第40話 百合さんとアミュレットの効果


夏も終わりを告げそよぐ風も和らいで参りました。


過ごしやすい季節ですね。


食べるものも美味しい物がたくさんございまして・・・


かろりぃさんとの戦いが今始まるっ



――――


世界樹広場に珍しいお客様


ひとり制服姿の女の子が座っています。


あのセーラー服は中学生ですね。

どうしたのでしょうか


まるで百合さんのように脚をぶらぶらとさせて人待ち顔


声をかけた方が良さそうですね。


「こんにちは どうしたのかな」


初めましてですね


「雪ねえさまですか 初めまして葉月って言います」


葉月さん 良い名前ですね。

私のことを『雪ねえさま』と呼ぶのは誰かの紹介かしら



「マミちゃんと百合ちゃんの紹介です。

 世界樹広場に来てこの椅子に座って『お話を聞いてください』

 と念じると雪ねえさまに通じるからと教えてもらいました。」


私は召喚されて現れたのでしょうか。

なにか壮大な誤解が噂となって広がっている様な気がします。


マミさんのお友達ですか。


同級生に片想い中のマミさん

世界樹まつりにも来てくれていましたね。

あの時も彼(予定)との甘い雰囲気を見せつけられました。

彼も満更では無さそうですし、青春してますね。


それに百合さんですか。

世間は狭い物です。どんな繋がりなのでしょう。

恋バナに年齢は関係ないですからね。


今日はどうしたのかな。

わざわざひとりだけで来たのです。

恋の悩みですよね。



「やっぱり雪ねえさまは分かってしまうのですね」


いえ この状況なら大抵のお姉さんは分かってしまうと思いますよ。

話してごらんなさい


「絶対に内緒にしてくださいよ。マミちゃんにも内緒です」


もちろんです。だからひとりで来たのですよね。


「実は好きな人が居るんです。誰にも話してません」


「好きって言っても私が一方的に好きなだけで

 相手は恋愛とかじゃなくて友達として好きって言ってくれてます。

 私は恋愛として好きなんです。

 絶対に叶わないって分かっているんです。

 でも好きなんです」


苦しい恋をしているのですね。


「恋愛じゃなくても好きって言って貰えると嬉しくて

 なんでも頑張れるんです」


「叶わなくても少しだけでも私のこと見ていて欲しいんです。

 大好きって言っている私を見ていて欲しいんです」


乙女心ですよね。


「マミちゃんが好きな男子のこと楽しそうに話すんです。

 片想いだけど だんだん仲良くなっているって嬉しそうです」


順調に恋する乙女していますよね。


「どうしてそんなに上手く行くのかって羨ましいんです。

 悩んでいたら雪ねえさまに相談するといいかもって・・・」


それで来たのですね。


「それに百合ちゃんの噂も聞きました。

 雪ねえさまの『アミュレット』をもらってから彼と急接近しているって

 百合ちゃんの持っているアミュレットだけは特別だって」


アミュレットの噂を聞いてきたのですね。

一生懸命な恋心は良いと思いますよ。


アミュレットはね。恋の応援をするだけですよ。

なんでも恋を叶えてくれる魔法ではないんです。

百合さんは想い人のためにいっぱい努力をしています。

そんな姿を見ている人が百合さんを好きになるのですよ。


無条件に人の心を操ってはいけません。

それは私の恋愛道に反します。

それにそこまで都合の良いアミュレットなんて存在しませんよね。


「私もアミュレットを持って努力したら振り向いて貰えますか」


恋は実るとは限りません。

どんなに努力しても越えられない物はあります。

破れて泣いて悲恋となっても恋は恋


あなたは叶わないと分かっているのに努力しようとしていますね。

そんな目をしていますよ。

好きになってはいけない人に恋をしている。

全身で叫んでいますよ。



「どうして雪ねえさまは初対面なのに分かるのですか。

 今日も願っているだけで来てくれましたよね。

 何も言わないのに恋愛相談だって

 叶わない苦しい恋をしているって


 雪ねえさまは特別な力があるって本当ですか」


お姉さんはね。みんなの恋を沢山聞いてきたの。

一緒に悩んで、喜んで、泣いて、沢山の恋を見送ってきたの

それだけですよ。


あなたと一緒に泣いてあげることは出来ますよ。


「私の恋も見ていてくれますか 馬鹿にしませんか」


もちろんですよ。




「私・・・女の子に恋してます」



――――



同じクラスの女の子

小学校からずっと一緒の親友さん


同じ物を見て一緒に感動して

一緒に悔しくて泣いて


気がついたら好きになっていました。



親友さんも好きだって言ってくれます。

大好きだって言ってくれています。


でもそれは親友の好きであって、恋愛ではありません。


マミさんの恋が進んでいる姿をみて

いつかは親友さんにも彼が出来て私から離れてしまう。

そんな不安に陥ってしまいました。


どうすれば良いのか分かりません。

自分がどうしたいのかも分かりません。



――――


心に秘めていた想い

私に話してくれたのですね。

とても嬉しく思います。ありがとうございます。

私に相談をしたと言うことがすでに努力だと思いますよ。

素晴らしいことだと思います。


それに女の子を好きになってしまう気持ち

私は理解できますよ。

悪いことではありません。きちんと恋しているではないですか。


「女の子を好きになっても良いんですか」


私も親友の女の子が大好きですよ。恋する一歩手前くらいに好きですよ。


私の恋の考え方 聞いて貰えますか

好きな人がいるなら好きになってもらうために目標にしていることがあるんです。


大好きな人の側に胸を張って立つことが出来る自分で居られるようにしましょう。

恥じる行動をしないこと いつも綺麗でいようとすること 努力を続けましょうよ

下を向いていてはいけません。


自分の恋心に誇りを持ちましょうよ。



――――



「雪ねえさまって何でも知っているのですね」


耳年増と言われますよ。じゅうななさいなのにね。


「また来て良いですか」


いつでも来てください。恋バナしましょうね。

恋する乙女は恋バナをしなければいけないのですよ。



「雪ねえさまは彼を作らないのですか」


痛いところを・・・ 作らないのではないのです。

作れないのです・・・



「親友さんのことが好きなんですか」


そうなのかもしれませんね。



「雪ねえさま 私ってどうしてこんなに苦しい恋をしてしまったのでしょう」


それはね


乙女だからですよ。





百合さんの紹介で恋愛相談


まさか先輩の恋を応援しているとは思いませんでした。

女の子を好きなことも分かっているのではないでしょうか


――――


翌日の世界樹広場


ラベンダー色のランドセルガールが脚を揺らしています。

来ると思っていましたよ。


「百合さん こんにちは」

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