第6話 だだいまっ!

 人族領にやってきたら日本人に会いました。ツーブロの鈴木さんは勇者でした。


「まじ? ほそっち魔王なの? うける」


 鈴木さんはとてもフランクで、出会いがしらに ”てめぇどこ中だよ!” と凄まれましたが、隣の中学校で同盟中学だったらしいので友好的になりました。


「やっぱこれアロエだったんだ」


「はい、なのでこの戦争を止めないと……」


「ん~おけっ! それじゃあ作戦なんだけどさ?」


 鈴木さんの作戦は、


 ・最前線で魔王と勇者として一対一で戦う

 ・鈴木さん怪我をする

 ・僕がアロエを塗る

 ・アロエの説明する

 ・僕がヒールで治す


 鈴木さんは勇者だけど特別な力なんてないそうで、僕がヒールを使える事を伝えると目を輝かせてました。


 最前線ではいっぱい怪我人がでていました。勇者と魔王を名乗ると両軍とも道を明け作戦通り一対一で戦う流れになりました。


「じゃあ、ほそっちタイマンだ」


「い、いきまーす!」


 折れた聖剣を持つ勇者と、来る前に急遽購入した間引きされた剣を持つ魔王が激突する。


【ドジっ子スキルが発動します】


 どてっ!


「こけるんか~い! どんなドジっ子魔王だよ」


 しゅるるるるっ! サクッ!


「あっ……」


「いってぇぇぇぇ!」


 ごめんなさい。けど、これはチャンスです鈴木さんも皆に見えないように手招きをしてくれています。

 僕は懐からまわりにアピールするようにアロエを取り出し、鈴木さんに近づき刺さった剣を抜きアロエを塗りたくります。

 両軍からどよめきが起きる中、当たり前のようにアロエに効果はありません。


「アロエは! おばあちゃんの知恵袋! 塗ったところで傷も不老不死にもなりません! 治るのは心の傷だけです!」


 そうアロエで治るのは心の傷であり安心感なんです。


「ヒール!!」


 鈴木さんの体の傷が回復し、ツーブロックのツーの部分も回復しました。


「これでわかったろ! はいっ! 解散っ!」


「鈴木さん! これを」


 人族の王様達を納得させるために僕は手持ちのアロエを全て鈴木さんに渡しました。


「ほそっちはこれからどうするの? 今度魔王城遊び行ってもいい?」


「なんか色々と思うところがあるので反省の意味も込めて歩いて帰ろうと思います。 城ですか? ぜひ!」


 僕は鈴木さんと遊ぶ約束をし、魔王城へ帰った。そのつもりだったんですけど……なぜか病院のベッドで目を覚ましました。そして僕が最初に見たのは、お医者さんが止めるもの聞ず必死にアロエを塗るおばあちゃん姿でした。


「た、ただいまっ!」


「おかえり」


 おばあちゃんは涙を流しながらも、いつもの優しい声で答えてくれました。


 あのねおばあちゃん、異世界にもおばあちゃんのアロエがあったんだよ!?

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うんちな魔王さまはドジっ子スキルで最強に至る む~ん @moonsan0915

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