、な? ディアードーザー>」

若「はっ……お茶が飲みたい……」

光「あー煎餅欲しい……」


 :ちょっとお茶買ってくるわ

 :自販機に緑茶あったかな

 :たしか羊羹あったな

 :最中うめー


E「のなめ、注意な」

の「ごめん……」

若「今のは、いったい何だったんですか? すごく感情が揺さぶられたような……」

光「ドロヘッドはやばかったな……なんなんだよ」

E「あーその、のなめが無意識にスキル使ったみたいで……。 魔声っていうスキルで、声に魔力を付与して感情を揺さぶるっていう……」

の「勇気と……憎悪と……和みを……付与しちゃい……ました……」

光若「「…………」」

E「マジで注意な、これが殺意だったらヤバかったぞ?」

の「ごめん……気を付ける……」

光「規格外が過ぎるだろ……」

若「スキルも使いようですね……」

の「ごめん……なさい……」

光「いや、大丈夫だ。 無意識でスキル使ったなら、意識して使わないように特訓すればいい」

若「そうですね、新しい概念ですから慣れるまではしょうがないです」

の「はい……」


 :スキルだったのか

 :確かにヤバかったけど、それだけ熱がこもってたってことだろ?

 :それこそ使いようだ、応援してるぞ

 :良くも悪くもスキルって危ないんだなって改めて考えてたわ


E「……ちょっと話題変えようか。 のなめも切り替えような」

若「今は気にしちゃ駄目です、後で一緒に考えましょう」

光「そうだな、俺も協力する」

の「はい……ありがとう……ございます……」

ネ「にゃー」

の「ネココちゃん……ありがとう……」

若「猫? あれ? ネココさん?」


 しょんぼりしてしまった正優。

 現在三千人以上がしており、それだけの人数が目にしてしまった。

 これを切っ掛けにスキルに対する法律が本格的に動き始めるが、また別の話。

 そしてこの日、日本各地で妙に緑茶の売上が良かったのも、また別の話。

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