第33話 百合さんと聖剣エクスカリバー


晴れ渡る空 気持ちの良い高原の朝でございます。


本日の予定はハイキング


小さな山を目指します。



百合さん きちんと帽子かぶってください。

涼しいですが紫外線対策は重要ですよ。


――――


山の麓まで車で移動


とっても大きな四輪駆動車 トラックのようです。


管理人さんのご趣味だと伺いました。



あの大型サロンバスに七名と比べれば現実的でしょう。



管理人さん 送迎だけではなく一日お付き合いいただけるそうです。

お仕事とおっしゃいますが、大きな荷物を持っていただいて恐縮致します。


おかげで手ぶらのハイキング

道案内や景色の説明までしていただけます。


そして綺麗な草花を見つけるとエリザベス先輩の解説付きでございます。


『お花の聖女さま』は流石でございますねっ



「あら お聞きになられましたか 『世界樹の聖女さま』」


耳元で囁かれてしまいました。耳弱いんですよ。ぴくぴくしてしまいます。



『聖女の術』に興味があるとお聞きいたしました。

よろしければ伝授いたしますよ。

『お花の聖女さま』でしたら素晴らしい効果が期待できることでしょう。



「いえいえ 百合さんを思い遣る気持ちが術の条件でございましょう。

 わたくしには力が足りませんのでせっかくでございますが辞退いたしますわ」


あざやかに逃げられました。逃げの口上を用意しておりましたね。



「とても凛々しきお姿だったと姫子さんから聞き及んでおります。

 願わくばわたくしも拝見させていただきたいと思うのですがいかがでしょうか」


いくら先輩のお願いでもそれだけは勘弁してくださいませ



「雪ねえさま 聖女さまのお話ですか(小声)」


見つかってしまいました。



「内緒の秘密でございますよ」


先輩 百合さんの扱いを良くわかっていらっしゃるようでございます。



――――



見るものすべてが新鮮で歩くことが楽しくなります。



蜘蛛の巣などに阻まれる場面もございましたが、勇者アリスさまの聖剣エクスカリバーにて打ち払われました。

拾った枝が聖剣になるとは勇者さまの能力は計り知れません。


ひーくんとご学友さん達に似た空気を感じます。きっとお友達になれますよ。

でも百合さんに嫉妬されそうですね。



「森へお帰り」


あら もう聖剣エクスカリバーとはお別れのようです。


気が付けばもう目的地が見えて参りました。



――――



山頂と言いましょうか、高台の少し開けた場所が目的地です。

遠くの山々がきれいですね。

たいして歩いてはおりませんが達成感がございます。


ここで昼食の予定です。


用意は管理人さんがしていただけるとのことで少しだけ散策です。

気持ち良いですね。



「やっほー」


定番ですよね。水玉さん 大きな声を出すことはあまりないですからね。

ここは発散しておきましょう。



「この山では愛しい人を思い浮かべながら『大好き』と叫ぶと想いが叶うって言われていますよ」


姫子さんが・・・

『恋愛の魔女さん』が言うのです。間違いないでしょう。


・・・


百合さんも水玉さんも本気にしていますよ。



「大好きっ」


エリザベス先輩が一番先に乗るとは思いませんでしたよ。

ホストとして場を盛り上げていただけたのでしょうか。

それとも乙女心でしょうか。



「誰が心に浮かびましたか」


姫子さんが追い打ちをかけます。

先輩は少しほほを染めて・・・ あら・・・




「「大好きっっ」」


声を合わせるランドセルガールズ 気合入っていますね。

顔を見合わせてにこにこ笑顔です。


恋バナを共有するふたり もう親友と呼べるのではないでしょうか。



「大好きっ」


色々な意味に聞こえてしまうアリスさん 

清々しい顔をしているところを見ますとシュークリームではないようです。



「大好きっ」


説得力が違いますね。エンジェル先輩の彼氏さん 愛されてますよ。



ほのぼのと鑑賞しておりましたら

不意に後ろから抱きしめられまして・・・この柔らかなふたつの感覚



「大好き」


今はこれで良いですよね。優しさに甘えてしまいましょう。


回された手に私も手を重ねて・・・



「大好きですよ」



――――



管理人さんが荷物を解くと椅子にテーブル、ランチボックス

気が付けば木陰に昼食会場が出来上がっておりました。


赤いチェックのテーブルクロスの上にサンドイッチを中心としたお献立

温かなスープまで用意されております。


念のため確認したいのです。ですよね・・・





「姫子お姉さんは雪ねえさまが大好きなのですか」


どうしたのですか 水玉さん 



「大好きですよ」


「百合ちゃんからとっちゃダメです」


「百合ちゃんにはひーくんがいるでしょ」



「お付き合いしていませんっ」


「それならどちらがお雪を大好きなのか競争ですね」


「負けませんっ」


水玉さんが火をつけて、なぜかトライアングラーになっております。

なんですかこの状況は・・・



「私もおゆき先輩を渡しませんっ」


参戦しないでください。アリスさん



みなさん私で遊ばないでっ



――――



帰路の途中 せっかくですからと神社に立ち寄らせていただきました。


無人の神社ではありますが、朱塗りの鳥居が連なる参道は圧巻でございます。



「おゆきせんぱぁい」


呼ばれて振り向くとアリスさんがスマホを構えてパシャリ

不意を突かれました。



「おゆき先輩怖いです」


いつもながらに辛辣です。


朱塗りの鳥居の中で振り向く長い黒髪の女・・・ 

確かに怖いですね。



「待ち受け画像にします」


いそいそと設定をして満足そうに眺めております。

やはりあなたの行動は読めません。



――――



拝殿を前にして二礼二拍手一礼


人の気配がないからこその凛とした空気


時折こうして襟を正す時間があっても良いのではないでしょうか



社殿のわきには絵馬が奉納されております。

よく見れば可愛らしい女の子の絵に彩色までして納められた絵馬も見られます。

一度持ち帰って絵馬を描いた後、再度詣でたのでしょう。情熱を感じます。


聞けばある作品の聖地とのこと


きっかけは色々ございますが、このような詣で方も良いことだと感じます。



――――


管理人さんのお戯れで道なき道を行く大型四輪駆動車

(申し訳ございません。私の存じ上げない車でございました)


物腰の柔らかい穏やかな紳士と感じておりましたが、ぱわふるであぐれっしぶな方でございます。



車内は終始「うわぁぁ」「きゃぁぁ」でございました。


このような場所を走ってもよろしいのでしょうか

・・・私有地 ・・・失礼致しました。


それでもですね。もう少し平坦n「きやぁぁぁ」



ハイキングよりも帰路の車で一番体力を使いつつ無事帰着




さて夕食は囲炉裏料理とのこと 楽しみでございます。


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