第21話:初配信①

 第21話:初配信①


 やってきた日曜日。

 お昼に最寄り駅でみかりんさんと待ち合わせ。

 合流した後、学校前でネコちゃんが加わって。

 お家の前でノートくんが待ってる。


「お待たせ……しました……」

「おはようございます、ご主人様」

「お家から……メイド服……着てきたんですか……?」

「はい、これが私の戦闘服なので」

「素敵です……。 今日から……よろしく……お願いします……」

「よろしくお願い申し上げます」


 二人でペコリと頭を下げる。

 頭を上げてニコリと微笑んで、二人並んで歩き出す。

 この後の流れを簡潔に話しながら学校に向かった。


「おはろー」

「おはよう……ございます……」

「おはようございます、お嬢様」

「おー開幕メイド服! かばんもおっきー!」

「本日のティーセットが入っております。 中身は、後でのお楽しみで」

「はーい! むっふっふー♪ 楽しみだなー♪」

「じゃあ……行こうか……」


 二人に挟まれながら歩き出す。

 私服が二人にメイド服一人、心做しか普段より視線が多い。

 まあ僕でも見ちゃうよね、メイド服素敵だもん。


「お、来た来た」

「おはよう……」

「おはろー」

「おはようございます、ご主人様」

「楽しみと緊張でよく寝れなかったぜ!」

「元気いっぱい言うことじゃねーしwww」

「無理……しないでね……」

「おう、眠気はないから大丈夫だ!」

「そっか……寝たかったら……言ってね……」

「尊い……」

「とーといってなにー?」

「……後ほど一緒に勉強しましょう」

「お、おー」


 四人でお家に入ると、お母さんがリビングから出てきたところだった。


「あらいらっしゃい♪ みかりんさんもお久しぶり♪」

「お邪魔致します、奥様」

「ふふふ、今日は正ちゃんをよろしくね♪」

「お任せください。 こちら本日の食器になります、準備もお手伝い致します」

「まだ時間あるんでしょ? 頃良い時間に降りて来て一緒にやりましょ」

「かしこまりました」

「僕の部屋……二階だから……行こうか……」

「はい!」


 二階に上がって部屋に入る。

 もはやお馴染みになったリアクションを見て、僕の趣味の話をした。

 隣で二人がうんうん頷いてるのが、なんだか楽しい。


 …………

 ……


「ひとまず、流れはこんな感じだな」

「私は基本カメラに映るように壁際に居れば良いんですね」

「そうだな。 ただメインはクッキーくんだから、サポーターは顔が映らないようにだけ注意な」

「りょーかい」

「かしこまりました」

「一回……リハっていうか……カメラ調整……しようか……」

「そうですね、私が動く時の動線も確認したいですし」

「よし、やるか!」

「おー!」



 ----


 #001 はじめましては心から


「始まってる……かな……?」

「大丈夫みたいだな、挨拶挨拶」

「あ、えと……はじめまして……。 声真似系……ノッカー……のなめです……」

「サポーターのE奴いーやつだ!」

「サポーターのネココでーす」

「サポーターのメイドでございます」


 :はじめましてー

 :始まったー!

 :心からはじめまして!

 :はじめまして

 :美少女だー!

 :なんでメイドさんwww


「お、早速コメントありがとうございます!」

「ありがとう……ございます……」

「最初に、この配信について説明しますね」


 のなめが内気の口下手でちゃんと喋れない事や、サポーターが居る理由が説明される。

 サポーターは声だけで顔出しは今後も一切無い事が強く強調された。

 暗に詮索禁止という意味も含まれているが、ネット上では暗黙の了解でもある。


「聞き辛かったら……ごめんなさい……」

「色々察してもらえると助かります!」

「あーしらが話題振ったりー、コメ拾ったりー、頑張りまーす!」


 :ほんとに同一人物なの?

 :なんか投稿とキャラ合ってないんだよなー

 :その声じゃおっさん無理だろ

 :ハキハキ喋れなさそう

 :まー疑うのはわかる、疑惑は早目に解消したがいいぞ


「疑問はごもっともだな」

「あーしも最初はビックリしたしねー」

「そうだね……よく言われるから……何か真似……しようか……」

「後でリクエストコーナーやる予定だったし、今からやっちまうか!」

「じゃあ……ネココちゃん……リクエスト拾うの……お願いね……」

「まっかせてー♪」


 :豪炎〇修也

 :私気になります!

 :若本規〇

 :ババロウス・アルケロ

 :F〇teのギルガメッシュ

 :止まるんじゃねぇぞ

 …………

 ……


「定番って聞いたしー、若本規〇さんでー」

「わかった……

 フー〇ー田ーくーん、早く帰らないと奥さんに怒られちゃうよー

 かー〇ーはーめー波ーー!

 ヴェリーメ〇ーン♪」


 :あははははwww

 :顔と声があってねーwww

 :チョイスが秀逸すぎるwww

 :どっから出してんだよその声

 :ヤバい腹がよじれるwww


「あははは! 身振り手振りまで入るとヤバいな!」

「最初のならわかるー! めちゃ似てるー!」

「凄いです……私がリクエストしたいくらいです」

「お粗末様です……」


 :ト〇コ

 :カ〇ジのナレーション

 :お茶拭くの大変なんだぞー

 :ラーメン大好き〇泉さん

 :緑谷〇久

 :次も笑えるのがいいなwww


「ラーメン大好き〇泉さんってキャラ名ー?」

「アニメの……タイトルだね……」

「そなんだー、いけるー?」

「いいよ……やろっか……」

「私けっこう好きなアニメですね」

「よし……気合い入れるね……

 〇泉さーん! ラーメン食べに行こー!

 嫌です、一人で行ってください。

 ちょっと! ミ〇のことも誘いなさいよ!

 久しぶりにパイナップルラーメン食べに行こうかしら」


 :おー四人連続!

 :何か再生してる感じもないしガチなんだな

 :ちょっと疑ってたがマジだったんだな

 :クオリティえっぐ!

 :同じ声で完璧に代役できるやつだ


「今まで一キャラずつだったから、初じゃないか?」

「そういえば……そうかも……?」

「私、すごくラーメン食べたくなりました」


 :食欲をそそる声真似www

 :俺も食いたくなったところだったwww

 :天下一〇食ったばっかなのにまた行きたい!

 :ここまでできると、レパートリー気になる!


「レパートリーどれくらいー? だってー」

「あ、俺も気になってた」

「レパートリー……? ……見たことある……アニメなら……」

「「「えっ」」」


 :えっ

 :は?

 :マジ?

 :え

 :マジかよ……


「昔から……やってる……から……」

「長くやってるからって、普通は無理ですよ……」

「だよな……普通はこの声優さんしかできないとか、こういう声質しかできないとか」

「そういうの……無いかも……」

「ばけもんじゃーんwww」


 :有望すぎて怖いな

 :才能の鬼

 :虹色の喉を持つ美少女

 :ボイトレとかめっちゃしたんだろうな

 :どっか事務所入ったりとか考えてるの?


「めちゃくちゃ褒められてんじゃーん」

「これは褒められてしかるべきです、さすがご主人様」

「恥ずかしい……」

「それだけ認められたってことだ! 良かったな、のなめ!」

「うん……うん……!」


 この配信はプイッタで徐々に拡散されていく。

 フォロワー限定配信のため、一時的にフォロワーが激増。

 それが更に拡散されてと、波が波を呼んで広がっていく。

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