第17話 パーティ結成

 僕達は魔狩人マカド協会へ戻った。

 迷宮は完全にここの魔狩人協会に管理され、誰も中へ入る事は出来なくなった。

 勿論、僕達は別だ。


 このグランリア町の魔狩人協会総支配人ランバルさんは、シルマンダ町のサルーラムさんから僕がゴブリンレジェンドを倒した事などを聞き、考慮してランクをEからDに昇格アップしてくれた。


 それは必要な事で、今から迷宮に入る為、最低でもBランク魔狩人マカドが1人はいないと迷宮へ入る許可を出す事は出来ないと言われた。

 勿論、僕達は例外と言う事だったけど、Bランクの魔狩人マカドがEランクなんかのパーティに入って来てくれるわけがない。


 イルは元からCだから問題はないだろうが。

 僕はせめてDランクになっていないと向こうが嫌う可能性があるからだと、ランバルさんは言った。


 本当は一気にCって事も考えたらしいが、そんな事をしても僕の為にならないとかなんとか言っていた。

 まあ、確かに僕はやっと、魔物や動物を殺す事の躊躇や、血を見るのも克服出来たばかりだし、まだまだ経験的には乏しいのでそれは分かっているつもりなんだ。


 そして、ランバルさんは僕達と共に迷宮に入ってくれる魔狩人を探してくれたが、それには時間を要した。


 やはり、僕がDランクなのでそれを嫌っての事なのだろうか?

 それとも、クラン結成している魔狩人以外の魔狩人が、まだこの町には少ないから見つけるのが大変なのだろうか?

 遺跡解放から3日経ち、ランバルさんに呼ばれる事となった。


 ◇


 コンコン。


「入りたまえ」


 ノックをし扉を開け、イルメイダと七羽は中へ入る。


「おはようございます。ランバルさん」

「うむうむ。イロハ君、イルメイダ君よく来た、先ずそこへ座ってくれ」


 2人は言われた通りソファへ座る。


「いやぁねぇ。済まなかったねぇ。やっと、パーティに入ってくれそうな4人を見つけたよぉ」

「はあ…」

「クランに入っている人間は身内以外と組む気があまりないし、それ以外となると…ねぇえ…」

「それで…見つかった4人とは?」

「揃ったらぁ、この部屋に案内するように言ってあるんだよねぇ」

「なるほど…」


 ゴンゴン!


 激しくノックする音がした。


「入るぞ!」


 太い声でそう言って入ってぬっと来たのは、身体の大きい狼の獣人だった。

 獣人がいるのは知っていたけど、こんなに間近に見たのは初めてだ。

 銀色の毛で体長は2mほど、頭は狼だが人型で筋骨隆々な大きな体をしていた。


 その後に続いて入って来たのは、滑らかな曲線な女獣人だった。


 顔を見ると、チーターだ。

 同じく顔は獣、体は人型だ。身長は僕と同じくらい170cm前後くらい。

 チーター特有の目元の辺りから鼻まで、黒い模様ティアーズマークがある。

 いかにもしなやかな体をしていて身体能力が高そうだった。


 次に入って来たのは、エルフの男性だ。


 身長は180cmほどで細身で色白い。

 端正な顔をしていて恰好も魔法使いって感じだ。


 最後に入って来たのは人間の女性だ。

 歳は20代後半から30歳弱と言った所だろうか?

 白を基調とした服を着ていて、宝石の嵌ったワンドを持っているから魔法使いなのだろうと思った。


 狼の魔狩人はドカッと近くにあったソファへ大きく腰を落とし座り。

 3人は並んで立っていた。


「来ましたねぇ」

「ランバルのおっさんよお!本当にこのパーティと一緒なら迷宮入って良いのか?」


 ドスの効いた声で狼男はそう言う。


「勿論ですぅよ。ただ、パーティなんだから連携出来るよう心掛けてください」


 ジロリと七羽を見る狼男。


「フン!なんで俺がDランクの人間如きと一緒にパーティ組まないと行けないのかわからんが?ま、それなら良いだろう」


 辺りが暫く沈黙する。


「ふむふむ。とりあえずぅ…ここに集まった魔狩人たちを紹介しますぅね」

「はい…」


 ランバルは淡々と皆の紹介を口にした。


 先ずは、狼男。

 名前は「ガラン・ドールズル」職業は盾持ち戦士。

 魔狩人ランクはB。


 次に、チーター女性。

 名前は「チーヌ・バリカード」職業は斥候、罠士、ダガー、弓使い。

 魔狩人ランクは同じくB。


 次は、エルフ男。

 名前は「ヴィルトス・シルヌス」職業は攻撃魔法士。

 魔狩人ランクはC。


 最後に人間女性。

 名前は「アイネ・ルンドクレン」職業は治癒魔法士。

 魔狩人ランクはC。


「とこんな所だぁね。イロハ君達は自分で紹介してみなさい~よ」

「はい…えっと、僕の名前は七羽いろは宝杖ほうじょうって言います。職業は今の所…剣士で魔狩人ランクはDです」

「私は、イルメイダ・アーグラエル、職業は魔法剣士です。魔狩人ランクはCです」


 2人も簡単な自己紹介を済ませた。


「ねえ。ランバル様?」

「何だい?チーヌ君」

「普通パーティ組む時って8人が通常なんじゃなくて?残り2人は?」

「はぁ…。居たらここに誘っているさぁね…」

「マジかよ!?」


 少し驚きガランがそう言った。


盾役タンクは俺一人って事かよ…つらっ」

「まあ。そう腐りなさんなぁね。その内補充するからさぁね」


 なるほど。

 RPGゲームとこれは一緒って事かな?

 ゲームでは盾役2人、回復2人、アタッカー4人、総勢8人ってのが理想的なパーティと言われている。2方向への対策と、強力な相手と対峙する時に、盾役タンク交代スイッチして戦って魔物を引き付けた方が持久戦にも対応が効くからね。


「そもそも、迷宮遺跡には、お宝守る大物の魔物もいるって昔の本で読んだ事あるんだが、そんなんでそれに対抗できるのか?」

「だからぁ…ガラン君。いきなりそんなのと戦う方がおかしいでしょう?先ずはぁ、一階層ずつ、どんな魔物が出現するのかぁも見極めて、それからぁ準備して対峙するのが普通でしょうがぁね…焦ると死にますよ?」

「ちっ!まあ、そりゃそうだが…」

「とりあえずぅ、残り二人はこっちでも探しとくしぃ?もう貴方達の許可は出してあるから、行ってきなさぁね」

「わがったよ!」


 そう言われて、僕達6人は部屋を出た。


「あのさ。6人でもう少し、お互いの事を話あいません?これから生死を共にするんだし?」


 そうチーヌが言った。

 皆は頷いて、広いこの協会の適当なテーブルへ座った。


「チーヌと言ったな。話し合いとかいるのか?」

「ええ、とても重要だと思ってますわパーティクラッシャーのガランさん」

「‥‥‥んだと?」

「貴方人間の国からこの町に来ていたのね。噂だけど聞いた事あるわ、強いけど無鉄砲で連携できずに崩壊を繰り返すパーティクラッシャーだって」

「喧嘩売ってんのかあ!このあまぁ!同人族でも許さんぞ!!」

「まあまあまあ…やめてくださいよガランさんも、チーヌさんも!みんな見てますって…」

「ちっ!どいつもこいつも」


 七羽いろはが止めに入るとガランはまたドスっと座った。


「話し合いならしてやる!大体だ、なんで俺達は寄せ集めでも迷宮遺跡へ入れるんだ?最初はクランのみだろ?それも上級ランククランだ。俺達は何でだ?」

「……」


 ガランの問いに皆が沈黙した。

 するとイルメイダが口を開いた。


「それは…イロハさんがあの遺跡を解放したからです」

「!?」

「何!?」

「はあ?」

「あなたが?」


 皆、驚きを隠せず僕を見た。


「はあ…はい、そう言う事でしょうかね?…」


 暫く沈黙の時が流れた。


「ハン…そう言う事かよ。それで、ランバルのおっさんがよ、特にお前を守るようにと俺に言ったわけか」

「はあ?そんな事、言われてたの?」

「ああ。口止めされてたわけでもねえが、何故、Dランクの人間を守らないといけねぇんだって最初思ったわけだが。そう言う事か、でもまあ…考えによっちゃ美味いかもなこの仕事…なあチーヌ、獣人同士、仲良くやろうぜ」

「フン、あんた他のパーティみたいに一人だけ生還とかしようもんなら私が首かっ斬ってやるからね!」

「ああ、死ぬ気で庇ってやるさ、お前じゃなくアイツをな。ガハハハ」

「ああ、っそ」


 とりあえず、話が出来る間にはなったようだった。





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