第27話
◆
「お嬢ちゃん、ありがとね。本当に助かったわ~」
助けた魔女(?)は
魔女(?)は傷が治った直後こそ湧き出す
しかし、それが落ち着いたと思ったら急に
「あたしは魔女のメリッサってんだよ。それはそうと、さっきはごめんね。腕ごと食べちゃったろ?」
『魔女(?)』改め『魔女のメリッサさん』は
今まで自分の血をポーションとして売り、今日は何度もモンスターに体を喰われて来たが、やはり目の前で自分の体を喰われ、咀嚼し、
特に親しくもない人間相手には。
自分の意思で差し出すのと他人の意思で喰われるのは違うのだ。なんなら食べ残しの
まあ、普通なら謝って済む問題では無いが自分は問題ない。
「大丈夫ですよ、私なら」
ほら、この通り。何て言いつつ残り少なくなった右腕を何度か
「まあっ! 凄いね~、固有スキルかい?」
「そうですよ、他の人には言わないで下さいね」
指を差し出した時点でメリッサにバレるのは覚悟していた事だが、これ以上広まるのは避けたい。故に口止めした。
「わかったよ、命の恩人のお願いだからね。他言無用にしとくさ」
その言葉に少し安心する。やはり言葉だけの保証だったとしても無いより
「そうだっ! お嬢ちゃんにお礼しなくちゃね。まずは、この厄介な霧を何とかしてあげるよ」
そうして、メリッサが指を鳴らすと来紅を青い光が包み込み憎たらしかったを霧を弾いた。何これ、すごいっ!
「ありがとうございます、メリッサさん♪」
そう言って本心から頭を下げる。あの霧から守ってくれるなら腕の一本くらい安い物だ。何処に行っても付き纏って来る
「いいんだよ。それより、ここから出たいんだろう?」
「そうなんですっ! メリッサさんも閉じ込められてるんですか?」
正直、向こうから本題を振ってくれて助かった。よく知らない相手に自ら弱みを晒すのは気が進まないからだ。
まあ、最初にかなりボロボロの姿を見られている上、
「いや、あたしは少し違うよ」
「どういうことですか?」
自分の意思で残っているのだろうか? だとしたら、それが原因で
脱出に協力してくれるならありがたいが、あまり頼りになる人では無いのかも。
と、失礼極まりない事を考えていると予想外の言葉が飛んで来た。
「あたしは、この館の本来の持ち主さ。ちょいと前にクソみたいな
「ええ!? そんなあ……」
ショックだった。この地獄のような場所を創ったのがメリッサだと聞いて。さっきまで気さくな近所の優しいお婆ちゃんのように思っていたのに。
勝手なイメージを押し付けていた事は百も承知だが、それでも裏切られたような気持ちは拭えない。
「言っとくけど、あたしは霧だのモンスターだのは知らないよ。アレ等は館を奪われてから現れたんだ」
「そ、そうなんですね、ごめんなさい。それと良かったです」
ギロッと
本当によかった。
「あたしも説明の仕方が悪かったから気にしないでおくれ。さっ、本題に戻るよ」
「わかりましたっ!」
必要な事だったとは言え、自分が話を脱線させた自覚はある。なので、ここは素直に従う事にした。
「あたしは魔女だ。攻撃魔法が得意だよ、単体攻撃よりも範囲攻撃の方が得意だね」
「すごい、範囲攻撃が得意なんですね」
魔女とはただ魔法を使えるだけの魔法使いにとって上位存在のような認識だ。
一般的に攻撃力のある魔法を使える人間はほとんどいない。私達がこれから入学する『ダンジョン学園』のような戦闘技術を学ぶ場所でさえ一握りだ。
その中で、範囲攻撃魔法は卒業までに使えるようになれば極めて優秀と称えられるほどだ。
そんな魔法を得意だと言うのだ。事実なら相当優秀なのだろう。並の魔法なら魔法職最大の弱点である詠唱を必要としないほどに。
「私は〘フィジカル・アップ〙を使えますが、まだ動きながらは出来なくて……」
それに引き換え私は、強化魔法の基礎がギリギリ使えるだけ。到底、戦闘に使えるとは言い難い練度だ。この程度の実力なのだ。詠唱の有無など語るまでもない。
メリッサが想像以上に頼もしかったので、余計に劣等感を感じた。
うつむく私の頭に優しく手が載せられる。
「そんな顔するんじゃないよ。お嬢ちゃんは命の恩人なんだ。後でドンと構えてりゃいいんだよ」
「そんな、いいんですか?」
「それにね、あたしは館を取り返すのが目的だが、お嬢ちゃんは脱出が目的だろう? どっちにしろ奴等を倒さなきゃならないんだ。一緒に行くよ」
「メリッサさん……」
彼女の不器用な優しさが染み渡る。本当に嬉しい限りだ。
そして、そんな優しい相手にまだ負担を強いなければならないのだから心が痛む。
「あの、もう一人ここに閉じ込められてる人がいると思うんです。その人も一緒を探すのを手伝って貰えませんか?」
彼を探す事は譲れない。ここに入って来るのを見た訳では無いが状況から考えて、いる可能性の方が高いだろう。いや、彼なら間違いなく来ている筈だ。
他ならぬ、私自身を助けるために。
それなのに私が見捨てる訳にはいかない。たとえ、初対面の相手の善意に縋るような恥知らずになったとしても。
「はいよ、まかせな」
だから心底ホッとした。頭を撫でてくれた時の笑顔のままで。
この人は信じられると思って。
そうして二人は外のモンスターを掃討した後、厨房を去って行った。
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