第34話 百合さんと星巡りの詩


部屋の中央に囲炉裏があります。


良い雰囲気ですね。


囲炉裏と言いましても上には大きな換気扇と煙突

現代的な囲炉裏でございます。


今日の食材はすべて串焼き

肉、魚、野菜はもちろんでございますが、ご飯も平坦なお団子状になって串焼

きです。

管理人さんの実家の郷土料理で五平餅と称します。


くるみ味噌で焼き上げるそうでして・・・

食べる前から香りが美味しいです。


そんな色とりどりの串が火を取り囲んで良いにおいを漂わせ始めました。


これはワクワク致します。



――――



食べすぎました。


全てが美味しいのがいけないのです。私は悪くないんです。



いつも旅行後に反省しているはずなのですが今回も繰り返しております。


帰宅後は体重計さんにしばらく休暇を取っていただきましょう。




食後に運ばれてきたトレーには、クラッカーとマシュマロにチョコレート


囲炉裏でスモアですか 斬新でございます。絶対に美味しいヤツです。



食べ過ぎてもう入らないはずなのに・・・ 私のばかぁ





今夜の予定は星空観賞会


・・・でしたが、残念ながら薄曇り

あまり星が見えません。


昨夜少しだけ眺めましたのでそれで良しとしましょう。


とても残念そうな百合さんと水玉さん

七夕のお祭りまで楽しみを取っておきましょうね。



――――




少し早いですが順次入浴となりました。

お先に入らせていただきますね。


今夜は姫子さんと入ります。久しぶりですね。




「芸術のためなら脱ぎますっ」


やはり百合さんに教えたのはあなたでしたね。


純真無垢な美少女を汚さないでくださいっ




姫子さんに髪を洗っていただく時間

なんだかほっとしてしまいます。


無防備に気を張っていなくても良い時間

この雰囲気が好きなんです。


私からも姫子さんの髪を洗って・・・


彼女は何を感じているのでしょうか。

同じように気を楽にしていただけるのであれば嬉しく思います。


ふたりでもゆったりと浸かれる浴槽

姫子さんと入浴するといつも思うのですが・・・ のですよね。


羨ましい限りでございます。



「花の聖女さまの話聞いたよ」


エリザベス先輩にはしてやられました。

しかしわかっていながらも本物の『お花の聖女さま』だと感じる私もいます。



「あんなに嬉しそうな先輩見るのは久しぶり 百合ちゃんのおかげかな」


私も同じことを感じていました。今回の先輩は特別です。


そう言えば夜会の時に口にしていたあの件

先輩にも気になる殿方がいるのですか



「今はね そっとしておいてあげて 

 ゆっくりと心が育っているところだから」


流石『恋愛の魔女さん』ですね。

恋愛の機微を良く見抜いていらっしゃいます。

何も言わずにその時を待ちましょう。

美しく清らかに育ちますように・・・



「お雪はあの後大丈夫だったの かなり塞いでいたけど

 まだ・・・痛いよね」


百合さんが朝まで一緒にいてくれたんですよ。



「不思議な子だね。時折大人に見えるよ」


大人に見えることがあってもまだ小学生 私の自慢の妹ですよ。



「今夜は一緒に寝てあげようか」


姫子さんも寂しいのですか。抱きしめてあげますよ。



「お互い拗らせてるね。いろいろと・・・」


お互いにね。





中止になってしまった星空観賞会


代わりとして旅行写真の上映会となりました。


夜会を開いたお部屋に大きなモニタをゴロゴロと持ち込みまして


まるでオンライン会議に使えそうな大きなモニタですねぇ(すっとぼけ)



クラウドにアップされた画像を時系列順にすべて上映です。

すべてですよっ



――――


往路のバスの中 


ランドセルガールズの硬い表情が可愛いです。

今はもうすっかりと馴染んでしまいましたね。


誰の写真も基本何かを食べています。

なぜ可愛らしい写真を撮らなかったのでしょうか。


「あっ 私の寝てるところっ」


水玉さんの寝顔可愛かったですよ。

ふたりで眠っている姿 これには勝てません。



「なんですかこの靴の写真は」


「水玉ちゃんの靴が可愛かったからっ」


それも想い出ですね。



サシェ作りを指導するエリザベス先輩 カッコ良いですね。


香りを選んでいる場面では皆さん真剣です。

いつの間に撮られたのでしょうか


お風呂上がりのバスローブ姿 百合さん大人っぽいですよ。

これはひーくんに見せてあげ・・・駄目ですか ちぇ


夜会の用意にお着換えを・・・

絶対に見せちゃダメな写真ばかりじゃないですかっ


アリスさんと姫子さん 何をノリノリでポーズ取っているのですかっ


殿方に見られないよう『要注意 極秘 ないしょのひみつ』です。



夜会の写真は最初に撮った数枚だけ あとは皆さん撮影しませんでした。



つぎは寝顔のオンパレード・・・

それぞれに暗躍していたようでございます。


百合さんと一緒に寝ている写真 家宝にしたいと存じます。

ひーくんに自慢・・・駄目ですか ちぇ


ハイキングでは勇者さまがエクスカリバーで蜘蛛のモンスターを倒した場面

良い笑顔です。


『大好き』大会 私と姫子さんがなんだか良い感じですね。

別方向に誤解されそうな一枚です。


一枚ではないですね・・・ 各方向から全員で撮っているではないですか。

正直、恥ずかしゅうございます。


いっそのこと待ち受け画面に致しましょうか(開き直りっ)



夕食で口に付いた味噌をエンジェル先輩に拭いてもらう水玉さん


楽しそうに笑うエリザベス先輩


みんなが笑っています。


笑顔の写真って何枚あっても良いですね。



――――



「晴れてきましたっ 外行きましょうっ お外っ」


席を外していたアリスさんからの速報


確認していていただけたのですね。

百合さんたち残念そうにしていましたからアリスさんの優しさでしょう。


それではアルバムはここで閉じて夜空を見上げに参りましょう。





屋敷の灯を落としていただくと視界から人工の光が存在を消します。


目が慣れると圧倒される星の数


知らなければ星座を探すことさえ難しいほどの満天の星空



夜空に飲み込まれそうな感覚は久しぶりです。

このような体験 人生に何度出来るのでしょうか。



「雪さん 星のお話をしていただけませんか」


エリザベス先輩からのご依頼ですし百合さんたちにも貴重な機会です。

お姉さんは少しだけ星に詳しいのですよ。


沈みゆく春の大三角形 登る夏の星座たち


宮沢賢治の歌と共にほしめぐり



こんなに星があるのです。

自由に自分だけの星座を星空に描くのも一興でございますよ。

今夜の想い出として心にしまっておいてください。


そしていつか夜空を見上げた時 

あなたの道しるべとしてその星座が輝いて見えますように



今宵 星に導かれて 集まった私たち


またいつか この満天の星空の下でお会いしましょう。


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