第39話 百合さんと世界樹まつり


星空に恋物語を描く季節


短冊に願いを込める恋心


恋する気持ちは古来より変わっていないようです。


――――


七夕の季節に合わせ、今年も大きな笹を世界樹広場に用意致しました。


年中行事は欠かさない音無家なのですよ。ご近所さんと一緒に今年も盛り上がります。


我が父はこのような行事が大好きで暴走気味になっておりまして・・・

年ごとに笹が大きくなっているのは気のせいではないと思います。


七夕には妙なこだわりがございまして、この行事だけは旧暦に合わせ行っております。


ただ最近は七夕まつりではなく世界樹まつりと呼ばれるようになりました。




世界樹まつり ただいま準備期間に入りました。


七夕の笹はてっぺんまで手が届くように斜めに倒されております。

短冊もたくさん用意いたしました。ご自由にお付けくださいな。


すでに可愛い園児ちゃんたちがいっぱい飾ってくれました。

近くの保育園からお散歩で来てくれたのです。


お歌も歌ってくれましたよ。微笑ましいですね。



――――



自転車通学の中学生さんも立ち寄ってくれます。


きゃいきゃいとにぎやかな女子生徒さんたち

手元を隠しながらどんなお願いを書いているのでしょう。


笹に飾った後、友人の短冊を見ようとして止められている姿が可愛いです。



男子生徒さんたちは意外と手元を隠さないのですね。

それでも飾った短冊を見ようとすると止められるのは変わりませんでした。



それではお姉さんが代わりに確認させて・・・駄目ですか。



「ああぁ 雪ねえさまに触ったぁ えっちっ」


私の手を掴んで止めた男子生徒くん 女子生徒ちゃんから非難されております。


改めて言われるとこちらが恥ずかしいですよ。




挙動不審になる男子生徒くん お可愛いことです。


気にしていませんよ。 大人の余裕で軽く手を振っておきましょう。



・・・本当はちょっとドキドキしました。


中学生とはいえ殿方ですからね。




女子生徒ちゃん お久しぶりです。


彼を取ってしまいましたね。ごめんなさい。



「そんなんじゃないからっ」


そうですか まだお付き合いしていないのですね。



「違うってばぁ」


乙女パンチをぽこぽこと頂きました。世界一威力のないパンチです。



ご学友さんからの生暖かな視線

想い人とは微妙な距離を保っているようですね。



百合さんの先輩も恋する乙女していますよ。





世界樹まつり当日となりました。



短冊を付けるために低く倒されていた笹飾り

朝には高く立ち上げられました。


役割など決まっていないはずなのに作業を行うときにはどこからともな

く人が集まってくれるのです。

不思議ですよね。


この街は優しさで出来ております。



この世界樹まつり 暴走しておりますのは父だけではないのです。

なぜか毎年なにかしらのイベントが開催されております。


ご近所さんの主催で去年は流しそうめんをやっておりました。



今年は自作のミニピザを窯で焼いて貰えるそうですよ。

あのピザ用の窯 誰が持ち込んだのでしょうか。


もう七夕関係ないですね。夏祭りと化しております。

この状態が続いていたことから世界樹まつりと名称が変わったようです。


もちろん提唱者は百合さんですね。


――――



長時間滞在するような場所ではないのですが、入れ替わり立ち替わりでそれなりに賑やかです。


ひーくんたちも来てくれました。

何かと細かな作業を手伝ってくれて助かっております。


でもまだ彼女さん来ていませんよ。


「百合と約束してないし」


彼女さんが百合さんなんて誰も言っていませんよ。

ご学友さん含めて温かな目で見守られております。


――――


夕刻になりライトアップされた笹飾り


中学生や高校生の姿が多くなりました。

男女それぞれグループになっておりますが

お互いにチラチラと視線を向けておりまして・・・


青春しておりますね。



甘酸っぱい雰囲気の中

百合さんようやく登場です。


浴衣を着せてもらったようで可愛いですね。


「百合だけずるいな」


駆け寄っていくひーくん

なにがズルいのでしょうか


「水玉ちゃんも浴衣で来るよ」


その情報にピクリと反応した男子くん数名

水玉さん モテているようです。

恋する乙女はおしゃれに気を遣うようになってさらに綺麗になっています。


本命の学級委員長さん 水玉さんの名前に反応していましたね。

これは期待しても良いのではないでしょうか


百合さんは中学生さんに可愛がってもらっています。

もうすぐ中学生ですからね。


同じく浴衣で来ていた女の子と写真撮影しています。

進学してすぐに打ち解けることが出来そうです。



そして水玉さんも浴衣で登場

視線が学級委員長さんを探していますね。


お互いに姿を確認すると小さく手を振る水玉さん

良い雰囲気になって居るではないですか。



この世界樹まつり 学生にとっては親御さんに言い訳しやすいお出かけ場所

そして気になる異性といつもと違う雰囲気で会える場所


私は恋に恋する乙女としてこの場所をずっと守っていけたらと夢見ております。


――――


私の親友も来ましたね。

姫子さん お胸の主張が凄い服装です。


「若い子に夢を与えておかないといけないからね」


恋愛の魔女さん 本日は小悪魔でした。

お胸には殿方の夢と希望が詰まっているようです。


男子学生さんの視線が泳いでますよ。


やり過ぎると女子学生さんに嫉妬されますからね。


女子高校生にも近づく小悪魔さん

男子生徒さんも呼んで歓談を始めました。


男女ともに話す切っ掛けがないと近づけませんからね。

姫子さん良い仕事をされました。


そういえば姫子さんも私と同い年

じゅうななさいですから同じですね。

ふたりだけお姉さんのように見えますが気のせいでございます。


「雪ねえさまも来てくださいよ」


お姉さんと呼ばれてもです。


――――



「お星さま 見えませんね」


百合さんはかなり期待していましたからね。



「今年も無事に逢えたでしょうか」


「大丈夫 雲で見えないから今頃イチャイチャし放題だよ」


姫子さん 台無しです。



「百合ちゃんだって見られていたらイチャイチャできないでしょ」


「イチャイチャなんて・・・」


からかわれ上手の百合さん 真っ赤になって逃げてしまいました。



「いつも無自覚にイチャイチャを見せつけられてるから仕返しです♪」


姫子さん 大人気ないですよ。



――――


わいわいと気になる異性を交えながらの非日常

いつもと違う世界樹広場であなたの想い人はどんな姿に見えましたか


みんなの願いが風に揺れる七夕の夕暮れ


願いが星に届きますように



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