第18話 探索

 ここに、寄せ集めだけど迷宮へ入るためのパーティが結成された。


 人間男性。

 宝杖七羽ほうじょういろは、一応剣士。

 魔狩人ランクD。


 エルフ女性。

 イルメイダ・アーグラエル、職業は魔法剣士。

 魔狩人ランクC


 銀狼獣人男性。

 名前は「ガラン・ドールズル」職業は盾持ち戦士。

 魔狩人ランクB。


 チーター獣人女性。

 名前は「チーヌ・バリカード」職業は斥候、罠士、ダガー、弓使い。

 魔狩人ランクB。


 エルフ男性。

 名前は「ヴィルトス・シルヌス」職業は攻撃魔法士。

 魔狩人ランクC。


 人間女性。

 名前は「アイネ・ルンドクレン」職業は治癒魔法士。

 魔狩人ランクはC。


 この6人だ。

 チーヌはお互いを知る為に少し話をしようと提案。

 魔狩人協会ロビーにあるボックス席へ皆、腰を下ろしている。


「で、イロハ君と言ったわね。何故貴方が遺跡の封印を解除する事が出来たの?」

「それはあ…」


 七羽は戸惑い暫く沈黙する。


「おいおい!そう言う重要な事は話し合おうぜ。今から生死を分かち合うんだからよぉ」

「はぁ…ええと…」

「イロハさんは世界樹で私のお婆様に拾われ育てられました。…あの遺跡を解放出来たと言う事も事実です。私はひょっとしたら精霊王様…もしくは神様がこの荒廃へ向かっている世界への切り札をお与えくださったのかと思っています」


 イルメイダはそう早口気味で言った。


「…あの精霊の世界樹でですか…それならその可能性もありますかね?…」


 無口だったエルフ魔法士のヴィルトスがそう呟いた。


「あん?コイツが神の使いってか?」

「でも。たしかこの世界の英雄と謳われた、オルキルト様も世界樹から来たと言う説を聞いた事があります」


 ガランの後に治療魔術師のアイネがそう後付けて言った。


「確かに…あたいもそれは聞いた事あるわ。オルキルト様がこの世界を去った後、全ての迷宮遺跡が閉じたともね。…イロハ君が次の英雄かも知れないって件は半信半疑だけど、現に遺跡を解放したって事は可能性は0じゃないかもね」


 チーヌがそう言うと、皆暫く考え込んだ。


「なんか…済みません。僕だけDランクだし解放出来たのだって、ひょっとしたら偶然かも知れませんし…」


 イルがランバルさんの時のように上手い事、言ってくれたお陰でまた身分を適当に隠す事が出来た。

 オルキルトさんってこの世界でどう振舞っていたのだろう…。

 自分はこの世界を作った人間だって言っていたのだろうか?いや、それなら英雄じゃなくて創世人とか神とか伝わるだろうし。

 まあ上手く話も流れたし、このままで行こう。


「いや!でもまあ…迷宮ってお宝がごっそりとあるんだろう?そこへ公認で入れるだけでも俺達は幸運だぜ?」

「そうね。確かに」

「ですね」

「ですね」


 僕とイル以外は迷宮に入れるだけでも幸運だと言って頷いた。


「じゃあ。あたいから自分の事を少し話しましょうか」


 そうチーヌは語りだした。


 チーヌは、この「エルグラン・ルシール」隣の人間の国「アイレンス・ボレス」王国出身、そこから流れて来た魔狩人マカドだと言った。

 ここへ来た目的は兄の足跡を辿って来たと言っていた。


 次にガランは、獣人国「アフメルン」出身で、チーヌが喧嘩腰で言ったように隣の人間の国アイレンス・ボレスを拠点にしていたが、どうも居づらくなった為にたまたまグランリアに来ていたとの事。


 エルフ魔法士のヴィルトスはこのグランリア町出身。


 治療魔法士アイネは、「アイレンス・ボレス」出身。魔狩人の仕事でこの国に。依頼が終了してそのパーティが解散し、滞在していた所、声が掛かったとの事。


 僕とイルも、シルマンダからの経緯を障りのないように話した。


「こんな所かね?お互いの事はある程度分かった所で解散しますか?」

「チーヌ、解散は良いんだが、迷宮への突入は早速、明日で良いか?」


 皆、顔を見合わせて頷く。


「じゃあ、明日、装備を整えて朝10時に集合でいいな?」

「「はい」」

「わかったわ」

「はい」


 皆、頷いて席を立った。


 ◇


 次の朝10時になり、皆、約束通り迷宮遺跡前に集まった。


「お、イロハ来たな!」

「おはようございます」


 皆、昨日とは違いしっかりと装備を整えていた。


 ガランは半身を隠せるくらいの大盾を背中に腰には重そうな戦斧。

 チーヌは動きやすそうな革鎧。背中には弓、ナイフが数本入っているベルトを袈裟懸けに固定し、腰には2本のダガーを装備している。


 アイネ、ヴィルトスも、いかにも魔法士と言ったローブに宝石の嵌っている杖を持っていた。


「イロハ君。治癒ポーションは持って来た?」

「え?ポーション…ですか?…いえ」

「だと思った。ま、貴方達の分まで買って来てあるわ」


 チーヌはそう言って、イルと僕に試験管のような瓶を3本ずつ渡して来た。


 やっぱりRPGのように回復薬とかあるんだ…。


「小傷なんかで使っちゃダメよ。高位の治癒士しか作れない代物で意外と高価なんだからね」

「はい…分かりました」


 僕はコクリと頷いた。


「じゃ!行くかあ。何が待ち構えているか、うずうずしてくるねぇ、ガハハハ!」

「ガラン、あんたマジで一人で暴走するようだったら、私らだけで逃げるからね!」

「わがってるってチーヌよぉ」


 迷宮遺跡の前には魔狩人協会職員が、ガッチリと封鎖していた。


「よお!協会職員諸君、俺達はちゃんと許可貰ってるんで入るぞぉ」

「待て待て!ちゃんと身分証と名前を言え!」

「チッ、面倒だな」


 僕らの魔狩人プレートを確認し、何やら名簿のような物を見た。


「ふむ。確認した、通っても良いんだが、中の情報は帰って来た時に全てを記録するため、話してもらうが良いか?」

「ああ、わかった!で、中で拾った物は貰っても良いんだよな?」

「ある程度は認められるが、目にした事がない物などは一度確認させてくれ」

「良いだろう!」


 ガランは自信満々にそう言った。


 迷宮遺跡の中にも職員らしき兵士が数人いたが、すんなり通してくれた。


 目の前には縦に伸びた台円形のゲートが口を広げている。


「よし!いっちょ探索するか!」

「ちょ!ガラン」


 そう言ってガランは先にゲートに入って行ってしまった。


「もう…」


 チーヌの溜息に皆、呆れ顔を残した。


 チーヌがそのままゲートへ入り、皆続くように入って行った。


 ゲートへ踏み込むと一瞬、体が宙に浮いたような感覚になった。

 そのまま一歩進むと、見慣れぬ回廊を目にした。


 石の壁で、天井は10mほどの高さ、通路の幅も広く同じく10mはあるんじゃないだろうか?

 いかにも迷宮ダンジョンと言った雰囲気だった。


「凄いな…あの遺跡の中なのか?」


 ガランは戦斧を肩に担いで周りを見渡していた。


「さあね。でも、あの遺跡と比べたらどう考えても大きさが違うと思うけど?」


 チーヌはガランにそう言い返した。


「ですね。多分、別次元に作られた迷宮へ飛ばされた…が正解だと思いますね」


 七羽はそう言った。


「なるほど」


 後ろにいたヴィルトスがボソッと呟いた。


「まあ何でも良いだろう。先に進もうぜ!」


 ゲートがある場所は行き止まりになっている。

 とりあえずは先に進むしかなさそうだった。


 ガランが歩く後を僕達は歩き出した。


 チーヌはメモを取っていた。

 どうやら入り口からの地図を自分なりにつけているようだった。


 少し進むとガランが何かに反応して背中の盾を腕に持った。


「いるわね」

「ああ…獣臭がプンプンしてきた。この匂いは…多分、ワーベアだな」


 獣人のガラン、チーヌはすぐに敵の存在に気付いた。

 それを聞いて、僕達も身構える。


 少し進むと大きなクマが、のそっと歩いているのが見えて来た。


「やはりワーベアか」


 ガランは悠然とワーベアに向かって歩いて行く。

 ワーベアはこちらに気付き、勢いよく走って向かって来る。


「さて!初の魔物だ、精々楽しませてくれよ!」


 ワーベアは走って勢いよくガランへタックルしてきた。


 ドン!!


 突進はガランの盾に激しく当たったが、ガランはびくとも動かなかった。


「どせい!!」


 ガランが戦斧を振りかぶって、ワーベアを攻撃する。


 ドス!


「グオオオ!」


 戦斧はワーベアの肩に減り込み、血が噴き出す。

 それと同時に、ヴィルトスの火球とチーヌのナイフが飛んでくる。


 ジュ…

 ザン!ザン!


「グオオオオオオオ!!」


 ワーベアが雄たけびを上げる。


 チーヌが放ったナイフは、二つの目に見事に刺さり。

 ヴィルトスの放つ火球は鼻辺りを焼いた。


「今だ!イロハ、イルメイダ!」


 イルメイダはすぐに反応し、細身の剣で胸辺りを何度も刺した。

 七羽も渾身の力を込めて、剣を振り下ろす。


 七羽の攻撃はいとも簡単にワーベアの腕を切り落とした。

 七羽は自分自身驚いていたが、更にもう一本の腕を切り落としていた。


 イルメイダの攻撃はすでに心臓まで届いており。

 それが致命傷だったと言えた。


 断末魔もあげる間もなくワーベアはその場に倒れた。


「皆、ナイス連携だぜぇ!」


 ガランがそう言ってニヤリとした。


「え?…」

「む?」


 ガランとチーヌが異変に気付いた。

 なんと、ワーベアの死体が消えていくのである。


 そこに残された物は、ピンポン球くらいの大きさの魔石だけだった。


「死体が…消えちまったぜ…」

「…昔の文献で読んだ事があるんですが…」


 ガランが驚いていると、ヴィルトスが言葉を掛けた。



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後書き

残暑もまだまだ暑いですね皆さま。

涼しい所で読んで熱中症には気を付けてくださいね。


さて、只今リアルが超忙しく、更新も遅くなりました。

これから多忙になっていくと思うので、本当に更新などが遅れる場合が出て来ると思われますので、ご了承くださいませ!




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