呪魔法で宇宙からの侵略者を撃退したら、元国王と元魔王が恋に落ちた！？～エデンヤードで始まる新しい物語～

「あなたの兄のことなら、私が一番よく知っているわ」

「ルナが来るらしい」

セイレンは館の執務室で手紙を読んでいた。

「女王様が？」

執務室のソファーに寝っ転がったアリシアが答える。

「そうだ。妹のルナだ。久しぶりに会えるから楽しみだよ」

セイレンは笑顔で言った。

「ふん、妹が来るからってそんなに喜ぶなんて、シスコン」

アリシアは鼻を鳴らして言った。

「シスコンって、それは失礼だな。ルナは優秀な女王だし、エデンヤードのことも気にかけてくれているんだよ」

セイレンがルナ・アイヴァーンに王位を譲ったのは、エデンヤードの設立に専念するためだった。セイレンは王国のことも大切に思っていたが、エデンヤードの運営には多くの時間と労力が必要だった。彼は自分の代わりに優秀な妹のルナに王位を譲ることを提案した。ルナは最初は戸惑ったが、セイレンの想いを理解して女王に即位した。

ルナは女王になってからも、セイレンの教えを忘れなかった。彼女は国民の幸せと安全を第一に考え、自らの手で王国を治めた。

彼女は魔術の才能にも恵まれており、多くの魔術師たちから尊敬されていた。彼女は魔術の研究にも熱心で、呪魔法の理論や応用についても深く学んだ。ルナは魔族との関係も重視した。彼女はセイレンとアリシアがエデンヤードで共に暮らしていることを知っており、彼らの仲を尊重していた。

「アリシアも会えばきっとルナを気に入るよ」

「まあ、あなたの妹だし、いい子なんだろうけど。何かの視察にくるの？」

「そうだよ。ルナはエデンヤードに興味があるんだ。魔族と人族がどうやって共存しているのか、見てみたいって言ってた」

セイレンはアリシアに笑顔で答えた。彼は妹のルナがエデンヤードを訪れることを楽しみにしていた。ルナはセイレンのことを心から尊敬しており、彼が築いたエデンヤードにも敬意を持っていた。セイレンはルナにエデンヤードの魅力を伝えたかった。

「なら私が案内しようか？ 私はこのエデンヤードの領主の一人だからね。人族の女王様にも失礼にあたらないでしょ」

「ありがとう、アリシア。ルナも嬉しいと思うよ。君が案内してくれるなら、エデンヤードの素晴らしさが伝わると思う」

セイレンは笑顔でアリシアに言った。彼はアリシアがルナの案内を引き受けてくれたことに感謝した。

「すごいところね」

ルナはエデンヤードの空気に圧倒されていた。彼女は兄のセイレンと魔王のアリシアが共同で統治していることを知っていたが、実際に見るとそれ以上に驚きだった。魔族の建物と人族の建物が混在し、魔族と人族が平和に暮らしている。彼女はアヴァロン・レイン王国では考えられない光景に感動した。

「ルナ様、ようこそエデンヤードへ。私はセイレン様とアリシア様のお付きの魔族、ミラと申します。お二人は館でお待ちになっています」

馬車のそばに立っていた魔族の女性がルナに声をかけた。彼女は黒い髪に赤い目をした美しい魔族だった。彼女はルナに礼儀正しく頭を下げた。

「ミラさん、こんにちは。私はルナです。兄のセイレンとアリシア様に会いに来ました。よろしくお願いします」

ルナはミラに笑顔で答えた。彼女は魔族の人たちに対しても偏見を持たなかった。彼女は兄のセイレンが魔族と仲良くなったことを喜んでいた。

「こちらこそよろしくお願いします。では、館へご案内しましょうか」

「よくきたわね！」

館の前に立っている銀髪の女性を見て、ルナはこの女性がアリシアだと一目で分かった。

「アリシア様、初めまして。私はセイレンの妹のルナです。兄のことをよろしくお願いします」

ルナはアリシアに礼儀正しく挨拶した。彼女はアリシアの美しさと威厳に感心したが、同時に彼女が兄の恋人だということにも興味を持った。

「私はアリシア・ノクトゥルナ。元魔王であり、今はセイレンとエデンヤードの共同領主よ。あなたの兄のことなら、私が一番よく知っているわ」

「そうですか。でも、私は兄のことを生まれたときからずっと見てきました。兄の好きなものや嫌いなもの、得意なことや苦手なこと、癖や性格、全部知っています」

ルナはアリシアに負けじと言い返した。

「あなたは兄とどれくらい一緒にいたのですか？」

「私はセイレンと戦争をしたり、協力したり、呪魔法を生み出したり、ネビュラを倒したり、エデンヤードを作ったりしたわ。セイレンの魔術力や呪詛力、戦闘力や指導力、勇気や決断力、全部知っているわ」

アリシアはルナに答えた。

「あなたはセイレンとどんなことをしたの？」

「私は兄とお茶をしたり、お話をしたり、お花を摘んだり、お散歩をしたりしました。兄の笑顔や声、優しさや面白さ、心配性や甘えん坊さ、全部知っています」

ルナはアリシアに明るく答えた。

「私は兄の全てを知っています」

「いやー、一度やりたかったのよね、私の方が彼を知っているのにトーク」

アリシアはエデンヤードを案内しながらルナに話す。片手には謎の肉を焼いた串を持っている。

「えっと、アリシア様、それは何ですか？」

ルナはアリシアの手にある串を指さして尋ねた。彼女はエデンヤードの食べ物に興味があったが、その姿はどこか不安げだった。

「これ？ これはね、魔界の名物なのよ。魔獣の肉を串に刺して焼いたものなの。とっても美味しいわよ」

アリシアは得意げに串を振り回した。

「ほら、食べてみなさい。セイレンも好きだったわよ」

「兄さんが……？」

ルナは驚いてアリシアを見た。彼女はセイレンと一緒に食事をしたことがあるのだろうか。

「でも、私は肉が苦手で……」

「えー、そんなこと言ってるとセイレンに負けちゃうわよ。私はセイレンと一緒に色々なものを食べたのよ。魔界の料理だけじゃなくて、人間界の料理もね。セイレンは私が作ったものなら何でも食べてくれるのよ」

アリシアは自慢げに話した。

「私はセイレンの好みを知っているのよ」

「そうですか……」

ルナは少し寂しそうに言った。彼女はセイレンと一緒に食事をしたことがあまりなかった。彼はいつも忙しくて、王宮から出かけていることが多かったからだ。

「そうだ、今晩ルナに魔界の料理を作ってあげるわ。セイレンと一緒に食べましょうよ」

「え、本当ですか？ アリシア様が料理を作ってくださるんですか？」

ルナは目を輝かせてアリシアに尋ねた。彼女はアリシアの料理がどんなものか興味津々だった。

「もちろんよ。私はセイレンに褒められたこともあるくらいの料理上手なのよ」

アリシアは胸を張って言った。

「私はセイレンのために色々な料理を勉強したのよ。魔界の料理だけじゃなくて、人間界の料理もね」

「すごいですね……」

ルナは感心しながら言った。彼女はアリシアがセイレンに対してそんなに一生懸命になっていることに驚いた。

「でも、兄さんは本当に魔獣の肉とか食べられるんですか？」

「もちろんよ。セイレンは私と一緒に魔界を旅したことがあるのよ。その時に色々な魔獣の肉を食べたのよ。最初は嫌がっていたけど、私が美味しいと言ったら食べてくれたのよ。それからは好きになったみたいよ」

アリシアは嬉しそうに話した。

「私はセイレンに新しい味を教えてあげたのよ」

「そうなんですか！」