最終話 物語よ始まれと願う空に


卒業式 当日



風も緩やかな良い天気に恵まれました。

白い雲が浮かんでいます。


手元の時計

針は定刻を示します。


式典 始まりましたね。



世界樹広場から遠くに小学校を見下ろしながら思い耽っています。



卒業式


誰もが数年を振り返り、想いが時間を遡る。


時の流れを実感する不思議な場所です。


おめでとう ありがとう 

優しい言の葉が流れる素敵な式典だと感じております。



百合さんの想い出には何が残っているのでしょう。


いつの日か振り向いたら宝石のように輝く想い出があって欲しいと願います。



§


自室 いつものお気に入りの椅子



ふいに胸からあふれ出してしまう百合さんへのモノローグ





百合さんとの出会いはもう随分と昔のように感じてしまいます。



小さなころから私に心許して一緒にいてくれましたね。


進学で地元を離れても、実家に何度も帰って来たのはあなたに会うためですよ。


友人からは『いとしの君』に会いに行くと揶揄されたものです。

まっすぐに誠実に育って行く百合さんを見守ることは幸せでした。



『雪ねえさま』と呼んでくれた時は嬉しかったですよ。

あの時から私は百合さんのお姉さんになりました。


地元に戻ったときの祝いの席に招待したのは私のわがままです。


この淑女は私の妹だと示したかったのですよ。

大人ばかりの宴で小さな淑女は評判でした。



――――



子犬を抱え雨にずぶぬれになった泣き顔の百合さん

自分のことよりも弱った子犬のことばかり気にしていましたよね。

あの優しさ 忘れませんよ。


そして真っ先に私を頼ってくれたこと いまでも誇りに思います。



やがて恋を知り乙女になる百合さん


乙女として大切にしている想い

恋心を隠しながら作ったアミュレットや義理チョコ


溢れてしまっている恋心に慌てる百合さん

微笑ましく見守らせていただきました。


お姉さんたちは何度驚かされたことでしょう。

どれだけ萌えて感動したでしょう。


あなたの姿に恋心を動かされたお姉さんもいるのですよ。

純粋な恋 私たちが憧れていた恋をあなたはしているのです。


聖女に憧れ、自ら手を伸ばし届こうとする努力

贔屓目かもしれませんがとても綺麗になりました。



学力も最上位 可愛くて 優しくて 悪いことには怒る熱い心

毎朝想い人のために丹念に梳られた髪はつややかに輝いています。

こんな美少女が存在するのです。


これからは『高嶺の花』なんて言われるかもしれません。




お姉さんにとって小学生の百合さんと過ごした日々は眩しいくらいに輝いていましたよ。






「そろそろ泣いているかと思ってね」



そんなことございませんよ。自室にて静かに過ごしております。


姫子さんこそどうしたのですか

お話していても大丈夫ですか


「打ち合わせ終わったからね。休憩中 式の時間でしょ」



姫子さんも気になっているではないですか


「出席したら大泣きしたでしょうね」


私も自覚はあります・・・ 



「昔から百合ちゃんだけは特別だったからね。どうしてなんでしょうね」



百合さんが可愛いから仕方ないのです。可愛いは正義です。

こんなに可愛い百合さんの素晴らしさは全世界が知るべきです。


百合さんがどれだけ可愛いのかまとめた資料を送りましょうか。

12万文字ほどございますがしっかり読むのですよ。

資料の題名は・・・ そうですね・・・


『恋に恋する乙女たち』としておきましょう。



「かなり重症のシスコンだね」


シスコンなんて最高の誉め言葉ですわ おほほほ






「大丈夫そうだね」


姫子さん・・・ そういうところですよ。



§



通信を切ると静けさが際立ちます。


目の前の机には小学生になったばかりの百合さんと私の写真



百合さんが成長して行けば交友関係も広がります。

やるべきことも増えるでしょう。


恋する乙女です。

想い人のための時間も増えるでしょう。


その分、私から離れて行ってしまうと思います。

それが寂しいのです。



喜ぶべきことだとわかっています。それを望んでいます。


でも寂しいのです。



苦笑い・・・



シスコンですね。







おとぎ話の終わりには幸せを予感させる言の葉が付き物です。



『末永く幸せに暮らしました』



私の紡ぐ物語はそれでは終われないように感じます。


 「末永く」はどれくらい長いのでしょうか

 ずっと変わらぬままでいられるのでしょうか


 人の心は移ろい育って行くはずです。

 生きている限り 泣いて 苦しんで 悩み そして笑うのです。



私が紡がずとも物語は続きます。


その物語にかかわってしまった者として、

登場人物の一人として、笑顔が多い物語であることを願います。






もう式典は終わっていますね。


ご学友に囲まれて笑っているでしょうか

小学校を離れることが寂しくて泣いていませんか


お世話になった先生方、司書さんに挨拶できていますか

ご両親に感謝は伝えましたか



突然告白されて戸惑っては居ませんか

想い人さんは隣に居てくれますか



いらぬ心配ばかりが湧いて来ます。

妹離れが出来ませんね。


でも・・・







中学生になっても遊びに来てくれるでしょうか。

恋バナを聞かせてくれるでしょうか。




じゅうななさいの聖女は待っています。


世界樹の下で



―――― fin







――◇――◇ ご挨拶 ◇――◇――


「恋に恋する乙女たち ~恋する小学生とじゅうななさいの聖女~」


小学生 百合さんの恋を中心とした成長物語


いかがでしたでしょうか


想い出を振り返りながら文字を綴って行くことが楽しくて

私の紡ぐ物語を読んでくれる人がいることが嬉しくて


投稿開始より毎日更新の53日間 

非常に幸せな日々を過ごすことが出来ました。

心より感謝致します。


途中から読んで頂いた方 

実はこの物語を始めるにあたり扉絵なんて作ったのですよ。

近況ノートにありますので一度ご覧くださいませ。

『じゅうななさいの聖女』の後ろ姿でございます。

この痛い子が物語でポンコツしていたのですよ。


https://kakuyomu.jp/users/kumadoor/news/16817330656434619327



百合さんの恋はどうなったのでしょうか


水玉さんと学級委員長くん、そして副委員長さん 

どんな関係になっているのでしょう。


私の先輩方も恋しています。


書き切れないほどの恋があり最終話はモノローグとなってしまいました。


次の物語はすでに始まっております。

お届けできる機会がありましたらお付き合いくださいませ


ここまで読んで頂いたあなた

応援までして頂いたあなた


そして私をここへ押し上げて頂いたあなた


心からの感謝を込めて



『聖なる力よ ここに集いし方々に祝福あれ ブレッシング』

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恋に恋する乙女たち ~恋する小学生とじゅうななさいの聖女~ 音無 雪 @kumadoor

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